変態な演技のコツを先輩から後輩へ伝授!? TVアニメ「ハッピーシュガーライフ」花守ゆみり、花江夏樹、洲崎綾インタビュー

2018年08月22日 17:000

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MBS・TBS・BS-TBS“アニメイズム”枠にて好評放送中のTVアニメ「ハッピーシュガーライフ」(原作:鍵空とみやき/月刊「ガンガンJOKER」にて連載中)。「彼女の愛は、甘くて痛い。」というキャッチフレーズも印象的なこの作品は、誰も愛したことがなかった少女・松坂さとうと、そんなさとうが初めて愛した少女・神戸しおを中心とした戦慄の純愛サイコホラー作品だ。

前回の花澤香菜さん(松坂さとう役)と久野美咲さん(神戸しお役)のインタビューに続き、今回はその2人を取り巻く個性豊かでストーリーにも深く絡むキャラクターを演じる、花守ゆみりさん(神戸あさひ役)、花江夏樹さん(三星太陽役)、洲崎綾さん(飛騨しょうこ役)の3人にお話をうかがった。

 

 

キャラクターの気持ちやそうなってしまった経緯を考えて演技

――本作に出演が決まった時のことや、原作の印象などをお聞かせください。

 

花守ゆみり(以下、花守) 原作は高校生の頃から読ませていただいていて。動くさとうちゃんが見られるのがファンとして嬉しいと同時に、これをアニメで見せていいんだと驚きました(笑)。私が演じるあさひくんは「ハッピーシュガーライフ」とは全く反対の道を辿っている、「アンハッピービターライフ」のような男の子なんです。どこまでかわいそうに、それでいて健気に演じられるか、役が決まった時は緊張もしました。

 

でも、やっぱりさとうちゃんとしおちゃんの幸せな感じや愛に真っ直ぐなところを実際に見られるのは(原作ファンとして)役得だなと思って、アフレコでは2人の背中を見ています(笑)。

 

花江夏樹(以下、花江) オーディションで読んだ原作のシーンが結構ぶっ飛んでいるところだったので、最初は色モノ枠のようなポジションなのかと思って受けたんです。役が決まってから原作を1巻からちゃんと読んだら全員が変な人で……。ちょっとヤバい作品に受かってしまったと思いました(笑)。でも、やりがいがあるというか、演じる人によって全然違うものになるだろうなと。原作も読み始めたら止まらないくらいすごく面白くて。この作品に関わることができて嬉しいです。

 

洲崎綾(以下、洲崎) 原作は衝撃的ではありましたが、今これを(アニメとして)やる意味がきっとあるんだろうなと思いました。最近はいろいろな事件もありますし、善悪にきっぱり境界線を引きますよね。でも、さとうを演じている花澤香菜ちゃんを見て思ったのが、一歩間違えたらそっちに踏み外してしまう危うさはみんな持っているなって。しょうこは気持ちを辿りやすいキャラクターなので演じやすいですけど、さとうを演じる香菜ちゃんはしんどいだろうなと思いましたね。

 

 

――それぞれのキャラクターを演じられる際に、どのようなことを意識しましたか?

 

花守 あさひくんは大人を信用していない子なので、心の距離感を遠く設定しました。言葉が届かないような距離だけど、でも届かなきゃいけないという絶妙な距離感を意識して演じています。

 

年齢が高いのか低いのかわからない謎めいたところも魅力だと思っていて。どこか母性をくすぐるし、それでいてどこまでもいじめたくなるという、いけない心をかきたたせてしまうんです(笑)。だから、「壁を乗り越えようとがんばっているのに報われなさそう」と思われるように、かわいそうなところはとことんかわいそうに演じようと。でも、落とし過ぎると本当にかわいそうになってしまうから試行錯誤しました。

 

花江 太陽は気持ち悪いとか変態のように見えるかもしれませんが、そうなった経緯を考えて彼の気持ちを優先すると、そんなに大変ではないですね。ただ、ディレクションではやっぱり「もっと気持ち悪く」とか「もっと大げさに」と言われて(笑)。気持ち悪くしようと思ってやる方が難しいです。(表面的な気持ち悪さではなく)いかにちゃんと気持ちを作って演じるかが大切だと思っています。

