「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」CG制作・サブリメイションに直撃インタビュー! 艱難辛苦を乗り越え、クライマックス目前の制作秘話とは!?

2018年10月31日 15:060

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「宇宙戦艦ヤマト2199」でCGを担当していたサンライズD.i.D.スタジオからバトンを受け継ぎ、「宇宙戦艦ヤマト2202」でCG制作作業を担当することになった株式会社サブリメイション。

当初は、使っていた3DCGソフトウェアが違っていたため、戦艦などのデータコンバートにとても苦労したそうだが、「第六章」になると新たな大変さもあったそうだ。今回、同社取締役にして3DCGチームの木村太一さん(CGIディレクター)をはじめ、上保友人さん(プロジェクトマネージャー)、本間靖範さん(CGアニメーター)らサブリメイションのスタッフの皆さんに話をうかがった。

 

 

最初の壁はデータの引き継ぎ!

――皆さんのそれぞれの役割を教えてください。

 

上保友人(以下、上保) 自分は実際のカット作業より、それぞれの作業者のスケジュールの管理、クライアントであるXEBECさんとのデータのやり取りなどの業務が多いです。もともとCGアニメーターをしていたので、急ぎのときにサポートで入ることはありますが。

 

――アニメで言うと制作進行に近いんですか?

 

上保 そうですね。弊社の場合は、CGやアニメなど、全体の作業工程を知らないとできないので、私が担当しています。

 

木村太一(以下、木村) データの確認などもあるからね。実際、上保さんは第一章ではアニメーターだったんですけど、僕のほうが忙しすぎて今の役割に就いてもらいました。僕のほうはCG全般の作業やクオリティを見る感じになります。実作業は少ないのですが、最終的には監督のOKを取らなければいけないので、それに見合うものを作らせる立場ですね。

 

――アニメで言うと総作画監督のような感じですかね。

 

本間靖範(以下、本間) 自分は実作業を担当してます。あとはエフェクトのベースデータを作ったりしています。みんなバラバラに作ってしまうと、ビームの色が人によって違ったりしてしまうので、自分のほうで誰もが使いやすい形でエフェクトのベースデータを作るような下準備をしています。そのうえで、難しいカットを数カットを拾ったりはしています。

 

――第六章までの作業を終えて、率直な感想はいかがですか?

 

木村 あっという間でした。3Dも最初は探り探りで作っていましたが、それも慣れてきて、戦闘シーンは見応えがある感じになっていったと思います。

 

上保 すごく濃いのであっという間でしたね。だから2年半経った実感がなくて……。慣れてきたことで、もっと作り込むような形になっていったので、第六章は楽しみにしていてほしいです。

 

本間 第五章あたりから戦闘も激しくなり、そこで終わりではなく、このあとも盛り上がりがすごいので、そこについていけるようCGもクオリティを上げていかなければいけないなと思っています。

 

――最初の段階で、3DCGのソフトウェア(「3ds MAX」から「LightWave」)が違っていたのでCGの引き継ぎ作業が3~4か月かかったと聞きましたが、戦艦以外の引き継ぎなどもあったのですか?

 

上保 エフェクトのデータもあったのですが、そちらに関しては、艦よりも面倒なことがありまして…。ソフト固有の機能を使っていたりしたので移植が簡単にはできなかったんです。なのでそれは実際に「2199」の映像を見て、あとは使われていた参考データを見て、目でコピーするという(笑)。

 

本間 基本的にはデータの移植、モデリングのコンバートはそのままではできないので、いったん自分のほうで全部バラして、それを「LightWave」でほぼほぼ近い形で再現できるようにしました。若干アレンジを加えたりはしましたが。

 

「2202」ならではのCG表現とは?

――サブリメイションで1から作り上げていった戦艦についても教えてください。メカニカルデザインの方のデザインを元に、モデリングするのですか?

