戸松遥インタビュー 次なる幕開けを感じさせる10周年記念シングル「TRY & JOY」
2018年、アーティスト活動10周年を迎えた戸松遥が、5月に発売されたアルバム「COLORFUL GIFT」に続いて、アニバーサリーイヤーを飾るニューシングル「TRY & JOY」を9月5日にリリースする。ツアーのリハーサルの最中に収録されたこの楽曲は、そのときのテンション感を楽曲にパッケージングし、新たなチャレンジにも挑んだ、まさに今の戸松遥らしさが現れた1枚だ。いかなる思いで生み出されたのかをたっぷりとうかがった。
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驚異の集中力で収録したニューシングル「TRY & JOY」
── 7月28日から「Live tour 2018 ~COLORFUL GIFT to YOU~」がスタートしました。ご自身の手応えはいかがですか?
戸松 とても手応えを感じています! 皮切りの名古屋公演2daysを終えて、事務所に届いたお手紙やラジオへのメールには、「新しい試みが詰まっていて新鮮でした」といった感想が書かれていまして、「ドヤ松」(ドヤ顔の戸松)になっている自分がいます(笑)。今回はZeppを中心としたツアーで、セットはシンプルにしつつも、見せどころでは思い切り映像を使って異世界にいるように見せるという映像と音楽を融合させた演出がポイントです。今まで定番となっていた楽曲も新しい見せ方をすることで、また新たな魅力を感じていただける内容になっています。セットリストは夏のツアーということもあり、自分から「数曲のバラード以外はほとんどアップテンポで構成したいです」と申し出たのですが、かなり体力を要するものになっていて……(笑)。もちろん、リハーサルから本番にかけてコンディションを整えていきましたが、このリストだからこそ感じられる熱い空気感や一体感のあるライブになっています。
── これまでにないアッパーなセットリストで展開されるという点で、この夏にまた新たな挑戦をし、それを乗り越えたんですね。
戸松 そうですね。ありがたいことにツアーは5回目になるので、歌い慣れている曲もたくさんあります。でも、自分の中でそれをマンネリにはしたくなかったんです。歌い続けることで進化はするのですが、「この曲はこうでなくてはいけない」と固まりつつある曲もあって、イチかバチかではあるのですが、何か違う見せ方をできないかなと思って、今回違った演出を採り入れてみました。いっぽうで、まだお客さんの中でも受け止め方が固まりきっていない楽曲もあり、その場合はこちらから見せ方を提示しているものもあります。今回のライブではそれらを一気に回収している部分がありますね。私にとしても、久々に歌う曲がいつの間にかお客さんたちの中で一体感あるものになっていたこともあったりして、とても感動しました。
── さて、ニューシングル「TRY & JOY」は10周年シングルとうたわれています。5月に発売されたアルバム「COLORFUL GIFT」もアーティスト活動10周年を記念する作品でした。制作はどのように進んでいったか教えていただけますか?
戸松 アルバム制作の段階から「私、今年アーティストデビュー10周年なんですよ」とグイグイアピールをしていたんですよ(笑)。そのときはアルバムの制作に手一杯だったのですが、10周年イヤーは今年しかないから、思い出をいっぱい作りたいとは思っていて、その中にはシングルも出せたらという思いもありました。そして、アルバムを集中して制作し、ツアーの準備にかかるというタイミングで、「シングルを出します」という話になったんです。だから、ウォーミングアップができず、いきなりダッシュみたいな感じだったんです(笑)。ツアーのリハーサルをしながら準備をして、レコーディングや撮影など、すごく勢いある中で作ったシングルですね。
── 「TRY & JOY」の楽曲コンセプトは戸松さんから?
戸松 シングルを出すにあたっての最初の打ち合わせで、まず「TRY & JOY」の仮歌を流して「どう思う?」と聞かれたんです。そこで私は「自分が生まれたときに流行っていた雰囲気の曲」と答えたんです。曲自体が今までの自分にはない楽曲だったので、それだけでも10周年の次の幕開けをスタートさせる曲として、率直に「歌ってみたい」と思えた楽曲でした。歌詞については、アルバムでも感謝を歌っている曲がありますし、ここでさらに10周年を重ねると重くなりすぎるので、前向きな歌詞でというリクエストだけさせていただきました。
── 歌詞についてはこの「TRY & JOY」でも、アルバム「COLORFUL GIFT」でも、ほとんどの作詞を古屋真さんが担当されています。それ以前も戸松さんの曲で数多くの歌詞を書かれていますね。ここまで古屋さんの歌詞が戸松さんの琴線に触れる理由はどこにあると思いますか?
戸松 おそらく私の歌の半分近くが古屋さんだと思います。この曲もクレジットを見る前から直感的に、古屋さんだろうなと思っていました。曲の音にはまる言葉のワードの数が歌いやすいんですよね。無理がないというか。そこで呼吸感が取りやすかったり、歌詞の雰囲気も幼すぎず、かといって背伸びしすぎてもいない。そのときの等身大の自分のまま歌えている気がします。
でも、古屋さんと直接お会いしてお話をするということはなくて。お会いするとしても年に1回くらいなんです。ただ、私のことをじっくりと調べてくれたのは、2ndアルバムのリード曲の「明日色ひまわり」がきっかけだったと思います。これは戸松遥の自己紹介曲になっていて、そこでは私のパーソナルな内容を入れ込む必要があり、そこで古屋さんは私のラジオを聞いたりライブに足を運んでくださったりと、それまで以上に調べてくださったんです。戸松は人前に出るときはどんな表情をしているのか、スタッフの前ではどんな様子なのかも含め、それまで以上によく見てくださって書いてくれた曲でした。古屋さんの中でも、私という人間を見たときにずっと変わらない部分と、変わっていった部分はあると思いますが、1つひとつイメージを伝えなくとも、わかっていただける方ではあるのかなと思っています。
── 「TRY & JOY」は新しいタイプの楽曲ということでしたが、歌ってみた感触はいかがでしたか?
戸松 私は自分のリズムをつかむまでに時間がかかるタイプで、いろいろな歌い方を試してはディレクターさんに驚かれるのですが(笑)、この曲は歌詞のイメージとサウンドの感じから、自分の持っている声のストレートな音圧を生かした歌い方がよいんじゃないかと思いました。10周年記念のシングルということもあり、リスナーが第一声を聞いたときからポジティブな歌だということが伝わるとよいなと思って。A・Bメロはサウンド感からしてリズムにビシッと合わせるとかっこよくなりすぎて、角ばったイメージになってしまう気がしたので、そこだけは意識してストレートに歌いました。そのときの勢いと自分の明るいテンション感とかポジティブ感をストレートに出すことを意識しましたね。
── 今回は状況的にレコーディングを短い時間で行う必要があったようですが、それがレコーディングに影響する部分はありましたか?
戸松 ありましたね。変な話、このレコーディングの日に体調を崩していたら、その後のスケジュールがとても大変な状況になっていたと思います(笑)。その日も夕方から声優としての収録がありましたし。でも、追い詰められると集中力って増すんですよね。いつもでしたら差し入れを買って、ひと息ついてからウォーミングアップをして始めるのですが、この日は「さぁ、とっとと始めますよ!」(拍手)と、サッとブースに入ってバッと録って、すぐ終えるという驚異の集中力でした(笑)。短い時間でもよいものが録れるというケースがあって、今回はまさにそれでした。ツアーのリハーサルが始まるくらいのタイミングだったので、歌うスイッチが入っていたこともあり、声の伸びもいつもよりもよいなという感じはありましたね。
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