「プリンセス・プリンシパル」高橋諒インタビュー ライブイベント「STAGE OF MISSION」ステージを振り返る

2018年11月23日 12:000
(C) Princess Principal Project

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2018年4月29日に舞浜アンフィシアターにて開催された「プリンセス・プリンシパル」のライブイベント「STAGE OF MISSION」の模様を収めたBlu-rayが11月22日に発売された。イベントでは主題歌や挿入歌、そしてキャラクターソングミニアルバム「5 Moving Shadows」の全曲がライブ演奏をバックにキャストによって初披露された。これらの作曲を手がけ、イベント当日はベーシストとしてステージに立った高橋諒氏に、楽曲解説とライブ当日のプレイについて語ってもらった。UKミュージック愛あふれる音楽性が込められたスタジオ盤とライブBDそれぞれのよさを比べつつ楽しめる内容だ。

ライブ用に改めてリアレンジして臨んだ楽曲の数々とその方法論


── 2017年7月より放送されたTVアニメ「プリンセス・プリンシパル」は音楽面でも非常に反響が大きい作品になりました。オープニングテーマやキャラソンの作曲を手がけられた高橋さんとしてはどのように受け止めましたか?

高橋 ファンの皆さんから反響は僕にとっても予想以上のものでした。あれだけ詰め込んだ音楽を皆さんによいと言っていただけたことは率直に、ミュージシャンとしてうれしい思いがありました。あれだけいろんな方向に振った音楽を違和感なく包括してくれるという作品の懐の深さに、改めてスゴいなと実感しましたね。

── この音楽の幅はオリジナルアニメらしい自由さの中で発揮されたものではないかと思います。

高橋 そうなんです。本当に好き勝手に作りすぎて、今回のライブイベント「STAGE OF MISSION」開催の話をいただいたときにどうしようかと思いました(笑)。音楽って、ライブで組み立てることを念頭に置いた楽曲と、スタジオで作り込むことを前提にした音楽があるんですよ。そしてそれを作る方法論はそれぞれ違うので、この作品は当初、「何でも詰め込んじゃえ」と後者のコンセプト重視で作っていたんです。それをどのように再現するか、あるいはライブでやるよさを今一度発見する必要があったので、曲を一度解体して、生でやる部分と合わせて演奏する部分、そしてボーカルが生で歌うことを前提にした部分をひとつずつ、「ここは音源通りに」、「ここはライブらしい熱さを出そう」という風にチェックしていきました。
今回のようにアニメ作品としてのコンセプトがあり、そこできっちり作り上げたものを後からライブに還元するという経験は、大変ではありましたが貴重な経験になりました。最初から「ライブでやるんだろうな」みたいにいいとこ取りを狙ってしまうと、コンセプトとして曖昧な感じになってしまうので、ライブをするときにはリアレンジするくらいのつもりでもう1回組み立て直すほうがよい形になると思います。


── その還元作業においては、大きく言うとどういうところが大変でしたか?

高橋 スタジオ盤(CD)の制作をする際、特にキャラソンの場合はキャラや歌を立たせることに全振りするんです。それ以外の要素はあまり肉づけをしない傾向があります。でも、単純にそれをライブでやると、本当キャラソンを並べただけのものになってしまいます。そこでいかにライブ感を出してショーとして成立させるかを方向づけする必要がありますね。

── 当日、一緒に立たれたミュージシャンの方へはどのようなオーダーをされましたか?

高橋 現場で飛び交ってた言葉でいうと、「もっとガーンとドーンと行ってください」とか(笑)。細かく言えば、ここは音源では淡々としていましたが、ピアノでドラマティックに強調して、この日だけの感じを出してください、と全体の熱量を挿し込んでいく。それぞれの奏者の方に、ここを立たせたい、ここはもっと引いてほしいという風にお願いします。それを音にすると「ドーン」「バーン」なんです(笑)。奏者の方も面白がってくれて向こうからフィードバックをしてくれてどんどん派手になっていく傾向があって楽しかったですね。

── 皆さんとは初めてですか?

高橋 初めての方もいましたし、何度も一緒の方もいて、コミュニケーションが取りやすく作りやすかったですね。

── アニメ音楽のお仕事をされていると、同じ方と違う作品でお仕事をされることもあるでしょうね。

高橋 「毎回、違うね~」と言ってくださる方もいます(笑)。そういう方には「前回のは1回忘れてください」とか、「ジャズの人として今回は暴れてください」という説明の仕方をします。それくらいガラッと変わるんです。「プリンセス・プリンシパル」はジャンル的にもオールスターみたいな方に集まっていただいて、ベスト盤のような感じですね。

── ではライブ当日の流れに従って楽曲の解説をお願いいたします。まずはVoid_Chords feat.MARUとして披露されたオープニングテーマ「The Other Side of the Wall」です。スタジオ収録のときも立ち会われたそうですがライブではいかがでしたか?

