アニゴジがもっと楽しくなる! 映画「ゴジラ」講座──第3回「ゴジラFINAL WARS」(2004年) ~怪獣に挑む人類~

2018年05月15日 17:350

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日本映画界が世界に誇る大怪獣スター「ゴジラ」が、装いも新たにSFアニメーション映画として生まれ変わったのが2017年。「GODZILLA 怪獣惑星」は、アニメーション映画(通称:アニゴジ)三部作の第一章にあたり、2万年後の地球に君臨する巨大怪獣ゴジラに立ち向かう人類の壮絶な戦いが描かれた。

3DCGアニメーションで創り出されたゴジラは、従来の実写映像とはまったく異なる外観を有してはいるものの、多くの人々がよく知る「ゴジラ」の要素、すなわちあの独特な「鳴き声」や、巨大な背ビレを発光させ、口から熱線を放射するアクションなどはしっかりと受け継がれ、これもまたゴジラのひとつのバリエーションだとわからせてくれる。


2018年5月18日より公開される第二章「GODZILLA 決戦機動増殖都市」では、ゴジラだけでなく、かつての人気キャラクターが設定や属性を変化させて“復活”を遂げるというウワサがある。すべては映画が公開された瞬間に明らかとなるのだが、このコラムでは新作に臨む前の“予習”的意味で、かつてのゴジラ映画シリーズから“アニゴジ”と関わりが深そうな作品をいくつかチョイスし、注目ポイントや名場面などをご紹介していきたい。

 

新作アニメ映画「GODZILLA 決戦機動増殖都市」では、地球上に君臨する最大・最強の生物「ゴジラ」の猛進を止めるべく、持てるすべての力を発揮して対抗を試みる人間たちの熱きドラマが繰り広げられている。1954年の第1作「ゴジラ」から2016年の「シン・ゴジラ」まで、いわゆる「怪獣映画」と呼ばれる実写特撮作品では、人類の築き上げた文明を破壊する強大なパワーを持った「怪獣」と、これに敢然と戦いを挑み、怪獣を制圧せんと試みる勇気ある「人類」との攻防を描くというストーリーが基本となっている。この項では、そんな怪獣たちと人類との激闘の歴史をいくつかの作品を例にあげつつ、ふりかえってみたい。

 


東宝怪獣映画の原点にして最高峰と言われる「ゴジラ」(1954年)では、太平洋上を航行する船舶が、原因不明の炎上・沈没事故を起こすところから物語が始まっている。やがて、大戸島に想像を絶する巨大な生物の上陸が確認され、島の伝説に基づいて「ゴジラ」と呼称される。日本近海に潜んでいるとされるゴジラを殲滅するため、海上保安庁はフリゲート(軍事)艦隊を動員して海中に爆雷攻撃を行ったが、水爆のエネルギーを浴びても死なない驚異的な生命力を持つゴジラを撃退するには至らなかった。

やがてゴジラの東京上陸を阻止するべく、有刺鉄条網が沿岸部に張り巡らされ、そこに5万ボルトの高圧電流を流す作戦が採られた。しかしゴジラは難なくこの鉄条網を突破し、ついに都心部への侵入を果たしてしまった……。

「ゴジラ」では、最初は未知の生物(怪獣)であったゴジラが「実在」すると判明し、やがてゴジラを撃退するべく人類が持てるすべての力を発揮して数々の作戦を繰り広げていく、という「リアリズム」を重視したストーリー展開が目をひく。水爆実験の影響で目を覚まし、「光」に対して憎悪にも似た感情を抱くゴジラは、戦車隊の砲撃をものともせず東京の中心部を蹂躙。口から放射性因子を含む呼気(放射熱線)を吐き、周囲を火の海に変えた。暴れ回るゴジラに、近代兵器の数々はまったく通用せず、最終的には若き化学者・芹沢博士が発明した薬品「オキシジェン・デストロイヤー」によって、ゴジラは海底でその命を絶った。

人類が体験した巨大怪獣との初めての戦いは、人類の勝利というよりも、ひとりの天才が葛藤(自分の発明が戦争目的で使用される恐れがある限り、どんなことがあっても公表できない)を乗り越え、悲壮なる自己犠牲の精神によってからくも勝利を収めることができた、というべきものだった。

 

「ゴジラ」の大ヒットによって、東宝はゴジラやその同類の巨大怪獣たちが都市を跋扈する怪獣映画や、宇宙からの侵略者に対抗する人類のスーパーメカニックが活躍するSF特撮映画をおよそ年1本のペースで製作していくことになった。それが「ゴジラの逆襲」(1955年)、「空の大怪獣ラドン」(1956年)、「地球防衛軍」(1957年)、「大怪獣バラン」(1958年)、「宇宙大戦争」(1959年)、「モスラ」(1961年)、「妖星ゴラス」(1962年)、「海底軍艦」(1963年)といった一連の「怪獣映画・SF特撮映画」である。ここでは、巨大怪獣が巻き起こすスペクタクルに重点を置いた「ゴジラの逆襲」「空の大怪獣ラドン」「大怪獣バラン」「モスラ」に絞って話題を進めてみよう。

ゴジラ同様、人知をはるかに越えた巨大な怪獣であるラドンもバランもモスラも、通常兵器ではそれほどダメージを与えることができないという部分が共通している。真正面からの力押しでは決して倒されてくれない怪獣を、いかに攻略するか、がそれぞれの映画のアイデアの見せどころと言えるだろう。

