「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」第9話をレビュー、しちゃいます!:星罪の夜、舞台の輪の外で

2018年09月11日 18:460
「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」第9話をレビュー、しちゃいます!:星罪の夜、舞台の輪の外で

舞台を愛し、仲間を愛し、その時間が永遠になることを願った少女の祈りが、「戦い」の結果によって否定され、無に還る。

それはあまりにも哀しい物語なのではないかと、思っていました。

「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」第9話「星祭りの夜に」。

 

聖翔学園99期生の一同は、女優として舞台の上に立つA組、脚本・美術など裏方として支えるB組の区別なく、次の第100回聖翔祭で上演する舞台「スタァライト」をよりいいものにするためにがんばっています。香子や双葉が衣装や小道具の改良を提案したり、B組の女子(雨宮さん)が新しい脚本を一夜で書き上げたりとアプローチはさまざまですが、次の舞台を前より少しでも魅力的なものに、という想いはひとつです。ですがそんな仲間たちのまっすぐで熱い想いが、本質的には停滞した、舞台の循環を望んでいたばななの心を刃のように傷つけます。

 

とても印象的なシーンがありました。学園の廊下のシーンで、光の中に立つ星見純那と大場なな、そして薄暗い影の中に立つ愛城華恋と露崎まひるという絵です。壁にあるポスターから、ばななたちが立っている側がループする第99回聖翔祭という「ぬるま湯のようにおだやかな光」、華恋たちが立っている側がこれからやってくる第100回聖翔祭という「先が見通せない未知の世界=影」のイメージであることがわかります。このシーンは個人的に、ひかりではなく、まひるがそこにいるのが最高だと思いました。自分が主役に、トップスタァになれなかったオーディションに納得がいっていない(できることならまた挑戦したいと思っている)純那がばななの側にいて、華恋とともに過ごす新しい日々の価値を信じているまひるが華恋の側にいる、ということだと思います。

 

そういえば、春休みに聖翔学園の寮に居残ったのは、大場ななと星見純那だけでした。1年生でもない2年生でもない、不思議な時期。夜明け前のようであり、夕暮れ後のようでもあるオレンジの世界で、誰よりばななの側にいたのが純那なのです。その純那にさえ「今度の新しい脚本、私も好き」と言われたことが、影に進むばななの背中を決定的に押します。

 

第99回聖翔祭の回想では、ぼかされていた戯曲「スタァライト」の配役の詳細が明かされます。クレールの天堂真矢とフローラ役の西條クロディーヌがダブル主演。激昂の魔女=星見純那、傲慢の魔女=愛城華恋、逃避の魔女=花柳香子、嫉妬の魔女=露崎まひる、呪縛の魔女=石動双葉、そして絶望の魔女が大場ななです。魔女たちが司る感情が、これまでの彼女たち自身の物語とリンクしているのが楽しいですね。特に、夢も、友情も、ひかりちゃんも全部が欲しい! 2人でスタァになる! と言い切る華恋は、確かにとても傲慢で、主人公らしいです。回想の中での主演の真矢とクロディーヌの演技は素晴らしく、特にクロディーヌってこんなに魅力的な女の子だったのかと再確認したほどでした。

 

そしてもう……最高、以外の言葉が見つからないのが、今回のレヴューシーンからの流れです。まずレヴュー前の前段として、舞台のループの何かを変えてしまった存在、規格外のパワーとキラめきの持ち主は華恋であること、輪廻の破壊者が愛城華恋であることにばななが気づきます。この時の彼女の思考の流れは、見ている僕たちも共感できるものです。そこからレヴューの開幕を告げる「変身バンク」に突入する時、僕らの……いやおためごかしはやめましょう、「僕」の感情移入の対象は大場なななのですね。第7話でばななの事情を「理解」し、第8話のここまでの流れでばななの痛みに「共感」する経験はそのためにあったのです。

 

光り輝いていたのがレヴューシーンでの、ばななの堂々たる芝居です。大場なな役の小泉萌香さんは本作が声優初挑戦で、声の演技の経験が豊富なわけではありません。ですが今回の「そんなの私のスタァライトじゃない!」の叫びは、誰にも真似ができない説得力と魅力がありました。舞台、アフレコ、さまざまな経験で彼女が学んできたものが、大場ななの叫びに真実に響きを与えたのです。「星々の絆」を高らかに歌う大場ななの歌声はまさに魔王の風格。少なくともこのレヴューの主役は紛れもなく、大場ななでした。

 

オーディションは、あっけないぐらいあっさりと主人公たる愛城華恋の勝利に終わりました。そして、輪廻に囚われた魔王を解放したのは華恋ではなく、ななの傍らにいた存在・純那だったのです。舞台版で星見純那が偉人の格言を引用する場面はちょっとギャグっぽいテイストがあって、アニメでは純那の格言好き設定はほとんどオミットされていました。ですが今回、アニメで純那が満を持して格言を並べ立てるシーンは最高にかっこよくて、本当に上質な舞台の一節のようでした。「人には運命の星がある。きら星、明け星、流れ星。己の星は見えずとも、見上げる私は今日限り。つかんでみせます、自分星!」の舞台でもおなじみの台詞を、最高の口説き文句に昇華させた脚本の手腕に、拍手を贈りたいと思います。

 

「じゅんじゅん」なんて気軽な呼び名を決して許さなかった、硬質で脆い優等生だった親友が、最高に強くて魅力的な、愛しい少女に変わっていたこと。彼女をこんなにも輝かせている新しい「脚本」が、悪いものであるはずがない……その事実が、大場ななを先が見えない新たな舞台へと歩ませたのではないかと、思いました。

 

幼なじみと誓った運命の舞台に、2人で立ちたい。

大好きな仲間たちとの幸せな世界にずっといたい。

 

どちらも間違ってなんていない。それでも弱き願いは戦いで否定されるしかないのだと、思っていました。

どちらの想いも抱きしめて、一緒に進んでいく。そんな物語もあるのだと、教えられたエピソードでした。

 

(文:中里キリ)

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少女☆歌劇 レヴュースタァライト

放送日: 2018年7月12日~2018年9月27日   制作会社: キネマシトラス
キャスト: 小山百代、三森すずこ、富田麻帆、佐藤日向、岩田陽葵、小泉萌香、相羽あいな、生田輝、伊藤彩沙
(C) Project Revue Starlight

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