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大病を乗り越えたからこそ歌えた新曲! 歌手活動20周年記念アルバム「永遠のSEED」リリース記念、松澤由美ロングインタビュー!

2018年06月04日 16:240
大病を乗り越えたからこそ歌えた新曲! 歌手活動20周年記念アルバム「永遠のSEED」リリース記念、松澤由美ロングインタビュー!

「機動戦艦ナデシコ」のOPテーマ「YOU GET TO BURNING」でデビューを果たし、「聖闘士星矢~冥王ハーデス十二宮編~」「聖闘士星矢~冥王ハーデス冥界編~」の主題歌など、多数のアニメソング・ゲームソングで知られる松澤由美さんが歌手活動20周年を記念し、アルバム「永遠のSEED」をリリースした。


今作では、「YOU GET TO BURNING」を手がけ、「残酷な天使のテーゼ」などで知られる大森俊之さんが新曲を提供。さらには、影山ヒロノブさん、NoBさんという先輩アニソンシンガーが「聖闘士神話~ソルジャー・ドリーム~」と「永遠ブルー -BLUE FOREVER-」という自身の代表曲で松澤さんと共演を果たしている。両者からは「いつも松澤にはハッピーでいてほしいなとみんな思ってる」(影山)、「妹みたいな、そんな感じ」(NoB)と愛される松澤さん。そんな彼女の解説で収録されたさまざまな主題歌ならびに新曲の、そして彼女自身の魅力にも迫る。



お2人の歌に引き上げてもらいました

――今回は20周年記念アルバムがリリースされるということで、まずは音楽のルーツからお伺いできればと思うのですが。

 

松澤由美(以下、松澤) 小さい頃から歌うのが好きだったんですよ。タクシーの運転手かプロレスラーか松田聖子になりたいと思っていました(笑)。でも、歌手になりたいと言っても、バンドもやったことないし、何も楽器はできないし、デビュー前にスカバンド(BLUE BEAT PLAYERS)に入ってみたりとか、いろいろ試行錯誤していました。ただ、何かのオーディションで、「松田聖子ちゃんが大好きだから」って言って歌ったら、「松田聖子じゃなくて松澤由美を歌いなさい」って言われたときに「あっ」とは思いました。「人の真似をしていたらダメなんだ」って。

――歌手デビューのきっかけである「機動戦艦ナデシコ」にはどのように至るのでしょうか?

松澤 学生の頃に街で声をかけられて読者モデルで出たとき、ほかのモデルの子が最初の事務所を紹介してくれたんです。それで、その事務所のスタッフさんに「何になりたいんですか?」と聞かれたので、言ったらなれるのかと思って「歌手です」と答えたんです(笑)。そうしたらオーディションをいっぱい入れてくれて。当時はZARDの坂井泉水さんの影響で、モデルにも歌のオーディションの話がたくさん来る時期だったんです。ただ、なかなかデビューまではいかず。某音楽制作事務所にもあずかりみたいな形で所属していて、18歳から毎週レッスンを受けさせてもらっていたんですが、なかなか芽が出ないので「うち以外のオーディションも受けていいよ」ということになったんですね。それが「ASAYAN」(1995年~2002年にテレビ東京系列で放送されたオーディション番組)と「機動戦艦ナデシコ」のオーディションでした。「ASAYAN」に出たときはグループでデビューというお話もいただいたんですが、ちょうどその頃「機動戦艦ナデシコ」のオーディションに合格させていただきました。そうしたら、偉い人たちが周りに集まってきて(笑)。

――ポップスではなくアニメの歌でデビューすることにマイナスのイメージはなかったですか?

松澤 全然! 夕方、ドキドキしながらオープニングを見ました。「自分の歌が流れてる! 怖いー」って思いながら(笑)。

――今回のアルバムはどういった経緯から決まったのでしょうか?

松澤 最初、2015年の「キングスーパーライブ」のとき、キングレコードさんからもお話をいただいたんですが、「地球ぎ」や「君と同じ青空」を一緒に作った高井ウララさん(「地球ぎ」「君と同じ青空」などを松澤さんと共作曲している作詞・作曲家)がいる5pb.さんからお声がけをいただいて決まりました。それが去年のお話で、「永遠のSEED」はレコーディングから1年くらい経っていますね。 

――影山さん、NoBさんとデュエットという話は松澤さんが希望されたということですが?

松澤 はい。影山(ヒロノブ)さんやNoBさんの名曲を、一緒に歌いたいという思いがずっとあったんです。それで、アルバムの発売が決まる前から「カバーしてもいいですか?」「一緒にできたらカバーデュエットしたいんです!」という思いをそれぞれにお伝えしたんです。

――実際に歌ってみていかがでしたか?

