「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」第11話をレビュー、しちゃいます!:「わたしたち」が舞台少女

2018年09月25日 19:270

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「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」第11話「わたしたちは」が放送されました。

オーディション最終日のエクストララウンド「絶望のレヴュー」で勝者となった神楽ひかりの望みは、舞台少女たちからキラめきを「奪わない」こと。ひかりが望んだのは、神楽ひかりがいないレヴューだったのでしょうか。大場ななのループを打ち破った絆の短刀が、今は自身を傷つける刃になっているのがつらく、むごいです。8人と1人の舞台少女のキラめきをもって作られるはずの舞台をあがなったのは、ひかり自身の存在そのものだったのかもしれないと思いました。

 

キリンらしいな、と思ったのは、9人の世界から神楽ひかりという存在をもぎとっても、彼女の存在の記憶そのものは鈍い痛みを伴って残り続けることです。ひかりが「消えた」だけでなく、退学届というつじつままで揃っています。退学届にはキリンマークの承認印。これはキリンが(ひかりが?)世界をねじ曲げた結果なのか、あるいはキリンが聖翔学園で現実に重要な決裁権を持つ存在なのか、おそらくは前者だと思いますが…。

 

ひかりを探す華恋の足取りは、今まで華恋とひかりが絆を結んだきっかけになった場所をなぞっています。オーディション終了1日後、3日後、1週間後、2週間後、3週間後、そして1か月後。神楽ひかり抜きの8人を中心とした第100回聖翔祭は動き出します。レヴュー・デュエットに勝ち残ったのはあくまでも「華恋とひかり」ですから、ひかりが消えた以上、天堂真矢と西條クロディーヌがクレールとフローラを演じるのは当然でしょう。真矢とクロディーヌは決して納得していないと思いますが。気になるのは愛城華恋の名前がキャストリストの末尾にあることです。これは、華恋がオーディション参加者の末席にいることを意味するのか。あるいは愛城華恋は絶望の女神に配役されたのか? 数回見直した結果、このリストは舞台少女たちの現時点でのキラめきの総量を示しているのかなと思うようになりました。そう考えると、大場ななが真矢クロ以外で一番上にいるのが、なんかいいなと思います。

 

ひかりを探し求める華恋の姿を見るのはつらいですが、救いがあるとすれば、華恋の傍に常にまひるが寄り添っていること。そして、ばななが華恋たちをやさしく見つめ、包みこむ存在であることです。少なくとも神楽ひかりが華恋と共に成し遂げたことは、決して無駄ではなかった。華恋の事情を7人が知ってくれているのも救いになります。

 

そして、絶望とひとかけらの希望を感じさせる描写がやってきます。華恋の舞台への熱意、情熱、高まり……キラメキ。それが失われてしまったことが描かれるのです。それは、かつて英国のキリン・オーディションに敗北した後のひかりの姿と相似しています。ですがここで立ち止まって考えたいのは、ひかりが選んだのは「キラめきを奪わない舞台」だったはずということです。なのに、華恋のキラめきが奪われている。考えられるのは、ひかりの武器「Caliculus Bright」につながる鎖が暗示するものです。神楽ひかりは、愛城華恋が約束を覚えていて、2人の絆があったから小さなナイフサイズのキラめきを残し、自分を再生産することができました。ひかりの一部になっていた華恋のキラめきが消費された結果、華恋が抜け殻のようになってしまったのだとすれば、2人の絆の鎖はまだつながっているはずです。2人でひとりの舞台少女、そのつながりが、神楽ひかりに至る唯一の可能性に思えたのが「ひとかけらの希望」でした。

 

戯曲「スタァライト」の結末が変わり(別のストーリーがあり?)、星摘みの塔に幽閉、という記述が見つかります。何気なく描かれていた「塔」のモチーフと、華恋とひかりの思い出の東京タワーが頭の中で結びついた時はゾクッとしました。やさしく強く響く「舞台少女心得 幕間」の調べとともに、華恋は自分の足で地下舞台を目指します。その背中を、舞台少女たちの言葉と想いが力強く押します。華恋が失ったアタシを再生産する燃料は、「わたしたちが」過ごした舞台で生まれた絆だったのだと思います。

 

ステージ上に置かれたインビテーションカードに書かれたキャスト名は、神楽ひかりただひとりでした。ひかりが望んだのは華恋たち8人の舞台ではなく、舞台少女の罪と罰のすべてをひとりで背負う舞台だったのでしょう。

 

「聖翔音楽学園第九九期生出席番号1番。愛城華恋、入ります!」

 

最終話。運命の舞台の、幕が開きます。

  

(文:中里キリ)

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少女☆歌劇 レヴュースタァライト

放送日: 2018年7月12日~2018年9月27日   制作会社: キネマシトラス
キャスト: 小山百代、三森すずこ、富田麻帆、佐藤日向、岩田陽葵、小泉萌香、相羽あいな、生田輝、伊藤彩沙
(C) Project Revue Starlight

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