 

木村 そうです。こちらでやったのは「アンドロメダ」や「大戦艦」(カラクルム級戦闘艦)がそうですね。

 

上保 「銀河」についてはベースが「ヤマト」なので、ベースからの改造になります。それと地球のパトロール艦や護衛艦などに関しても新規で作っております。ガトランティス側で行くと大戦艦と「バルゼー」や「ゴーランド」もそうですね。あとはガミラスの「ノイ・デウスーラ」も完全新規になります。で、それらの中でも一番大変だったのは、やっぱり大戦艦ですね(笑)。



上保 設定画をもとに作成したものを、XEBECさんにて監督チェック&デザイナーチェックをするのですが、その際に、描き足しなどがあります。あるいはここの角度はもっとこんな感じでという形状修正など、そういう指示が来て、さらに修正を重ねていきました。大戦艦って、どのくらいかかりました?

 

木村 4か月から5か月くらい……?(笑)

 

本間 モデリングに4か月くらい、そのあとにテクスチャーが入ったり調整とか諸々すると5か月くらいですね。

 

木村 大戦艦は特に追加の線がたくさん来たんですよ(笑)。

 

上保 (データの移行の)準備期間から作業をしていたので、まだ時間に余裕があったんです。だからディテールを追求していきたいというところがあって、デザイナーさんからの細かい設定をいただく感じになりました。

 

木村 モデリングのチェック画像は複数のアングルで提出するため、三面図で描けないところがアップになったりするので、そこにディテールが次々と追加されていきました。

――そのご苦労された大戦艦のディテールは、実際フィルムにも反映されていたのではないですか?

 

木村 やっぱりあれだけ作り込んだので、出番が多い気がします(笑)。 

 

上保 線が増えているおかげでアップにしても耐えられるんですよね。線が少ないと艦体色一色の画面になっちゃうけど、そういう点では大戦艦が手前を通り過ぎていくと画面が映えるので、演出はしやすいと思います。

 

――意図的にそういう演出もされていたかもしれないですね。

 

木村 最近のコンテはそのあたりを踏まえたものになっているかもしれません。なので手をかけた甲斐はありましたね(笑)。

 

――ちなみにそこまで細かく作っていったものは、ひとつのデータで処理できるのですか? 

 

上保 大戦艦に関しては、<レギオネルカノーネ>で、めちゃめちゃいっぱい集まったシーンがあったので、少し軽めのデザインのものも作りました。ハイ/ミドル/ローで作っているんですけど、基本的にはハイモデルのまま動かしています。。

 

木村 それはソフトの差なんですよね。「LightWave」は、割とハイモデルを動かせるソフトなんです。

 

上保 複雑な機能や便利機能があまりなく、ベーシックなものだけが揃っているソフトなので、その分、数を置けるんです。なので軽くて動かしやすいというのはありますね。

 

本間 特に「2202」になってからですよね。「2199」の時は、ヤマト対ガミラスだったんですけど、地球艦隊&ガミラスの混成部隊が出てきて、さらにガトランティスも登場するので、1カットに何百隻とかが出てきたりすることがあるんです。軽いというのも、ものすごく重要になりました。

 

上保 そのおかげもあって、基本的にすべてがハイモデルになっているんです。実は作業者的にも、ディレクター的にも、全部ハイでやったほうが、管理面で楽なんです。

 

木村 第五章から第六章にかけては戦艦がいっぱい出てきているので、注目してください(笑)。

 

――ちなみにCGで描かれてない乗り物もあるんですか?

 

上保 基本的にはCGですが、アニメだとCGを使われることが多い「車」が、「ヤマト」だと手描きになっていますね。

 

本間 あと、第六章(第二十一話)で数カットしか出てこない、アンドロメダなどの別バリエーションは手描きです。

 

 

 

どんどんよくなっていくCG表現

――この作品ならではの大変なところというとどんなことになりますか?