松澤 まず、影山さんからもNoBさんからも「全然歌のスタイルが違うから合わせられないけど、どう歌えばいいの?」とは言われたんですが、「そのまま歌ってください」とお願いしました。どちらの曲もお2人のあとで私が収録する形だったんですが、影山さんやNoBさんの歌に引き上げてもらったところがありました。自分自身も「私の歌のスタイルはロックじゃない」という先入観はあったんですが、実際に歌ってみたら「もっとシャウトして歌っていいんだ」と気付いたというか。「僕達はもう知ってる」もそうですが、新しい発見が今回のアルバムでは得られたので、もっといろいろな曲を歌っていきたいと思わせていただいた感じですね。

――プロデューサーを益田トッシュさんにお願いしたのは?

松澤 デビュー前から一緒に音作りしていて、「OTOHA~音波~」(1997年リリースの2ndシングル)のカップリング曲を書いてくださった方でもあるんです。音楽仲間として何年かに1度音楽をやっていて、アニソン界の人ではないですが、才能のある方なので原曲をリスペクトしながら新しいものを作ってくれることを期待してお願いしました。

 


 

新しく花を咲かせることができるという思い

――それでは収録曲について教えていただけますか? まずは新曲の「永遠のSEED」から。

松澤 20周年記念アルバムということで、私の原点である「機動戦艦ナデシコ」の曲を書かれた大森先生に新曲をお願いしたい、という話は前の事務所のマネージャーとしていました。活動はしていても新曲のような「形」がないと過去の人のように思われてしまいますよね。なので、大森先生に新曲を書いていただいて、今の自分を見てもらいたいという気持ちがありました。それで、発売日も決まってない段階でしたが、大森先生にお願いにあがったんです。

 

それから、実は今回のアルバムの制作中に乳がんであることがわかったんです。最初に「そうかもしれない」と言われたのは、「Anime Friends」で3週間のブラジルツアーに行く1か月前で、1か月間ふわーッとしていました。しかも、再度病院で調べたらリンパへの転移も疑われて、テンションが下がりまくりでした。でも、手術が成功し、転移もなく。大森先生に会いに行ったのは、その手術の1か月後くらいでした。人生のいろいろな経験から新しく花を咲かせることができる、そんな思いもあって大森先生には、「聴いた方が前を向けてがんばろう! そう思えるような楽曲を歌いたい」というお話もしました。そうしたら大森先生に快くお請けいただきました。「永遠のSEED」というタイトルには、「何度土に還ってもまた咲く」という意味を込めています。「また生きて歌える」という思いだったので。

――歌詞をjamさんにお願いしたのは?

松澤 大森先生からは、「箇条書きでもいいので曲のイメージを送ってください」と言われたんです。なので、普通は曲先のことが多いのですが、「永遠のSEED」はまず最初に私が元詞のようなものを書いています。ただ、第三者の方に書いてもらうことで「YOU GET TO BURNING」や「ナデシコ」も想像できるような描写を入れ込もうという話になり、大森先生から曲をいただいてからあらためてjamさんに詞を書いてもらいました。あがってきた詞は、「YOU GET TO BURNING」を知っている人なら気づいてくれるような歌詞になっていたので嬉しかったですね。

――その「YOU GET TO BURNING」は原曲ver.で収録されています。

松澤 はい。当時、レコーディングですごく緊張していたら、大月(俊倫)プロデューサーから「歌が下手くそで受かってるからそのままでいいよ」って言われたのを覚えています。「ナデシコ」は、声優さんたちも新しい人を求められていたので、初々しさがよかったのかもしれません(笑)。あと、今回のアルバムのディレクターさんも当時事務所が同じでオーディションを受けていたんですよ。カセットテープでの。懐かしい!

――NoBさんとの待望のデュエットとなった「永遠ブルー」についてもお聞かせください。

松澤 気持ちよく聴ける曲に仕上がったので自分でも気に入っています。休憩中とかイメトレのときに聴いて気合を入れているんですよ。曲の打ち合わせで、トッシュさんとライブで盛り上がれるアレンジにしたいね、という話をしていて、トロピカルハウスなEDMアレンジになっていますが、NoBさんに聴いてもらったときは「ちょっとかわいすぎるけど、由美ちゃんのアルバムだからいいかなあ。でも、俺歌えるかなぁ」って言われたんですよ。そこで、ギターを足して少しロック寄りにしたら、盛り上がるアレンジになりましたね。NoBさんからは「由美ちゃんのキーで歌っていいよ」と言っていただいたので原曲よりキーを上げています。ですから、NoBさんにはめっちゃ高かったと思いますが、それを感じさせない歌声で。私、NoBさんはアニソンシンガーでベスト3に入るくらいうまいんじゃないかと思っているんです。歌入れの発声練習でも一声目から声のパワーがすごくて、レコーディングは2、3回くらい歌ったらもうOKでした。トッシュさんには、「勉強だから体感してきなさい」と言われて、NoBさんが歌っているときに私、背後で聴いていました。

――若いシンガーがうらやみそうな現場ですね。

松澤 ね! でも、本当に見るといいと思います。NoBさんがボーカルの先生しているところを見学したことがあるんですが、生徒さんへのアドバイスがどれも納得で。「それが全部できたらめっちゃ歌うまい」って思いました(笑)。そのとき、NoBさんと「歌のうまさってなんだ?」という話で「やっぱそうだよね」って意気投合したんですよ。

――それが何かお聞きしてもいいですか?

