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ひそねはちょっと変な子にしたい、という気持ちがあったんです
──では、それぞれのキャラクターごとにお話を聞いていきたいのですが。まず「甘粕ひそね」ですね。
青木 ひそねはあまり情報がない段階で、こんなのどうですか?って出したものが通っちゃったから、実はあまり考えてないんですよ(笑)。でも、もみあげのところは「どうぶつ宝島」(71年作品)のキャシーのあれです。そのくらいですかね。
──少し黒目が小さい感じがしたのですが。
青木 そうですね。最初は大きかったけど、だんだん小さくなってキョトンとした顔をしてるんですよね。キャラ表が来たときかな、途中でこの子、もしかしたら無表情になるんじゃないかと思ったときがあったんだけど、実際にアニメになったらものすごく表情があって、こういうことだったのか!って思ったんです。目を小さくしたのは、大きく描いちゃうとかわいいだけの子になっちゃう気がしたからで、ちょっと変な子にしたいという気持ちがあったんですよね。かわいいんだけど、触手が動かないような子にしたいなというのはありました(笑)。
伊藤 最初に決めていったのがひそねで、青木さんとやり取りをして決めていきました。表情とか、バランスが難しかったんです。でも逆にここが固まると、それを雛形にほかのキャラクターを描けるので、ここだけはしっかりしていこうと思いました。その打ち合わせで青木さんの絵に寄っていくことができたのがよかったです。それがうまくいかないと何も始まらなかったと思うので。
──彼女が決まればあとは大丈夫というくらい、表情豊かですしね。
伊藤 最初閉じ目のバランスが難しくて……。あれは意外とアニメでは表現していない目なんですよね。昭和の香りというか(笑)。
青木 ああいうのやりたかったんですよ(笑)。
──続いて「貝崎名緒」です。
青木 先ほど話した通り、最初ヤンキーではなかったんです。ひそねのライバル的存在だったんですけど、ヤンキーにすることでキャラクターが立ったと思います。最初はツインテールっぽく描いていたんですけど、基地ではそのままだと帽子をかぶったりするから歩けないんですよ。それで最終的にこういう髪型になりました。いい感じにヤンキーっぽくなったし、服も動物柄とか着ちゃってて、動きもすごくいいんですよね。
伊藤 アニメーター的にも名緒は面白いらしくて、結構動かしてます。
青木 顔の動きとか、よたり歩きとかね(笑)。
伊藤 誰に聞いても名緒が一番かわいいって言うし、特に女性のアニメーターさんからは人気です。
青木 5人並ぶと、名緒が一番マトモなんですよ。ほかは本当に、ひそねみたいな奴ばかりなので(笑)。
──デザインでのこだわりはありますか?
伊藤 どのキャラクターも青木さんが固めてくれるので、僕はアニメ用に起こすことに専念していて、意外とデザインに関しては楽をしてるんです。
青木 でも1~2話を見たら、俺こんな顔描くかな?って思いながら見てましたよ(笑)。名緒の白目向くような感じで睨むのとかすごく面白くて、いいな~って思いながら見てました。マンガの仕事もしているから参考にさせてもらってます。最初のキッカケは僕かもしれないけど、「ひそねとまそたん」っていうコンテンツのキャラクターになったら、今度はそれを僕が二次創作する。そんな気持ちでいるんですけどね(笑)。
──続いて「星野絵瑠」については?
青木 絵瑠ちゃんは、実は一番大きくデザインが変わったキャラクターなんです。今の絵瑠ちゃんは、ボーイッシュで快活な感じなんですけど、実はその前は全然違う感じで。胸が大きいというのは変わらないんですけど。
──どんなふうに変わったのですか?
青木 最初の設定としては、がんばってるけど残念な子という感じで、カッコよく出てくるんだけどバケツをひっくり返すようなイメージだったんです。でもシナリオが進むと、どうやら違うなということになって、今の感じになりました。
伊藤 絵瑠に関しては、前半ではあまり表情が変わらないので、それほど大変ではなく。アニメーションの世界では、わりと定番と言われるキャラクターなので描きやすかったです。ただ青木さんから上がってくるラフが毎週のように変わっていくので、いつになったら落ち着くのかなぁって思いながら待っていました(笑)。最終的に決まるまで置いておこうと。
青木 どうもすみません(笑)!
──「絹番莉々子」と「日登美真弓」はいかがですか?