 

それにしても……あれだけのトラウマを植え付けるなんて、店長は相当なテクニシャンですよね(笑)。

 

洲崎 原作の1巻を読んだ時は、しょうこはさとうのことが(恋愛対象として)好きで、そっちの線もあるのかなって思っていたんです。でも実際は普通のイケメン好きな子で。家がお金持ちのお嬢様でちょっと窮屈な思いをしていて、恋することに夢見ているし、しょうこはしょうこなりに悩みがあるんですよ。

 

だから、等身大の女の子としてアニメっぽいキャラにしたくないなと思いました。「周りにこういう子いそうだな」と思われるキャラクターにしたいなって。

 

花守ゆみりさん

 

――メインキャラクターであるさとうとしおの印象や、それを演じている花澤さんと久野さんの印象はいかがですか?

 

花守 ほんとにかわいくて、2人の関係性を見ていると癒やされますよね。さとうちゃんが素直に愛を実感しているシーンを見ると、私もしおちゃんみたいな癒しがあったらなって思ってしまいます(笑)。

 

でも、さとうちゃんは愛を守るためなら“何でも”するじゃないですか。その“何でも”の範囲は常人のそれではないんですけど、香菜さんの演技が本当にすごいなと思って。切り替えを感じさせない演技に魅せられてしまうというか、不思議と納得させられてしまって。かわいいと同時に恐ろしさも感じます。

 

花江 さとうは普段かわいいからこそ淡々と喋っているシーンがより怖いというか。「それが当たり前でしょ?」みたいな感じの花澤さんのお芝居がゾワッとして、ヤバいなって思います。花澤さんは久野ちゃんのことが本当に好きみたいで、アフレコをしている2人の後ろ姿からもそのオーラが出ているんですよね。

 

洲崎 原作を読んでいて、さとうの声感は想像がつかなかったんです。正直、原作ではさとうのシーンを見るのがつらいし感情も全然理解できなくて……。アフレコも最初はつらいなと思って来たんですよ。でも、香菜ちゃんのお芝居を見たら、怖いとか嫌な気持ちではなく本当にすごいなって。こういうこともあるんだろうなって思えちゃうというか、スッと入ってくる不思議な感覚になったんです。すごい役者さんだなと思いました。

 

久野ちゃんの声は想像つきやすいので思った通りではあったんですが、やっぱりとびきりかわいくて。2人のシーンは本当に甘いです。

 

洲崎綾さん

 

変態の役は本番で出た気持ちも大切に

――前半で甘くて思い出に残っているシーンや、甘い部分以外でも印象的なシーンがあれば教えて下さい。

 

花守 (アフレコで)後ろで聞いていて、いけない気持ちを抱いてしまいそうになったのが“帰りを待っているしおちゃんがお掃除をして「ぽんぽん!」って言うシーン”です(第2話)。あさひくんはかわいそうなシーンが多くて演じると疲れちゃうんですよ。そんな時にこれを聞いてしまったから、すごく染みちゃって。愛しい、甘いって思いましたね。

 

あさひくんのことでは、お母さんの背中を見送るシーンが印象に残っています。愛して欲しかったよな、その腕の中のしおが自分だったら……という思いも絶対にあったよなと思うんです。(彼が望む)幸せの形はしおとお母さんと自分が一緒に暮らすことなんですけど、2人を遠くに逃がして悪魔である父と対峙する。それって想像できないぐらいつらいことだと思うんです。回想シーンは痛みを意識しながら演じましたし、ちょっとおかしいぐらいの自己犠牲の精神が印象的でつらかったです。

 

花江 僕はずっと“すーはーすーはー”しているのが疲れました(笑)。本気で“すーはー”しているので、たまにクラっとしてくるんですよ。そういうシーン全般は印象的でしたね。でも、しおちゃんになでなでしてもらった時は本当に幸せそうだったので、良かったねという気持ちでした。

 

