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自分の“素”を保つためには、住環境を変えるのが一番
── 山根さんは島根県出身で、何年も前から島根県に戻って暮らしてらっしゃいます。そのことのメリットは何かありますか? 山根 東京に出てきて、ガンダムシリーズをはじめ何本もの作品に参加していると、「こういうのが売れるのか」「当然、次はこうなるよね」と業界の常識に染まってしまうんですよ。自分の“素”をなるべくピュアに維持するには、それ(自分の“素”)が育った生まれ故郷に戻るのが一番いいんじゃないかと思いました。当時は結婚したばかりで若かったり、業界の行きづまり感の様なものも感じ「メカデザイナーとして食えなくなっても別の仕事をすればいいや」ぐらいに思っていました。幸いメカデザインの仕事は続いているのですが、もし僕がコミケなどのイベントに行く人だったら、また違った人生になっていただろうと思います。
── コミケなど、同人文化についてはどう思いますか? 山根 僕が学生だった頃は、憧れていましたよ。「ヤマト」「ガンダム」はもちろん、アニメは二次創作文化で育ってきた面があると思うので、大事にしてほしい。だけど、「ビバップ」のような斜め上をいくような作品がヒットして、海外では20年も繰り返し放送されている様な事例もあるわけです。だったら、なぜ「ビバップ」が成功したのか冷静に分析すべきだし、同じような成功を収めるにはどうしたらいいのか考える人にも出てきてほしい。……いや、お前が考えろよって言われそうですけど、そんなに頭がよくないので(笑)。アニメって、偏った才能をもった人間たちが集まって、知恵を出しあってつくるところに強みがあるんです。どんなものができるのかわからないけれど、化学反応が起きて面白くなる。だから、型にはめず、いろんなジャンルの人と協力できないかな……と思うんです。
── クリエイターが、商業作品で二次創作的なことをやったりもしますよね。 山根 “繰り返しが文化になる”ことはあると思うのですけど、上手い人ほどそういうところ(二次創作的なところ)に陥りやすい感じはあるように見えます。いろいろな価値観を持った人たちがいていいと思うので、ひとつのカラーに染まることなく、いろいろな立場の人たちが喧嘩せずに切磋琢磨できるのが理想ではないでしょうか。
いまは若者向けの濃い作品は多いので、たとえばピクサーのような大衆向けのテイストでメカ物をつくれないだろうか、などと考えています。……まあ考えているだけで何もできないんですけど、僕がアニメ文化と縁遠い島根県にいるから「こんなことはできないだろうか?」と、自由気ままなことを言えるんでしょうね(笑)。
(取材・文/廣田恵介)