映画公開から31年――。「王立宇宙軍 オネアミスの翼」展を前に、山賀博之監督の心境を聞く【アニメ業界ウォッチング第48回】

2018年08月25日 12:00

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作品は“一定の幅”の中でつくっていくしかない


── 映画後半でシロツグを襲う清掃車などは、かなり長い時間出てきますよね。ああしたメカデザインは、さすがに設定があったと思うのですが?

山賀 何人かのアニメーターが関わるメカについては、設定画を起こしています。それぞれのアニメーターに原画をお任せしつつ、どうしても違う部分が出てきたら作画監督が設定ごと修正しています。

── キャラクターデザインは貞本義行さんですね。遊郭にいた女性たちは、赤井孝美さんと聞いていますが?

山賀 そうです。赤井は助監督として参加しながら、絵も描いていました。

── 樋口真嗣さんも助監督として参加していたそうですが?

山賀 樋口は今でこそ絵コンテ描きとして有名ですが、当時の仕事はまさしく助監督でした。設定として漏れてしまった部分をフォローしたり、勝手のわからない新しいスタッフが入ってきたら説明するのが樋口の役割でした。


── どんどん新しいスタッフが増えてくると、作品の全体像をつかめなくなってしまうのではありませんか?

山賀 全体像をつかんでいるのは、僕ひとりだけでよかったんです。明らかに違うものは、絵であろうと音楽であろうと省いていきました。音楽については、喧嘩になってもダメ出ししました。なぜなら、どれだけ理想が高かろうと一定の幅の中でつくっていくしかないからです。実写でも同じことで、どんなに素晴らしいヒロインをイメージしても女優がキャスティングされた時点で、その範囲内で撮るしかないわけです。いくつかの既製品を組み合わせながら、その幅を見ていって、そぎ落とすしかない。
人間の意図がおよぶ部分とおよばない部分とがあるのに、よいものは必ず誰かの意図どおりにできていると、みんな思いこんでいる。ある人が面白い格好をしていて笑えるとしたら、本人は自分なりにキチンとした格好をしているつもりなのに、どう見てもヘンで笑えてしまう場合があるじゃないですか。コメディアンがよく「笑われるんではなく笑わせるんだ」と言いますけど、意図せずして笑われてしまうことに、僕は価値を感じます。

── 宇宙軍の制帽が、まさにそうでしたね。真面目にデザインされているのに、カッコ悪いからみんな被っていない。

山賀 あの制帽のデザインは、意図的に笑わせるようにデザインしました。さすがに「真面目にデザインしているけど、この人は真面目に描けば描くほど笑えるデザインをあげてくるな」という頼み方はできませんでした。真面目なデザイナーほど、怒ってしまいますからね。
今も昔も、すみずみまで個人の価値観の行き届いた、徹底的に制御された作品を至上のものと考える人が多いです。アニメで言うと、宮崎駿さんのつくり方ですね。イギリス式庭園とフランス式庭園みたいなもので、考え方の違いです。

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