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歌詞の主人公のシチュエーションを、具体的にイメージして歌いました
── 6曲目の「かすかなかなしみ」は、鈴木祥子さんの作詞・作曲です。 安野 この曲は試行錯誤の結果、ウィスパーでささやくように歌うという完成形にたどり着いた曲でした。
── ウィスパーボイスは難しかったですか? 安野 1stミニアルバム「涙。」の「ねぇ、話をしよう」で、ウィスパーを経験していましたが、あの曲は子守歌というコンセプトで、お休み前に部屋で小声でおしゃべりしているような気持ちで歌っていたんです。でも、「かすかなかなしみ」と、次の「嘆きの空」は、誰にも言えないことを歌っている、自分だけに語りかけているという意味でのウィスパーで、意味合いが違いました。
── 「かすかなかなしみ」には、どんなテーマが隠されているのでしょう? 安野 この歌の主人公は、気づいてしまった悲しみを胸のうちに秘めて、表には出さないんです。もちろん「あなた」にも言わず、墓までこの想いを持っていくつもりだったと思います。とても苦しいからこそ、もっと大きな愛でそれを上書きしようと試みているんです。「わたしは笑顔で歌っていよう」「かすかなかなしみとともに生きよう」ということは、誰にも言わないけど、この想いをずっと抱えてあなたとともに生きていこうということなんですね。絶対になかったことにはできないんです。女性らしい、すごい歌詞だなと思いました。女性のリスナーさんには共感していただけると思いますし、この気持ちをわかってくれる男性がいたら、「ありがとう」って感謝して回りたいくらいです(笑)。
── 深いですねー。 安野 はい、とても深い歌詞だと思います。だから、レコーディングをしているとき、この主人公はいったいどんな状況でこの歌を歌っているんだろうって、考えこんでしまったんですね。「あなたが彼女といっしょに居たこと、昨日はじめて知ったんだ」とあるので、それからずっとモヤモヤしていて、夜になって、「あなた」の声を聞かないと気がすまなくなって、電話をするんです。でも、相手は電話に出てくれなくて、さみしいという気持ちを留守電に入れてみた。そんなシチュエーションを想像して、歌いました。言わないつもりだったのに、結果的にこっそり言うっていう(笑)。
── かなり具体的な状況をイメージしたんですね。 安野 はい。主人公はどんな状況でこの歌を歌っているんだろうと具体的に想像することが、私にとってはすごく大事なんです。そのイメージがしっくり来ると、いいテイクが録れます。ここは街角? それともひとりの部屋?っていろいろ考えます。
── 「かすかなかなしみ」は、部屋の中ですね。 安野 はい。夜、カーテンを閉めて電気を付けずに歌っているんじゃないかと。レコーディングでも、この曲は椅子に座ったまま歌いました。
── 次の「嘆きの空」は、どのように感じましたか? 安野 この曲は、解釈するのが難しかったです。歌詞をプリントした紙には「顔で笑って心で泣いて」ってメモしてあるんですけど、これは福田さんに言われたことですね。そういう歌にしてくださいと。
── アルバム中、もっともスローな曲なんですけど、タイトルに反して、悲しみや嘆きというイメージは、そんなに感じませんでした。 安野 そう感じていただけたら、よかったです。悲壮感を出さないで歌いたいなと思いました。この曲の主人公は、愛しい人とはもう一緒にいられないということがわかっているんですよね。やりきれない気持ちを、言葉にすることで昇華させてるのかなと思いました。ある意味、愛する人への気持ちを弔っている歌、おくっている歌です。
── 最初は、ちょっとしたことでケンカしちゃったのかな、という軽い感じだったんですけど、だんだん、もう二度と会えないだろうことがわかってきて、これまた深いなと。 安野 そうなんです。もう二度と会えないんです。あなたには決して届くことのない歌を、主人公は歌っているんですね。私が歌ったことで、みなさんに聴いてもらえることになったんですけど、彼女としては誰にも知られたくない、CDにされるのも恥ずかしい気持ちかもしれなくて。誰かに知ってもらいたくて歌ったのではなく、日記に記されるような気持ちの歌だと思います。
