「今あるものはすべて注いだ」渕上舞　ソロデビューアルバム「Fly High Myway!」インタビュー

2018年01月23日 12:000

インタビュー

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「必死に頑張らない」姿が、応援ソングに

── 先ほど、ご自身の口癖が歌詞に載っているとおっしゃいましたが、それはたとえばどんなところに？

渕上　ありとあらゆるところにあるんですけれど、「Fly High Myway!」だと、「夢とか希望なんてわからない」とか。私、あまり夢とか希望がないんですよ（笑）。みんなで一緒に頑張るということが好きではなかったから、「ひとりぼっちだっていい」とか。「Cute♡Appeal」では「苦手なことはしないそれがポリシー」とか（笑）。「メイクを華やかに濃いめのチークが好き」とか「将来の夢はお嫁さん」とか「明日から頑張る」とか、この曲にはいっぱい入っていますね（笑）。この曲はペンギンのモチーフだと先ほどお話ししましたが、私のイメージではペンギンって飛べないけれども別に不幸ではないし、何なら動物園や水族館にいる彼らは可愛い顔をしてご飯を食べて楽して生きているという（笑）。かわいければ許される、かわいければ正義（笑）。それである意味これも応援ソングなんですよ。「明日から頑張ろう」とか「今すぐ逃げちゃえ！」とかちょっとふざけた感じではありますが、前向きな言葉を受けて疲れるよりも、こういう言葉で1回休んだほうが意外とスッキリできるし、そういう形の応援ソングに。そんなに頑張らなくても、楽しく毎日生きていたほうが楽しいよということを届けられればなと思いました。

── そういった飲み込みとか切り替えというのは、渕上さんの人生において、いつ頃からできるようになったのでしょうか？

渕上　うーん……、それこそ5、6年前だと思います。最初は新人ですし、声優というお仕事をやらせていただけるようになって、すごく頑張るんですよ。できないことも「できます」と言って頑張るんですけれど、できないことはやっぱりできないんですよね（笑）。それに、この仕事って頑張ったからよいというわけではなく、やっぱり結果がついてこないといけない。そういうところで、必死に必死にというよりも、楽しんでいる姿で向かうほうが、お客さんも楽しんでくれる。必死に頑張る姿を見せるというのも、もちろん人によっては素敵なのですが、私はそっちのタイプじゃないなと。必死に頑張って、できないこともできるようにしようと、しっかり者「ぶっていた」自分よりも、できないものはできないと発言したり、自分にとって楽な生き方をしているほうがお客さん自身も受け入れてくれたような気がして。これはあくまで私の見方ですけれども、自分らしく生きていくほうが私もみんなも楽しいんだなって思います。

── 最初の「おはようの合図」と最後の「おやすみのワルツ」はセットという感じでしょうか。

渕上　「おはようの合図」は「Fly High Myway!」のプロローグ的に、勇気を出して鳥かごから飛び立つお話の直前の話として書かせていただきました。飼われている鳥が青い空を飛んでいる鳥を窓から見たことに対する憧れとか、そういうものもあるんだなという思いを書いています。「おやすみのワルツ」は「Fly High Myway!」で「戻れないの……かもね」と言ったものの、結局飛び出して戻ってないところを書きたいなと。「おやすみ」のあとにはまた「おはよう」が来るので、永遠の終わりではないふわっとした終わり方を心がけました。この後、もしかしたら戻るかもしれないし、戻らないかもしれないというところで、たどり着いた夜の森をイメージして書きました。曲もふわっとした音がすごく好きで、雰囲気につつまれるような感じがして。世界観がすごく素敵なメロディだったので、物語調な歌詞が書けたらいいなと思って挑戦してみました。

── 物語調の歌詞というのもまた挑戦だったんですね。

渕上　歌詞を書くことになって、いろいろと書き方を教えていただいたんです。自分自身を投影させるものもあれば、第三者的に表現するような書き方とか、その中でお話を書くというのがあったのでそれに挑戦しました。あと、ここでいろんなフラグ回収をしたいなと思って。