高橋 MARUさんはやっぱりエンターテイナーとしての組み立て方とかあおり方とか、スタジオでもあれだけ広い会場でも、そこを支配する力をしっかり持っていらっしゃる方だなと思いました。規模に関係なく全部ロック(支配)しちゃう強さがあるなと演奏しながら感じていました。

── 次はアンジェの「Take Me Up Higher」です。キャラソンについてはTVアニメBlu-ray特典のブックレットで、影響を受けたUKのさまざまな音楽を盛り込んでいったとお話しされていましたね。この曲ではインコグニートを例にあげられていました。

高橋 アンジェの曲はスパイものの王道の曲として作りました。16ビートがまず先にあり、アンジェの曲であればこういう音楽ができるんじゃないかなと想像していました。曲自体は以前からストックしていたアイデアがありました。彼女のキャラクターでいうと飄々としている感じが、何を考えているかわからないスパイ的な温度感のなさであり、それが格好よさでもあると思います。そこに合うだろうと思い、当ててみたところうまくハマったので、それを再構成して仕上げた形です。

── 汗をかかなそうに仕事をこなすような感じ。実際のプレイヤーたちは違うんでしょうけれども。

高橋 そうですね。なかなかテクニカルな曲で汗をかいてます(笑)。それが当日の2曲目、キャラソンの冒頭で、いきなり最高難度でした。ここを超えたら楽になるぞと思って弾いていました(笑)。こういう曲って、平易にしたりインタープレイを入れたりと、崩せばどこまででも崩せるんです。でも、今回のライブではむしろ崩しやすい曲こそ崩さないことを大事にしていたので、しっかりと音源のように組み立てていきました。その結果、めちゃくちゃ難しい感じになりました。大変さはありましたが、楽曲としては楽しい仕上がりになりましたね。


── 次はベアトリスの「リトルブレイバー」。これはQUEEN(クイーン)からの影響が表れた楽曲ですね。

高橋 これも10代の頃のヒーローが血肉になっていますね。考え抜いて当てたというよりも、ベアトリスはQUEENじゃないかなと軽い気持ちで寄せてみたら予想通り合って、デモもスムーズにできたました。その後のQUEEN感を出すための構成的な難しさはありましたが。

── 最初に聴いたときはベアトリスの小さくてかわいらしい感じとQUEENの組み合わせが意外な印象を受けました。これはどんな発想からでしたか?

高橋 個人的には違和感がないんです。僕のなかで、フレディ(・マーキュリー)やQUEENって、割とかわいい印象があるんです。格好いい・かわいい・ちょっと謎めいているという音楽性が最初から入っているので、そこまで異質なものにならず仕上げることができました。

── ライブ当日のプレイはいかがでしたか?

高橋 楽しい曲なのですごく体が踊りました。影山(灯)さんの歌唱もさすがで、キャラクターのよさと、その日限りのライブ感のあるところが両立していてとてもよかったです。スタジオではなく、大勢の前に立って生でそれを表現するというのは、まさに針の穴を通すようなお仕事です。僕もプレイしながらそれを感じていたので、当日のお客さんにもベアトリスが見えていたんじゃないかなと思います。


── ちせの「閃光刀歌」は、日本人のちせというキャラクターと、UK的なテクノという組み合わせですが、このアイデアはどのようにして思いつかれたんですか?

高橋 制作の打ち合わせでは、ちせから和太鼓とか打楽器系のイメージの話題が出てきて、それをUK的に振るのであればドラムンベースだよねという話になりました。あとは第5話「case7 Bullet & Blade's Ballad」で、ちせの大きな立ち回りのシーンがありまして、普段は止まっていて突然動き出すときの躍動感というか彼女の静と動のイメージがドラムンベースに合うなと思ってこの作りにしていきました。

── ライブではいかがでしたか?

高橋 楽しかったですね。演奏自体はラウドで平坦に、ロックバンドが演っている感じを前面に出して、音もハードに演奏も激しく暴れる感じで人間らしい熱さをわかりやすく出そうと思いました。ガッツリとしたキメもありますし、シリアスに行こうとロックバンドらしく格好いいショーをやっていたら、間奏で「漬物コール」が起こって(笑)。でも、このバランスが「プリンセス・プリンシパル」だよねと思いながら弾いていました。


── 今回、挿入歌として梶浦由記さんが作曲された「もひとつまわして」もライブで披露されています。編曲や演奏はいかがでしたか?

高橋 演奏させていただき、ありがとうございますという感じですね(笑)。梶浦さんの素晴らしい楽曲をライブで演奏するにあたって、全体のコンセプトであるライブ感をどのように入れるかを自分でも考えたところがあったのですが、ストーリーの中で流れを見ていくものだったので、それを再現する方向でまとめました。この楽曲を当日、どのように再現するかが課題で、アコースティックギターとベースだけ生楽器にして、あとは音源の同期にしました。全部を生楽器にしてしまうと、ライブバージョン感が強くなりすぎてお客さんが入り込みづらくなるので、総合的に考えてこのバランスかなと。

── つまり、この曲はライブ全体の構成のなかで、作中の再現であるという方向を強くしたわけですね。

高橋 作品をもう一度思い出してもらうパートです。ボーカルの古木(のぞみ)さんも素晴らしかったので、そこはうまくいったと思います。

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放送日: 2017年7月9日~2017年9月24日   制作会社: Studio 3Hz/アクタス
キャスト: 今村彩夏、関根明良、大地葉、影山灯、古木のぞみ、菅生隆之、沢城みゆき、本田裕之、山崎たくみ、土師孝也、飯田友子
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上映開始日: 2021年2月11日   制作会社: アクタス
キャスト: 古賀葵、関根明良、大地葉、影山灯、古木のぞみ、菅生隆之、沢城みゆき、本田裕之、山崎たくみ、土師孝也、飯田友子、飛田展男
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