 

木村 爆発とかは「2199」の時は手描きもあったりしたんですけど、「2202」だと爆発とか含め、ほぼほぼ3Dでということになりました。それが思ったよりもあったので、そこは大変でしたね。

 

上保 監督チェックの際、このサイズなら3Dでお願いと……。

 

木村 最初のコンテの打ち合わせ前は、作画用アタリデータを出す想定でいたんです。そう思って打ち合わせをしていたら「全部3Dでお願いします」と言われたので、「はい」と答えるしかないですよね(笑)。

 

本間 最初に1カット爆発しているところを作って、「これ以上(の表現)になると(3Dでは)厳しいので、その場合は作画でお願いします」と言ったら、比較的気に入っていただけて、そのまま使用されることになりました。

 

――そうなると第六章までで、大変の種類が変わってきた感じがしますね。

 

木村 最初は「2199」からの引き継ぎ作業があったので、そこに遜色がないようにしようというのが第一の目標だったんです。でもそれに慣れてくると、要求自体も上がってくるし(笑)、こちらも、今度はこうしようとか、戦闘を激しくしようとかいうところになってくるので、そういう意味では苦しんでいます(笑)。

 

上保 前回ここまでやれたから、今度はこのくらいまでと監督から言われることもあれば、我々のほうからカットの内容的に、エフェクトを派手にしてみましたということもありました。序盤でアンドロメダとヤマトがすれ違うところで尺が伸びているというのは、こちらからの提案だったりします。なので第二章からは、自分たちでもっとこういうふうにできる、派手にできるというところで、データや素材が増えて時間もかかり、苦しんだりはしてますね。

 

木村 だから初期の頃の爆発と今の爆発はクオリティが違うと思いますよ。

 

上保 いまテレビで放送されていたりするので、最新の第五章まで見ている方は、こんなだったっけ?と思うかもしれません(笑)。

 

木村 後半だと監督や副監督の、爆発に対する好みもわかってくるんですよ(笑)。発光感、フレアを強めにとか。そういう好みがわかってくるので、第六章あたりはそれに寄っている気がしますね。3DCGは第1話から見ていくと、どんどんよくなっているのは間違いないです。

 

――では、第六章の見どころを教えてください。

 

木村 見てほしいところはいっぱいあるんですけど。

 

上保 PVを見ていただけるとわかると思いますが、戦闘シーンがすごいので。

 

木村 あとはオマージュがありますね。

 

上保 「ヤマト」が復活するので、そこの出撃シーンは旧作オマージュになっています。あとはOPのとあるカットが本編でようやく出てきました。

 

木村 若干変わっているけどね。それは監督がどうしても入れたいということで。

 

上保 見ていただくとわかると思います。

 

木村 羽原(信義)監督がオマージュをするのが好きなようで、どこどこを参考にというふうに書いてあったりするんです。

 

上保 「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」が好きなんですよね。

 

木村 それで特にこだわってくると作業者のところに行って、PCでここの角度をこうしてって言いに行くんです(笑)。

 

上保 ムービーで作ったものをチェックしてもらって指示をもらい、翌週にそれを直したものを見てもらうんですけど、ここはこだわりたいからって作業者のところまで行って、動きをレクチャーしてますね。

 

――では最後に、好きな戦艦を教えてください。

 

上保 アンドロメダの空母型の「アポロノーム」ですね。アンドロメダっていうのは一番艦のデザインを思い浮かべると思いますけど、まさかあそこに甲板が付くのかと! あとはプラモデルを作ってみて、実物を見て、あのボリューム感は、惚れ込んでしまいましたね。すごく好きですね。

 

本間 自分は「大戦艦」が好きですね。作るのに手間もかかっていますから、思い入れがあるという事もありますが、何より1話目の大活躍に惚れたので、メカコレの大戦艦を買ってきて、赤黒く塗装したりもしました。

 

木村 僕はアナライザーが好きなんですけど(笑)、戦闘機だったらツヴァルケのキーマン機で、戦艦だったら「銀河」ですかね。銀河もプラモデルで見ると一段とカッコよくなっているなって。SFな感じがすごくして素晴らしいなと思います。まぁ、戦艦は全部好きなんですけどね。


――アナライザーは、やっぱり人気が高いですよね(笑)。

 

上保 特に木村さんは第六章に出てくるブラックが好きで。

 

木村 だいぶ感情がなくなっちゃった感じだけど、カッコいいなと。

 

――ありがとうございました!

 
(取材・文/塚越淳一)

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