青木 莉々子も一発で通ったんですよね。(モノクロの)実写版「忍者ハットリくん」(66年作品)の目ってこんな感じだった気がして、ああいう感じを面白おかしくできたらいいなと思って描きました。監督からは常にネガティブなことしか考えていないって言われて、こんなのどうですかと描いたら、それで決まっちゃったんです。ただ、声を当てた新井里美さんが随分と変わった雰囲気を出してて、莉々子ってこんな声だったの!って思いましたけど(笑)。声優さんが声を当てて命を持ったとき、思ってもいない形になったので面白かったです。
日登美真弓は、前髪がこんな感じなんですけど、岡田麿里さんのほうから、某アニメに登場するソバージュのキャラクターみたいな感じでと言われて、それを取り入れたんです。でも自衛隊なので長い髪の毛は上げないといけないんです。それでできあがったキャラ表を見たら、おばさんに見えてしまって。あわてて何度かやり取りして直したりはしたんですけど、髪を上げるとどうしてもちょっと老けちゃうんですよね…。
──髪を下ろしてるシーンはあるのですか?
伊藤 出てきますよ。仕事ではなく、外で飲んだりしているプライベートの時は、みんな髪の毛を下ろしています。
青木 だからオフショットを先に描いちゃってるんですよね。あとから髪を上げなければいけないって話になったので。
──この2人に関してはいかがですか?
伊藤 莉々子は普通に描けたんですけど、真弓はすごく苦労しました。僕自身の中でも苦手なバランスのキャラクターで。ただ、キャラクターデザインをすると、毎回必ずひとりは苦手なキャラクターって出てくるんですよ。それが今回は真弓だったんです。
青木 そうなんですね。でもかわいくなるか、老けて見えちゃうか、微妙なバランスなんですよね。
伊藤 青木さんのバランスが絶妙なんですよね。やっぱりコンテの演技があって、初めてキャラクター性ってできるし、そのキャラクター性を加味した表情をプラスしていくから、キャラ表だけだとどうしてもつかみづらくなるんですよね。
青木 あぁ、そうですね。僕も伊藤さんからキャラ表が届くと、明らかにここはこうしてくださいということは言うけど、それ以外って判断できないことが実はあって。主線に影が付きますって状態の絵じゃないですか。それだと僕も不慣れなところがあって判断できないんです。でも実際に動くと、こういうことだったのねってすぐにわかる。だから完成まで見ないとわからないっていうのはありますね。アニメは動かないとやっぱりわからない(笑)。
──そのほかに、お気に入りのキャラクターはいますか?
青木 女の子をよく描いているし、そういうリクエストはよくあるから描けるんだけど、自衛隊が舞台だから、今回は男性キャラクターも多いんです。それを描き出すと面白くて……。曽々田とか描いたことがなかったけど、面白いのできたなって。あと小此木くんは、「シン・ゴジラ」の安田龍彦(高橋一生)がモデルなんです。ちょっと前髪のオタクっぽい感じが面白くて。最終的には全然違う感じにはなっていますけど、樋口さん作品だから入れておこうかなって。あと幾嶋も、こういうイケメンは描いたことがなかったので楽しかったです。
──伊藤さんのほうで、作品全体のデザイン面でこだわったところはありますか。
伊藤 キャラクターの存在感というか、フィルムで背景を入れたときに実在感はほしいなと思ったんです。特に今回は現代劇なので、生活感が漂うようなところがあってもいいのかなと思いました。
青木 一番最初の頃に、背景となじませるにはって話をしてましたよね。このままだと浮いてしまうからって。僕はわからないから「お任せします」って感じでしたけど、すごく収まっているんですよね。
──今回は青木さんの絵がありきで、作品を進めていったとも樋口総監督が言ってましたしね。ドラゴンのデザインもそれに合わせてますよね。
青木 よく「まそたん、かわいいですね」って言われたりするんだけど、僕のデザインではないんですよね(笑)。ネットを見てると「まそたん」を描いている人もいて、人気あるなぁって思うんですけど、ひそねも誰か描いてくれないかな(笑)。でも、まそたんはすごくかわいいです!
伊藤 今回よかったのは、青木さんにしろ、コヤマさんにしろ、okamaさんにしろ、最終的に自分のところでひとつにすることができたんですよね。だいたい僕がキャラ表を描いていたりするので、そこでバランスは取れたのかなって思います。
それと背景もデジタルでぼかすのではなく、手描きでぼかしているんですよ。紙に描いているんです。だからセル時代のアニメーションの作りをしているんですよね。よく見ると紙の質感が出ていて、それが意外といい味になっていると思います。そこにキャラクターを乗せるとやわらかい感じになりつつ、なおかつキャラクターもちゃんと見える。そこは美術さんと結構すり合わせをしました。僕がこれまでやってきたのはセル時代のアニメの作り方なので、僕自身は懐かしいんですけど、今だと逆に難しいんじゃないかなと思ったんです。でも背景さんもがんばってくれて、いいものが上がってきています。
青木 昭和と平成のハイブリットみたいな感じなんですかね。そういうところまでじっくり見ると、アニメーションって本当にすごいですね。
──では最後に、楽しみにしているファンのみなさんにメッセージをお願いします。
青木 え~、面白いので、見てください!
伊藤 そうですね……。面白いので、見てください!
──ありがとうございました。
(取材・文/塚越淳一)