今回は死ぬほど悩んだ!! 今期のイチオシアニソン10曲はこれだ! DJ・出口博之の「いいから黙ってアニソン聴け! in 2018冬」

2018年02月06日 11:320

今期も毎度のことながら死ぬほど悩みました。もしかしたらコラム始まって以来一番悩んだかもしれません。選曲のテーマというか方向性みたいなものを考えていたのですが、小難しく考えるよりも、単純にカッコいい、今期を象徴するようなジャンルの楽曲、この2点を重視しての選曲。なかなか面白い結果になって自分で選んでおきながら驚いております。まあ、なんと言いますか、ここまで趣味があらわになるのかと。全体的に重心の低いグルーヴが特徴的な楽曲が目立った形となりました。

楽曲を聴いて「カッコいい!」と反応するポイントは多岐に渡ります。メロディの面白さ、カッコよさ、コード進行、歌詞などなど、重層的に重なり合った要素のひとつひとつが楽曲の魅力ですが、分析的に聴かなくても一瞬で「この曲好きだ」と判断できるポイントがあります。それは、中学、高校の頃によく聴いていた音楽に近いものかどうか。このポイントは自分の好みの根幹なので、脊髄反射のごとく「あ、この曲好きだ」と反応してしまうのです。

 

そういった部分で最初に耳に残ったのは「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」のOP「Sincerely」と「剣王朝」のED「いばらの灯々」です。

 


どちらの楽曲もローファイなリズムセクションが絡む序盤の静けさから、サビで一気に広がる荘厳なストリングスのアレンジが重厚な世界観を演出しています。この2曲の何に反応したかと言うと、私が夢中になって聴いた90年代から2000年代初頭のロックの文脈が息づいているのです。洋楽だとRadioheadの初期、邦楽であれば椎名林檎さん(もしくは亀田誠二さんが手がけた楽曲)や、COCCOさん(根岸孝旨さん)、天野月子(現・月)さんの初期の楽曲に見られるローファイながらもソリッドでエッジの効いたサウンドに、すぐさま反応してしまいます。特にわかりやすい部分で言うと「いばらの灯々」のサビ直前の2小節で乱暴に炸裂するギターのブラッシングは、完全にRadioheadの魂が入っています。これは「Radioheadのパクリだ!」というつもりではありません。むしろ逆です。誰しもが期待するサウンドアプローチを裏切らずに真っ向勝負で鳴らしてくれる気持よさは、筆舌に尽くしがたいのであります。

 

ツッコミどころ満載で、ある意味で非常に耳に残ったのは「ゆるキャン△」のOP「SHINY DAYS」です。

 


始めて聴く曲なのに知ってる!この曲知ってる感じがするぞ!

おそらくほとんどの方がそう思ったでしょう。もうおわかりですね、この曲のイントロはジャクソン5の有名曲「I Want You Back」が下敷きになっています。

よく聴くとイントロだけではなく、全体の構成やサビ後半のコーラスの入れ方は、意図的にジャクソン5を意識した作りになっていて、制作側が楽しんで作っているのがよくわかりますし、そういった「意図的な部分」を発見する楽しさもあります。

 

ここまでは聴く側の予想を裏切らない王道の展開が耳に残る楽曲でしたが、それとは真逆のアプローチで強烈な印象を与えるのが伊藤潤二「コレクション」のED「互いの宇宙」です。


 拍の頭が微妙にずれていく変拍子が奇妙なグルーヴを生み出し、渦の底に吸い込まれそうな陶酔感が支配する世界観が最大の特徴です。鳴っているすべての楽器の音が完璧にコントロールされていていないと、この絶妙なグラデーションは生まれないと思います。緻密過ぎるアレンジの完成度の高さに脱帽。

絶妙な間でループする変拍子の効果は抜群で、曲を聴きながら無意識にリズムを取る体を強制的に止め、根源的なリズムの気持よさをずらすことによって生まれる「収まりの悪さ」はアニメ作品の世界観ともマッチしています。気味が悪いのに、それを繰り返されるとなぜか癖になって、どんどん深みにハマっていく過程を体感できる中毒性の高い楽曲です。

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