── フラグ？

渕上　この歌詞にはこれまでのアルバムの曲のいろんな部分が詰め込んであるんです。「先を急ぐ渡り鳥」は「Migratory」だったり、「きっとあの窓辺に似合う」は「君へ贈る歌」に出てきた「夕日の差す窓辺」だったりと、いろんな物語に出てきたものや世界だったりを集められたらと。

── それによってひとつのアルバムとしてのパッケージングができたと。歌ってみてはいかがでしたか？

渕上　難しかったですね―（笑）。特にこういうやわらかいイメージの曲はメロディとバックで流れている音に対して、自分の声が溶け込むような歌い方をしたかったので、その力の入れ具合とか抜き具合が難しかったです。特にこの曲は、サビが疲れていたりため息をついていたりするので、その感じを出すにはどうしたらいいかとか、やさしい雰囲気とか息の丸さとか、言葉のようなイメージの歌い方をすることに気を遣いました。お芝居に近いですね。

── その意味で決して今まで役者として積んできたものをいろんな場所で生かして形にしたという感じでしょうか。アルバム1枚を作り上げての実感はいかがでしょうか？

渕上　1曲目を録った後、「残り11曲」と言った時のみんなのズッコケ具合はすごく覚えていて（笑）。そのときは「ミニアルバムにしなくて大丈夫ですか？」と何度も言ったのですが、終わってみるとあっという間で、「やっぱりあと1曲足して13曲にしませんか？」というくらい寂しい気持ちになりました（笑）。そう感じるくらい全力で取り組めたのかなと思っていますし、言うならば本当にこの1枚で終わったとしても、私は満足だと思えるくらいのアルバムにできたと思っています。今の自分にあるものはすべて注いだと思うので本当に満足できるアルバム制作期間だったなと思っています。

── それをぜひライブで聴かせてください。

渕上　4月に開催することが決まっていて、私の中でそこまでが「Fly High Myway!」だと思っています。初めてなのでいろいろとつたない部分はあるとは思いますが、私なりに自分の世界というものを作って皆さんにお届けしますので、今まで応援してくださった方には「そうそう、渕上舞ってこんなだよね」という安心感として、今回の音楽で初めて私の存在を知ってくださった方には本当に自己紹介という意味で、足を踏み入れてみませんかというところで、みんなで頑張って作ったアルバムなので、皆さんにその思いが届けられるようライブまで頑張りたいなと思っています。

（取材・構成／日詰明嘉）

渕上舞プロフィール

5月28日生まれ。福岡県出身。
「ドキドキ！プリキュア」・四葉ありす/キュアロゼッタ役、「暗殺教室」・潮田渚役、「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS」・北条加蓮役、「蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-」・イオナ役、「ガールズ＆パンツァー」シリーズ主人公西住みほ役を演じるなど、声優として多くの作品に出演。

■1st Album「Fly High Myway!」

品番：LACA-15690　3,000円(税別)

レーベル：ランティス／2018年1月24日発売

初回生産封入特典：「渕上舞1st Live “Fly High Myway!”」アルバム購入者限定チケット先行応募シリアルチラシを封入

〈収録曲〉
01.おはようの合図（作詞：渕上舞　作曲・編曲：川本新）
02.Fly High Myway!（作詞：渕上舞　作曲・編曲：KOHTA YAMAMOTO）
03.A Crow（作詞：渕上舞　作曲・編曲：yuxuki waga[fhána] ）
04.Migratory（作詞：結城アイラ　作曲・編曲：中土智博）
05.トロピカルガール（作詞・作曲・編曲：CMJK）
06.君と雨に歌うソネット（作詞：結城アイラ　作曲・編曲：中土智博）
07.Beautiful Sunday（作詞・作曲：shilo　編曲：清水哲平）
08.Cute♡Appeal（作詞：渕上舞　作曲：藤本記子　編曲：福富雅之）
09.ラララ～君へ贈る歌～（作詞：渕上舞　作曲：shilo　編曲：渡部チェル）
10.フラミンゴディスコ（作詞・作曲・編曲：ヤマモトショウ）
11.アイTACTICS（作詞：結城アイラ　作曲・編曲：柘植敏道）
12.おやすみのワルツ（作詞：渕上舞　作曲・編曲：川本新）