 

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「ゴジラの逆襲」では、ライバルの暴龍・アンギラスを映画の中盤で早々とKOしたゴジラが、北海道近海の神子島に上陸。戦闘機で氷山を爆撃し、人工的に雪崩を起こしてゴジラをその中にうずめる作戦が行なわれた。また「空の大怪獣ラドン」では、ラドン一族の巣とされる阿蘇山の火口にミサイルを撃ち込み、噴火を誘発させるという一大作戦が敢行された。人間の武器ではどうにもならない怪獣であるがゆえに、大自然の力を借りて怪獣を“自然に還す”という撃退方法は非常に説得力を持ち、自然に飲み込まれ、消えゆく種族の哀愁までも演出して、映画の完成度を高めている。

ちなみに「大怪獣バラン」では、怪獣バランの特殊な習性に目をつけた人類が、起死回生の奇策によって勝利を収めており、「モスラ」では、モスラを東京に呼び寄せた元凶である悪人が倒され、モスラを生まれ故郷の島へ戻すことで平和的解決を見ている。

 

東宝特撮映画において、怪獣同士の対決を映画のクライマックスに置いた最初の作品は「キングコング対ゴジラ」(1962年)だが、ここで人類は巨大怪獣の攻略法のひとつとして、怪獣と怪獣をぶつけて共に潰し合うという選択肢を得ることになった。もちろん、キングコングもゴジラも単独では人類に危害を及ぼす怪獣であるから、人類は持てる限りの力を使って撃滅に尽力していたわけだが、キングコングを自社提供のTV番組の視聴率アップに役立てようと意気込む製薬会社の宣伝部長の発案によって、人類の脅威同士が富士山麓で激突するはめになったのだ。

 

その後「モスラ対ゴジラ」「三大怪獣地球最大の決戦」(ともに「1964年)と、怪獣対決路線が続いていくが、人類もただ黙って怪獣同士の激突を見ているわけではなかった。「モスラ対ゴジラ」では自衛隊の放電作戦でゴジラをあと一歩のところまで追いつめたし、「宇宙大怪獣ドゴラ」(1964年)では石炭やダイヤモンドを吸収して繁殖する宇宙細胞ドゴラの暴威に対し、蜂毒を利用して殲滅することに成功している。文明社会を襲う巨大怪獣がどんどんパワーアップしていくと共に、対抗する人類の戦力、知略も強化・発展していくという図が、東宝怪獣映画の歴史を追いかけるとともに見えてくるものだ。

 

巨大怪獣に対抗する人類の「戦い」の歴史に、ひとつの到達点があるとすれば、東宝怪獣SF映画の20本目の節目に製作された「怪獣総進撃」(1968年)があげられるだろう。この映画では、かつて人類の恐怖として存在していたゴジラ、アンギラス、ラドン、バラン、モスラ、マンダ、バラゴン、クモンガ、ミニラ、ゴロザウルスという10頭もの怪獣たちが、小笠原諸島にある「怪獣ランド」で飼育・研究されているという場面から幕を開けている。まさに「ゴジラ」(1954年)以来、巨大怪獣と人類の飽くなき攻防戦を描き続けてきた東宝でないと生み出すことのできない作品として「怪獣総進撃」は重要である。

 

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1984年に新たな設定で甦った「ゴジラ」(1984年)でも、文明社会を襲う脅威であるゴジラに対抗する人類の攻撃は、形を変えて受け継がれていった。「ゴジラ×メガギラス G消滅作戦」(2000年)では、ゴジラをこの世から完全に消し去るため、マイクロブラックホールを作ってゴジラに発射、吸収するという「ディメンション・タイド」なる究極の超兵器が登場。そして「ゴジラFINAL WARS」(2004年)では、人間の能力をはるかに超えたミュータントによって結成された地球防衛軍が、手持ち武器とすぐれた運動能力を駆使して巨大怪獣・エビラを攻略したり、海底軍艦・轟天号でマンダを撃滅したりと、怪獣たちを前にして一歩も退かない強さを発揮した。

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人類は常に、ゴジラをはじめとする巨大怪獣の大暴れをただ傍観しているのではなく、時に知恵を絞り、時に勇気をもって果敢に挑んでいく姿勢を貫いている。それはアニゴジ最新作「GODZILLA 決戦機動増殖都市」においても変わることがなく、怪獣映画の“醍醐味”のひとつとして、今後作られる作品にも受け継がれていくに違いない

 

(文/秋田英夫)

 

 

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GODZILLA 怪獣惑星

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上映開始日: 2017年11月17日   制作会社: ポリゴン・ピクチュアズ
キャスト: 宮野真守、櫻井孝宏、花澤香菜、杉田智和、梶裕貴、諏訪部順一、小野大輔、三宅健太、堀内賢雄、山路和弘、中井和哉
(C) 2017 TOHO CO.,LTD.

GODZILLA 決戦機動増殖都市

GODZILLA 決戦機動増殖都市

上映開始日: 2018年5月18日   制作会社: ポリゴン・ピクチュアズ
キャスト: 宮野真守、櫻井孝宏、花澤香菜、杉田智和、梶裕貴、諏訪部順一、小野大輔、三宅健太、堀内賢雄、山路和弘、中井和哉
(C) 2018 TOHO CO.,LTD.

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