「カウボーイビバップ」から20年、山根公利が語るメカニックデザインの醍醐味【アニメ業界ウォッチング第47回】

2018年07月21日 12:000

※本コンテンツはアキバ総研が制作した独自コンテンツです。また本コンテンツでは掲載するECサイト等から購入実績などに基づいて手数料をいただくことがあります。

“キャラクター性”と“工業性”を両立させたデザイン


山根 「天空のエスカフローネ」は原作の河森正治さんの大まかなラフがあったので、それをまとめればいいんだろうと思っていたら、「単に甲冑のロボットでは面白くないから、ドラゴンに変形するようにしよう」と後から言うんですよ。河森さんのいつものパターンらしいんですけど(笑)。でも、オモチャにするといった制約はなかったので、自由に変形の構造を考えることができました。同時に、河森さんのデザインに対する強烈なこだわりを感じました。僕が「これでいいじゃん、もうできたじゃん」と思っても、河森さんは「いや、まだまだ上があるはず」と悩むんです。メインメカはここまで粘ってまとめ上げるんだなと、とても勉強になりましたね。
それと、「エスカフローネ」や「カウボーイビバップ」(1998年)もそうなんですけど、90年代後半のサンライズ第2スタジオには「サンライズ伝統の斬新な新しいメカ物を俺たちでつくろうぜ」という熱気が渦巻いていました。反骨心の旺盛なスタジオでしたね。また、演出も彩色も動画も、メカデザイナーまで同じフロアに机を並べていて、とてもよい環境でした。

── 「エスカフローネ」と「ビバップ」をプロデュースした南雅彦さんの存在が大きいかと思うのですが、いかがですか?

山根 南さんがまた、変な人ばかり連れてくるんですよ。僕も変わっているけど、ナベシン(渡辺信一郎監督)とかね(笑)。その後の第1スタジオの「無限のリヴァイアス」(1999年)では、初めてアニメを監督する谷口悟朗さんと組めたし、めぐり合わせがよかったんでしょうね。僕自身もパターンに従った作品ではなくて、オリジナリティの強い作品で個性的なデザインをやりたかったので。

── 「ビバップ」は、プラモデル化を前提とした企画でしたね。

山根 そう、バンダイホビー事業部の主導でした。メカデザイナーはコンペで選ばれることになったのですが、僕自身はあまりホビー化されることは意識せずに自由に描きました。変形はしないし尖っているしオモチャ向きのデザインではないけど、ナベシンが選んでくれました。今回、フランスで「ビバップ」のファンや記者たちと話す機会があって、「世界観とのマッチングが素晴らしい」「とても工業性を感じるデザインだ」と鋭く分析してもらえて、とてもうれしかったです。

── 工業性と言っても、理屈や設定ではなくて、フォルムで見せるメカですよね。

山根 「ビバップ」の世界の共通概念として、「モノポッド」という宇宙服の代わりになる独立したコクピットを考えました。まあ、モノポッドが壊れたら空気がもれちゃうので最終的には宇宙服を着ないといけないからウソではあるんだけど、モノポッドを設定したことで、フォルムや機械としての説得力が上がったんじゃないでしょうか。あと、ガラスの球体って潜水艇みたいで、海の中を進むようなロマンがありますよね。


── モノポッドを内蔵する3機のメカが「ビバップ」の主役ですね。

山根 主役メカには「スター・ウォーズ」に登場する「Xウイング」や「Yウイング」のようにフォルムに共通する記号を与えたくて、すべて魚の名前をつけました。“ソードフィッシュII”はシルエットがメカジキ(swordfish)に似ているし、お腹にビーム砲をつけたら魚雷を下げた「フェアリー ソードフィッシュ」(第二次世界大戦時の戦闘機)ともイメージが重なってくる。それと、僕の好きな「老人と海」のメカジキもヒントで、ヘミングウェイの小説の雰囲気とスパイクという孤高のキャラクター性がマッチするように思ったんです。
“レッドテイル”は、レッドテールキャットというナマズの名前から。毒のあるナマズも多いので、かわいいシルエットなんだけど毒がある――どことなく、フェイのキャラクターと重なりますよね。“ハンマーヘッド”はシュモクザメなんですけど、最初は魚の形から外れていました。だけど、せっかくカジキ、ナマズと続いたんだからサメ形にしたい。それと、ハードボイルドな作品なので、各機体には車のイメージも入れてあります。ジェットは体の大きいキャラクターだから、アメ車のような横幅の広いボンネットで、それにシュモクザメのシルエットを加えました。つまり、デザインに2つか3つの意味を重ねられています。そういう事が、メカニックの説得力とキャラクター性を増すんですね。

画像一覧

関連作品

COWBOY BEBOP(カウボーイビバップ)

COWBOY BEBOP(カウボーイビバップ)

放送日: 1998年10月23日~1999年4月23日   制作会社: サンライズ
キャスト: 山寺宏一、石塚運昇、林原めぐみ、多田葵、高島雅羅、若本規夫
(C) サンライズ

COWBOY BEBOP(カウボーイビバップ) 天国の扉

COWBOY BEBOP(カウボーイビバップ) 天国の扉

上映開始日: 2001年9月1日   制作会社: サンライズ/ボンズ
キャスト: 山寺宏一、石塚運昇、林原めぐみ、多田葵、磯部勉、小林愛
(C) 2001 SUNRISE, BONES, BANDAI VISUAL

機動武闘伝Gガンダム

機動武闘伝Gガンダム

放送日: 1994年4月1日~1995年3月31日   制作会社: サンライズ
キャスト: 関智一、天野由梨、大塚芳忠、山口勝平、山崎たくみ、宇垣秀成、秋元羊介、堀秀行、山崎和佳奈、松熊明子、荒木香衣、関根章恵、亀井三郎、石森達幸、岡和男、冬馬由美、横尾まり
(C) 創通・サンライズ

天空のエスカフローネ

天空のエスカフローネ

放送日: 1996年4月2日~1996年9月24日   制作会社: サンライズ
キャスト: 坂本真綾、関智一、三木眞一郎、高山みなみ、中田譲治、大谷育江、飯塚雅弓、小杉十郎太、山内雅人
(C) サンライズ

劇場版 天空のエスカフローネ

劇場版 天空のエスカフローネ

上映開始日: 2000年6月24日   制作会社: サンライズ
キャスト: 坂本真綾、関智一、中田譲治、飯塚雅弓、大谷育江、三木眞一郎、高山みなみ
(C) サンライズ・バンダイビジュアル

メガゾーン23

メガゾーン23

発売日: 1985年3月9日   制作会社: アートランド
キャスト: 久保田雅人、川村万梨阿、荘真由美、冨永みーな、塩沢兼人、宮里久美、高木均、三ツ矢雄二、山寺宏一、鳥海勝美、曽我部和恭、沢木郁也、小林清志
(C) AIC

関連シリーズ

ログイン/会員登録をしてこのニュースにコメントしよう!

※記事中に記載の税込価格については記事掲載時のものとなります。税率の変更にともない、変更される場合がありますのでご注意ください。

関連記事