松澤 「リズム感」なんです。音程も大事ですが。NoBさんが「いつから俺らは気づいたのかな」「やっていくうちだろうね!」とも言ってましたね。

――4曲目の「ROSE BUD」から「私らしく」「あなたの一番になりたい」と「ナデシコ」の曲が続きます。

松澤 「ROSE BUD」は、「YOU GET TO BURNING」の3、4年後、成長した「ナデシコ」や松澤由美をイメージしたと大森先生がおっしゃっていました。さすがにレコーディングでは、「YOU GET TO BURNING」のように緊張はしなかったんですが、多分、当時の私は何も考えていなかったんですよね。「歌が好きだから歌いまーす」という感じで活動していたように思います。「私らしく」は桑島法子ちゃんが歌うEDテーマで、「スーパーロボット魂」(ロボットアニメソングをテーマにしたライブイベント)でカバーさせてもらったことはありますが、レコーディングは今回が初めてでした。歌ってみると80年代アイドルソングのようなやさしい感じで、改めて「かわいい曲だなぁ」と思って歌いました。「あなたの一番になりたい」はホシノルリちゃん(声・南央美)の曲で、ライブでも歌ったことがありませんでした。でも、聴いてみたいというリクエストもありましたし、私はこういう曲がすごく好きなので、今回歌わせていただきました。

――そして代表作のひとつである「地球ぎ」も当然収録されています。が、こちらも原曲ver.ですね。当時の思い出などを教えていただけますか?

松澤 実は「聖闘士星矢~冥王ハーデス十二宮編~」EDテーマのオーディションで「君と同じ青空」を歌うと決まったとき、OPテーマのオーディションもまだ続いていて。なので、私も出すことにしたんです。でも、当時の事務所の社長に電話で怒られたのを覚えています。「全然『聖闘士星矢』っぽくないね」って。私としては、「ペガサス幻想」や「ソルジャー・ドリーム」と同じ路線でいったら勝てないと思っていましたし、強くない人間が前に向かっていくところを表現したかったんです。やっぱり賛否両論あったみたいですね。ただ、東映アニメーションの会長である森下(孝三)さんが押し切ってくださったみたいですね。

――自分自身でも自信作だったんですか?

松澤 お風呂場でメロディができたとき、「売れそうな気がする」って思いました(笑)。それで共作した高井さんに携帯から電話をかけて、「歌うから楽譜書いて!」って(笑)。あまり仕事がなかった時期にできた曲だったんですが。でもだからこそ、地球の裏側で大合唱してくれたのを聴いたときは感動しました。12年前、ブラジルの「Anime Friends 2006」に影山さんが「おまえも行ってこい」みたいな感じで送り出してくれたとき、遠藤正明さんやきただにひろしさんも一緒だったんですが、会場が「地球ぎ」ですごく盛り上がってくれて。急遽アンコールでもう一度歌ったことを覚えています。

 

 

アニソンを歌っていると自分も元気になれる

――さらに「聖矢」の曲が続きます。「ソルジャー・ドリーム」「託す者へ~My Dear~」と今回歌ってみた感想は?

松澤 「ソルジャー・ドリーム」はアレンジをかっこよくしたのはいいんですが、歌が難しくて(笑)。でも、影山さんがかっこよく歌う姿が想像できるというか、「できたらミュージックビデオを撮りたい」なんて思いました。「託す者へ」も実はオーディションで決まった曲なんです。携帯のメールアドレスが使えなくなって、いろいろな方に連絡を取ったとき、車田先生にもご連絡をしたんですが、「『星矢』の主題歌オーディションがなかなか決まらないのでよかったら受けてみますか?」と言ってくださって。それで歌わせてもらったら決まりました。

――そしてここからはゲーム曲のコーナーが。まず「僕たちの真実~Story~」。

松澤 これは当時の5pb.さんから出たゲーム「Lの季節2」の主題歌で、サントラアルバムにしか収録されてなかった曲ですが名曲中の名曲で。あの崎元(仁)さんが作曲されています。

