ホビー

イラストレーター、山下しゅんやに聞いた“フィギュア化用美少女イラストの描き方”【ホビー業界インサイド第39回】

2018年09月22日 12:000

企画記事

ホビー業界インサイド

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立体化しやすいデザインと、フィギュア原型師の工夫

── 山下さんはオリジナルだけでなく、コトブキヤの「HORROR美少女」シリーズ、「DC COMICS美少女」シリーズ、「MARVEL美少女」シリーズなど、版権のあるキャラクターもフィギュア用にアレンジしていますね。版権キャラクターの場合、やはり制約があると思うのですが？

山下　いえ、ほとんどありません。コトブキヤさんのほうで版権元に許可をとっているらしくて、最初に「こうしてほしい」と、ポーズが指定されるんです。ポーズ以外の部分では、かなり自由に描かせてもらっています。

── 立体化を考慮して「ここだけは気をつけよう」と考えたりしますか？

山下　最初のころは、考えていました。たとえば、頭から1本だけ飛び出た“アホ毛”なんかは、立体にすると折れてしまうんじゃないか。手の上で魔法の力でアイテムが浮いているようなデザインは、立体化できないんじゃないか。あるいは、しゃがんでいるポーズだと、ほかのフィギュアと並べたときに見ばえがよくないんじゃないか、目をつむった表情やアゴをあげたポーズは避けたほうがいいんじゃないか……など、ずっと考えていました。だけど最近では、そんな制約を自分が考えるよりも「原型師の工夫を見たい」と思うようになりました。

── マックスファクトリーから発売されているプラモデル、「minimum factory」シリーズは、どういう経緯で実現したのですか？

山下　原型師の太刀川カニオさんと飲んでいるときに、「戦車の横に置けるフィギュアが欲しいよね」「だったら、1/35がいいよね」という話をしていたんです。途中からMAX渡辺さんが入ってきて、急にプラモデルにしようと話が大きくなったんです。デザインに関しては自分で戦車兵という縛りを設けているだけで、100パーセント好きに描かせてもらっています。

── ここにあるminimum factoryのネーネは、ご自分で塗装されたものですね？

山下　はい、キットの素組みを塗装しました。色だけでアイドルっぽさを出したいと思って。もともとのネーネのデザイン画では、黒いスカートに赤いラインが入っています。黒地に赤色を塗るなんて難しいに決まっているのに、マックスファクトリーさんからはまったく修正がありませんでした。最新作のみゆきは目先を変えて水着姿にしたので、「露出度が高すぎる」と自衛隊ファンの人に怒られるかと思いましたが、大丈夫でした（笑）。

── minimum factoryの組み立て説明書に「作る前にお読みください」と、キャラクターが話している絵がありますよね。

山下　ええ、もちろんタミヤの説明図のパロディです。模型趣味が仕事に生かせるとは思ってもみませんでした。模型雑誌も昔から読んでいて、松本州平さんの作り方をまねしたり、フランソワ・バーリンデンに憧れたり……。工作は苦手で、塗装が好きです。

── キャラクターをミリタリーっぽく見せるコツはあるんですか？

山下　それぞれの国の女の子に見えるよう、髪型などを工夫しています。minimum factoryに関しても原型師のカニオさんの個性を見たいと思っているのですが、やっぱりどの原型師さんも私の絵に似せようと努力されるんです。よく「見えないところ、どうなってるの？」と聞かれるのですが、私としては、原型師さんの自由な解釈で作ってほしいと思っています。

── 山下さんのデザイン画は、前と後ろの2枚を描くのですか？

山下　仕事によりますが、前から見た絵だけの場合も多いです。後ろ姿は原型師さんの想像にまかせたほうが、絶対に面白くなると思っています。

── 山下さんの絵は、幅広い年齢層に受け入れられている気がします。

山下　自分で言うのも何ですが、海外のサイトでは私の絵を模写してくれたり、フィギュアの写真をアップしてくれる人がとても多いんです。

── 絵のトレンドは意識されますか？

山下　私の絵は、トレンドとは関係ない気がします。写実系なので、トレンドと無関係な部分で受け入れてもらえているんじゃないでしょうか。メインロードに立っていなくて、低空飛行だから続けられているというか……。狙っていたわけではなくて、いつの間にか今のポジションに位置していたんです。