── 本当は隠しておきたい気持ちなんですね。 安野 ですから、私もそっと歌いました。「ごめんね、あなたの気持ち、代弁させてもらうよ。心をこめて歌うからね」って気持ちで、とても丁重に扱いました。でも、最初に言った通り、私には彼女の気持ちをすべて理解することは、難しくて。歌詞を読んでいても、どこか情緒不安定というか、気持ちがうまく繋がっていかずに飛躍している部分があるんですね。歌っているとそこで止まってしまって、「ここから次に、どうやって繋がるんでしょう?」と福田さんに尋ねて、「こんなふうに考えてみたら、どうでしょう」「わかりました。それで歌ってみます」みたいなやり取りをしながら、行ったり来たりして完成させていきました。彼女が、その一瞬一瞬に何を考えていたんだろう、というところに寄り添って歌いきった曲です。
── 歌の主人公は、自分の気持ちを整理しきれてないというか。 安野 そうなんです。2サビから間奏明けのラストサビへも、気持ちの切り替えが早すぎるじゃないですか。ここには時間経過があると思うんですよね。悲しくて悲しくて、それでコーヒーを飲んでふうっとひと息ついて、明日も生きなきゃいけないと思って、悲しかったけど美しい空だったよって。自分だけがわかればいい、誰にも読ませない日記ですよね。
── そんなしっとりした曲の後に、1stシングルの「ロケットビート」が来て、ミニアルバムは明るく終わっていきます。7曲でうまく起伏ができていて、全体的には心地いいサウンド感に包まれた1枚だと感じました。 安野 生の楽器の演奏による、人の息吹がこもったサウンドになったと思います。私は楽器が歌っている音楽が好きなので、そういう曲をたくさん歌わせていただけてうれしかったです。しかもミュージシャンの方々がとても豪華で、最上級の幸せを感じました。音楽的には懐かしさがあっても、今の技術で録音されていて、楽器の音の1つひとつが聞こえてくるんです。なんでしたっけ、ちっちゃい箱みたいなヤツで、すごくいい音が聴ける機械って?
── もしかしてハイレゾのことですか? 安野 ハイレゾです!(笑)。「笑顔。」はハイレゾ配信もあるので、ぜひ、演奏の素晴らしさを味わってみてください。
── わかりました(笑)。リリース後には安野さんにとって初めてのライブツアーが待ってますね。「きっと、ふわふわとしてる。」というのがツアータイトルです。 安野 スタッフさんとアイデアを出し合っていたときに、私がふと思いついたタイトルです。で、歌詞通りにいくなら正しくは、「ずっと、ふわふわとしてる。」だったんですけど、ライブがそれだとまずいんじゃないかということで、「ぼくのヴィーナス」にも入っている「きっと」に替えました(笑)。
── 盛り上がりつつも、安野さんらしいふわふわ感が味わえるライブになりそうですね。 安野 心地よいライブにしたいと思っています。客席のみなさんとバンドメンバーさんとスタッフさんと私の全員が、「楽しいね」という気持ちで繋がる、幸せな時間を過ごしたいです。ぜひ、遊びに来てください。
安野希世乃プロフィール
7月9日生まれ。宮城県出身。「マクロスΔ」の戦術音楽ユニット・ワルキューレのメンバーとして活躍するいっぽう、2017年7月、1stミニアルバム「涙。」でソロデビュー。2018年4月には、1stシングル「ロケットビート」(TVアニメ「カードキャプターさくら クリアカード編」OP)をリリースした。
CDデータ
■2ndミニアルバム「笑顔。」
初回限定盤(CD+Blu-ray) 3,400円(税別)
レーベル:FlyingDog/2018年11月7発売
通常盤(CD) 2,400円(税別)
レーベル:FlyingDog/2018年11月7発売
〈収録曲〉
01. ぼくのヴィーナス
02. ふわふわとしてる
03. 笑顔。
04. Wonder Shot
05. かすかなかなしみ
06. 嘆きの空
07. ロケットビート
〈初回限定盤Blu-ray収録内容〉
「ちいさなひとつぶ」 Music Video
「ロケットビート」 Music Video
「ぼくのヴィーナス」 Music Video
「ぼくのヴィーナス」 メイキング映像
インフォメーション
●2ndミニアルバム「笑顔。」 リリース記念イベント~ぼくたちのヴィーナス~
11月18日(日) 13:00~ ゲートシティ大崎(東京)
11月24日(土) 14:00~ アスナル金山(名古屋)
【内容】ミニライブ&ハイタッチ会&特典お渡し会
※ライブは観覧フリー。ハイタッチ会&特典会はCD封入の参加券が必要
●安野希世乃1st LIVEツアー2018「きっと、ふわふわとしてる。」
12月8日(土) 恵比寿ザ・ガーデンホール(SOLD OUT)
12月15日(土) 大阪・オリックス劇場
12月22日(土) 舞浜アンフィシアター(追加公演)
※詳細はオフィシャルサイト https://avex.jp/kiyono-yasuno/ まで
(取材・文/鈴木隆詩)