――「オウガバトル」シリーズや「ファイナルファンタジータクティクス」で有名な。

松澤 はい。だからすごく幻想的で、すばらしい曲ですね。

――その「僕たちの真実」を歌うきっかけが、「暁のアマネカと蒼い巨神」の「なないろのwish」ということと聞きました。

松澤 そうなんです。「なないろのwish」はCDになっていないので、フルサイズ聞いていただけるのは多分初めてだと思います。イベントでも1回歌ったくらいで。今回、当時の音源を収録したのですが、私も音源を持っていなかったので久しぶりに聴いて、「かわいいなー」って思いました。当時の音楽プロデューサーの室井(浩太郎)さんいわく「夕方の女の子アニメで流れるような」というイメージで、「私らしく」にも通ずる雰囲気の曲だと思いますが、こういうテイストの曲を歌うことは少ないので、今回のアルバムはかなりバラエティに富んでいると思います。聴いた方の感想を早く聞きたいですね。

――そして、同名タイトルの成人向けPCゲーム主題歌でもある「SNOW」。

松澤 この曲を好きな方はとても多いんです。歌うことになったきっかけは、メーカーのスタッフさんがファンでいてくださって、事務所に問い合わせが来たみたいです。成人向けの作品なので最初、「松澤由美ではない名義で」という話もあったんですが、すごくいい曲だったので「自分の名前で歌いたいです」って私が言いました。あと、レコーディングは実は北海道でした。

――I'veさんのスタジオで?

松澤 そう。高瀬(一矢)さんが北海道から離れたくないということで(笑)。そんな不思議な思い出があります。

――そして三たび「ナデシコ」の曲が。劇場版主題歌の「Dearest」にはどんな思い出が?

松澤 想像なんですが、大森先生は「ナデシコ」のあとに私がいろいろと出した曲も聴いてくださったうえで、「松澤由美が歌う」ということを想定して書いてくださったような気がしています。「ナデシコ」の劇場版もTVシリーズの3年後が舞台ということもあって。

――最後は、最新のタイアップ曲であるニンテンドースイッチ用ゲーム「ひぐらしのなく頃に奉」主題歌「僕たちはもう知ってる」。

松澤 20周年アルバムを出させていただくというMAGES.さんとの縁で、初めて志倉(千代丸)さんの曲を歌わせていただきました。今までの私の曲にはない曲調で、すごく難しかったです。スタジオのスタッフさんたちが「過去数年で難しい曲トップ3に入る」って言ってました。でもかっこいい曲ですね。言葉がたたみかけるように入ってきます。新境地を開拓させていただきました。

――そしてボーナストラックとして、ポルトガル語バージョンの「地球ぎ」が入っていますが、ポルトガル語で歌うことになったのはなぜですか?

松澤 めちゃくちゃつたない発音だとは思いますが(笑)。実は10年前にも一度だけブラジルで歌ったことがあり、その映像がYouTubeに残っているんですが、それを見たプロデューサーの方が「ブラジルのファンのためにまた歌ってくれませんか」って会いに来てくれたんです。私自身、何回もブラジルに行っていますのでファンの人に何ができるかと考えたとき、原語で歌うのはすごく大事だと思ったし、私自身も原点に戻って「チャレンジ」する気持ちもあり、歌わせていただきました。思った以上に難しかったですが(笑)。でも、いい意味でナチュラルに歌えた気はします。

――ここまで20年の歩みを駆け足でご紹介いただきましたが、ご自身としては20周年という実感はどれくらいあるのでしょうか?

松澤 やっぱり「気がついたら」という感じですね。でも、歌が好きだということはあらためて実感しています。アニソンを歌っていると自分自身も元気になれると思えるので、今後もそういうものを表現できたらいいとも感じています。それから何度も言っちゃいますが、チャレンジはし続けたいですね。

――「アニソンシンガー」として歌ってきた自身についてはどのように感じていますか?

松澤 先日、自分のスタイルとは異なるジャンルのライブを見に行ったんですが、そこで感じたのは「アニソンシンガー」というジャンルの中にいるというのは表現しやすいですし、ひとつのストーリーとしてみんなにわかってもらいやすいということです。だから、目標値を自分自身も決めやすいからいいですね。海外へ歌いに行けるほど愛してもらえてますし。

――では、性に合っている?

松澤 そう、合っているんでしょうね。自然にやれているので。デビュー当時、ディーバ系になったアーティストの友達から「大変だよね」と言われたことがあるんですが、全くそういう気持ちはないです。「え? なんで?」みたいな。 やっぱりアニソンに限らず、どんなことでもそうですが、これからも「本物を作る」ということに対して、こだわっていきたいです。だからこそ、誇りを持って歌い続けていられるのかなと思っています。

 

(取材・文/清水耕司)

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