洲崎 甘くて印象に残っているのは、誓いの言葉のシーンです。かわいいなと思って。

しょうこ的なシーンでは、さとう(の裏の部分)に踏み込まなきゃいけないなと思って、本音でしゃべってというシーンですね(第6話)。オーディションでもここをやって、やっぱり私の声は“親友声”なんだなと思った記憶があります(笑)。さとうに心を開いてほしいと祈るような気持ちで演じたので、ぜひ見ていただきたいと思います。

 

 

――花江さんは気持ち悪い役や変態の役が本当に上手ですよね。そういう極端な役を演じる時のコツや気持ちの作り方をぜひ教えて下さい。

 

花江 変態と言ってもちゃんとした理由があるので、そこを理解してあげるのが大事かなと思っています。ただ“変態”というキャラクターの種類として決めつけてしまうと、型にはまったりとか無理やりそこに持って行かなきゃいけなくなると思うんです。そうではなく、例えばこの作品でも太陽がどういう過程でああなってしまったか描かれているので、そこを理解していけばそんなに大変ではないです。

 

でも、同時に「あまり考えないようにしよう」とも思っていて。台本の文字だけで想像しないで、本番で出た気持ちを大切にして毎回やっています。

  

花江夏樹さん

 

――太陽のセリフを言う時、花江さん自身の中にしおちゃんへの愛は生まれていますか?

 

花江 それはありますね。しおちゃんへの愛だけでやっています(笑)。やっぱり久野ちゃんかわいいですし、久野ちゃんが初めて主役をやった作品で一緒に主役をやっていたので「また一緒にアフレコできて嬉しい」という気持ちもあって。そういう気持ちを捻じ曲げて、しおに対する愛情にしている、という部分もあったりします。

 

――洲崎さんや花守さんは、この作品に関わらず極端な性格のキャラクターが来たらどんな気持ちで演じますか?

 

洲崎 今まで生きてきてすっごく腹立たしかったことや、ものすごく嫌悪感を示したことってあるじゃないですか。こんな風にはらわたが煮えくりかえるんだというのを覚えておいて、その感覚に近づけるようにしますね。

 

――変態の役だと、なかなか実際に経験することがなさそうですけどね。

 

洲崎 私は変態の役があまりないんですよね(笑)。でも、そこは出たとこ勝負というか、考えてやるよりも感覚でやった方がうまくいく気がします。

 

花江 やっぱり家で(練習として)やる時よりも、みんな想像の上というか別のところで攻めてくることが多いので、現場でお芝居の方向性が変わったりするんです。なので、練習はしますけど実際には全然違うものになりますね。

  

――“すーはー”するのも練習したのですか?

 

花江 しました(笑)。でも、家に1人でいることがないし、自分の仕事部屋もないので家族に結構聞かれるんですよね……。

 

一同 (笑)

 

花江 だから、(この作品に限らず)変なワードがある時とかは、その言葉だけ抜かして練習することもあります(笑)。

 


――先輩たちの話を聞いて、花守さんは今後そういう役がきたらどう演じたいと思いましたか?

 

花守 私も直感でやろうと思います(笑)。でも、出たとこ勝負だなというのはわかります。現場で皆さんの流れを見て「ぶち込もう」と感じることがあるので。

 

私は演じる時に、その子の思考回路を最初に組み立ててから肉付けしていくタイプなんです。勝手に論理付けていっちゃうので、常軌を逸した子を演じる時も自分の中で説得力を持たせようと思って演じています。変態だったら、なぜ変態になってしったのかという気持ちを考えるんです。そうやって自分の中で段階を踏ませるので変な子が来てもあまり驚かないんですけど、先輩たちの話を聞いて、家でやる以上のものを現場で出せるようになりたいなと思いました。

 

 

3人が家族の愛を感じる瞬間とは?

――アフレコの雰囲気はいかがですか? エピソードがあれば教えて下さい。

 

花守 久野さんがお菓子を持ってきて、香菜さんに「ありますよ!」と言っていたのがすごくかわいかったです。おふたりは本当にさとうとしおみたいに仲良しで、香菜さんが久野さんを愛でているのを観察しちゃうというか、耳をすませちゃいます(笑)。

 

あと、(スタジオで)座っている位置が花澤さん、私、花江さんという順番だから、「花」がいっぱいいるなって。

 

洲崎 両手に“花”だね!

