「ひそねとまそたん」第9話感想:アニメ史に残る名場面となった「ギャーーー!!」

2018年06月11日 18:380

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この作品は、本当に役者のお芝居のすごさというのが感じられる作品だ。普段、自分はどちらかというと絵のすごさのほうに目が行ってしまうタイプの視聴者ではあるのだが、この作品はプレスコということも聞いていたので、この役者だからこういう画作りになったんだなと思うことがすごく多い。そのくらいあの「ベロベロベロベロ」の衝撃はすごかった。……嘘です、あの「ギャーー!!」はすごかった。


アニメ作品をたくさん見ていればわかることだが、女の子が走り出したらもう名シーン確定なんです。「時をかける少女」でも「君の名は」でも「響け!ユーフォニアム」でもありました。ちょっと想像しただけでも出てくる走る名シーン。しかも岡田麿里作品のそういうシーンはまず間違いなくエモいんです(※9話の脚本は和場明子さんですが)。岡田麿里ファンなのでそんなことはわかっているのですが、そのどれとも違う。「ギャー」と叫びながら走るヒロインという伝説を作った久野美咲さん。本当にすごいです。このコラムでは彼女のことをすごいとしか言っていない気がする…。ちなみにこのシーンは音楽もハマっていて、映画のようだった。

 


と、ここまでフラグを立てまくっていたカップリング、ひそねと小此木、星野絵瑠と財投が一気に進展してしまうという第9話。その積み上げ方というか感情の持っていき方が素晴らしい。しかも後者は両方ともギャップ萌えで、尖ってた絵瑠が実はピュアでがんばり屋でかわいかったり、チャラかった財投が、意外と本気(マジ)だったり。視聴者に感情移入させてしまうところが本当にうまいなと思う。

また、ひそねに関してもその気持ちに気づかせたのが、巫女の棗(なつめ)なのだが、昔の小此木を知っている棗と今の小此木を知っているひそねという対比と、それでも朝が弱い小此木にはまだコーラが必要なんだから!と、信じてコーラを持っていく棗の健気さ! 

でもそこで偶然ひそねを見つけ、小此木と同じストラップを付けているのを発見し泣いてしまうという展開は完全に少女漫画で、個人的に最高だった。

 


さらにひそねと棗の関係というところでも、ジョアおばあさんの過去の巫女との関係にもなぞられているし、途中で曽々田や巫女たちから出てきた「楔女(くさびめ)」というワードや、飯干の「これからのことを思うと突き刺さるようです」という言葉など、今後何かありそうな伏線が張られていた。いったいここまで視聴者の感情を揺さぶっといて、物語の終盤に何が待ち構えているのか、まったくわからない状態にさせるという。1クール作品ながら、ものすごいものに出会っている感じがする。

 


そんなわけで「吻合(ふんごう)」に気をつけようと、事情を知る組が言っていたが、吻合の意味を調べると「ピッタリ合うこと」と書いてある。どういうことなのかはわからないが、最後に恐れていたその吻合が起こる。恋を知ってしまうとDパイとOTFは同調しすぎてしまうってことだろうか? OTFが積極的にDパイを消化しようとする危険な状態になり、ひそねと絵瑠のスーツは溶けてしまったあげく、激しく吐き出される。その時の地面に打ち付けられる痛々しさは、上記の映画のオマージュのような演出だったが、見ているほうの衝撃度は大きい。

 


ただ、「悪いことと取るかは彼女たち次第です」と飯干が言っていたし、そのちょっと前に貞が「手遅れだったみたいね」と言ったときも含み笑いをしていたような気がする。7話の雑な作戦のことも考えると、まだ作戦が続いていて彼の予定通りになっているような気もする。そして最後は「恋、してますね?」の飯干の怖~い表情で「つづく」。今回も次週が気になる引きだった。

 

恋する感情をどうするのか、結構お役目とは別のラインでとても重要なテーマのような気がする。だってその気持ちを捧げるのか食われるのかわからないけど、それは相当つらいことでしょう。いやぁ、9話も相変わらず面白かった……。

 
(文/塚越淳一)

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ひそねとまそたん

ひそねとまそたん

放送日: 2018年4月12日~2018年6月28日   制作会社: ボンズ
キャスト: 久野美咲、黒沢ともよ、河瀬茉希、新井里美、名塚佳織、朴璐美、梶裕貴、徳本恭敏、釘宮理恵、諏訪部順一、中田譲治
(C) BONES・樋口真嗣・岡田麿里/「ひそねとまそたん」飛実団

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