筆塗りを楽しむために生まれた味わい深いプラキット「塗るプラ」を、株式会社ボークスが開発した本当の理由【ホビー業界インサイド第42回】

2018年12月15日 12:000

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水性アクリル塗料をめぐる国内“塗装文化”の変遷


── それにしても、ランナー単位での色分けが定番化しつつあるキャラクターキットの世界で、なぜグレー単色の塗装前提のフィギュアを発売することにしたのですか?

島津 一番の理由は、弊社が日本総代理店になっている水性塗料“ファレホ”を使った「筆塗り」を、ホビーとしてお楽しみいただくためのプラキットを、自社で生み出したかったことです。塗るプラとファレホのコンビで、筆塗りを「完成させるための作業ではなく、その工程を楽しむホビー」として確立していくことが狙いです。
弊社は現在、あらゆるホビー商品を「作る」をキーワードに展開しており、その一環としてファレホを取り扱うようになって、丸10年となります。弊社のプラキットは、サイズが大きく精巧なロボットや飛行機が主力で、組み立ても塗装もじっくり取り組んでいただきたいアイテムが多いです。それだけではなく、肩の力を抜いて「彩色」という工程をホビーとしてお楽しみいただきたい、完成というゴールへ向かうための作業ではなく、一筆一筆のせる色によって変わる彩り、多彩な塗装手法によって生まれる立体感など、作り手が満足するまでその変化を楽しむホビーを提供したい……そんな想いから塗るプラは生まれました。そのためには手軽に組み立てることができ、ディテールが細密でモールドに塗料が入り込みやすい「塗装して仕上げてこそ楽しいキット」が必要だと考えました。

── なぜ今、水性塗料が人気になってきたのでしょう?

島津 元来、日本では高温多湿の気候に合わせた速乾性や機能の面から、成分に有機溶剤を含む「油性」塗料の人気が高く、とりわけラッカー系塗料を使ったエアブラシ塗装は弊社店頭でも多くのお客様にご愛顧をいただいております。
ただ、昨今はホビーを楽しまれる方の年齢層が幅広くなるにつれ、生活環境の変化で「安全性」が重視されるようになりました。ご家族と一緒にホビーを楽しみたいというお客様のご要望が高まっていること、ファレホをはじめ海外塗料の発色や速乾性、塗膜強度などの性能向上も相まって、水性塗料とその楽しみ方が、あらためて脚光を浴びております。


── では、なぜ「ゲゲゲの鬼太郎」をモチーフにしたのでしょう?

島津 「塗るプラ」を企画するにあたり、もっとも重視したのが「普遍性」と、表現における「自由度」「許容度」の幅広さです。時代ごとの流行を追うよりも、世代をこえて愛され、幅広い層に受け入れていただけることが重要と考えました。水木しげる先生がお描きになられた妖怪は、日本文化に深く根を下ろしているのはもちろん、「塗る人の様々な創意工夫を受け入れられるコンテンツ」として、これ以上ない魅力を感じています。
また、水木先生ご自身、カラー原稿ではセピア調や絵画風など、さまざまな表現方法で彩色されておられます。私は地元が京都なのですが、この秋、龍谷大学で水木しげる先生の原画展がありました。水木先生ならではの色彩の力強さ、豊かさをあらためて目の前で感じました。いま、ファレホは1000色近いカラーが発売されています。その彩りの幅を生かす題材としても、ぜひ「塗るプラ」を楽しんでいただきたいと思っております。

── 作例は、すべてファレホで塗ってあるのですか?

島津 はい、ファレホしか使っていません。鬼太郎の髪の毛はグレー系で下地を塗った後、完全に乾いてからブラウン系のウォッシュ塗料をサッと流しただけです。ファレホにも、ベースカラーとスミ入れ用のウォッシュカラーがあります。また、キットのベースには、裏側に板状の持ち手がつきます。塗装するとき、手がじゃまにならないようにするためです。塗装を終えたら、持ち手を切り取って完成です。エアブラシはパーツ単位で塗るのが基本ですが、筆塗りの場合は全体をすべて組み上げてから、じっくり塗っていただいた方が楽しいのではないか……と考えてのことです。

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