 

花守 私も“花”だけど(笑)。

 

花江 僕はゆみりちゃんにiPadをお勧めされて買いました。

 

花守 そうなんです。勧めたら、次のアフレコの時に持っていてビックリしました。

 

花江 それで花守さんの出演作品を調べています(笑)。

 

花守 用途が違うよ!(笑)

 

花江 実際にはゲームの台本をそれで読んだりしています。立って収録することも多いので、立ってやる時用に小さいサイズのを買いました。

 

洲崎 私はだいたい久野ちゃんと喜久子さん(さとうの叔母役・井上喜久子さん)の間に座っているんですけど、喜久子さんは「この作品ってみんなキャラに似ているよね」って言うんですよ。

 

(キャラがキャラだけに)ちょっと語弊はありますけどわかりますね。花江くんは気持ち悪いし(笑)、久野ちゃんは無邪気だし、喜久子さんはとにかく甘い声で。第7話は喜久子さん演じる叔母さんの回で、収録後みんな絶賛していました。

 

 

――この作品は“家族への愛”がテーマでもあります。皆さんは家族からの愛をどのような時に感じますか?

 

花守 私の家族は喧嘩とかあまりしなくて、その人がすることは基本的に受け入れるんです。だた、受け入れるに値するかは、根拠がしっかりしているかどうかで。OKを出すまでが難しいですけど、ちゃんとした理由があればわかったと言ってくれるんです。

 

私がこの仕事につくきっかけのオーディションを受けた理由は、「友達に誘われたから受けていいですか?」でした。お父さんとお母さんの意見は真逆で、最終的にお父さんがOKしてくれたんです。その後、ある程度仕事をいただけるようになって「こういう理由でこの仕事を続けたいです」と話したら、2人ともわかったと言ってくれて。そこからは何も言わずに応援してくれるようになりました。厳しさと優しさが同時にあるのがうちの家族なのかなと思っています。

 

花江 僕は(奥さんから)常に感じていますね。

 

洲崎 いいな〜!(笑)

 

花江 朝のお見送りもそうですし、ご飯も作ってくれて。ふとした時に励ましの言葉をかけてくれたりもします。

この間すごく疲れていた時があったんですけど、アイドルを応援するようなうちわを作って待っていてくれたんです。

 

花守洲崎 かわいい〜〜!!

 

洲崎 この後に喋りたくないなぁ(笑)。私は超普通なんですけど、家族の愛を感じるのは誕生日に実家からメッセージがくるぐらいですね(笑)。あと、ふるさと納税で実家にうなぎを送っています。だから、家族は私の愛を感じているはずです(笑)。

 

――最後に、アニメ後半の見どころをお聞かせください。

 

花守 後半は愛の形がよりはっきりしたり、逆に変わっていったりします。「あれ、この子はこうなったんだ」という驚きもありますし、“愛とはなにか”をより考えさせられるんじゃないですかね。きっとそれぞれのキャラクターに魅せられてしまうと思いますので、ぜひ愛の形に注目していただけたら嬉しいです。

 

花江 さとうはギリギリなことを毎回やっているので、そろそろ捕まるんじゃないかな(笑)。原作の方もいいところまで進んでいて、展開が気になっています。太陽はしおのためにまた違った行動を起こすので、そこも含めて注目していただきたいです。

 

洲崎 原作はアフレコを重ねるごとに進んだところまで読むようにしているので、しょうこの“あのシーン”はすごく衝撃でした。皆さんにも、しょうこのさとうへの真っ直ぐな気持ちの行く末を一緒に見守ってもらえたらと思います。心を揺さぶられることに価値があると思うので、目を背けずに見て欲しいですね。見ていてちょっとつらくなる時はあるかも知れませんが、最後まで完走していただけると嬉しいです。

 

 

(取材・文/千葉研一)

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ハッピーシュガーライフ

放送日: 2018年7月13日~2018年9月28日   制作会社: Ezo'la
キャスト: 花澤香菜、久野美咲、花守ゆみり、花江夏樹、洲崎綾、石川界人、井上喜久子
(C) 鍵空とみやき/SQUARE ENIX・ハッピーシュガーライフ製作委員会

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