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「楽曲に食らいついていこう」という思いがありました
── では、アルバムの新曲について、具体的にお話を聞かせてください。CDの収録順におうかがいしてもいいのですが、作詞作業の道すじも知りたいので、制作順でいきたいと思います。一番最初に作詞した新曲は、どれだったんですか? 寿 6曲目の「I wanted to do」です。これは随分前に作っていただいて、「いつか歌いたいね」とキープさせていただいていた曲なんです。この曲を最初に聴いた時、「かわいいなー」って思ったんですよね。リズミカルだし洋楽の要素もあってかっこいい曲なんですけど、どこか女の子らしくて。まだできあがってない曲もあったんですけど、多分、新曲の中で一番かわいい歌詞を歌えるのは、この曲かなって思ったんです。
── かわいい歌詞を書こうというのが、スタート地点だったんですね。 寿 でも、具体的に何を書いていいか、最初は全然わからなかったんです(笑)。私の中の「かわいい」って何だろうって考えた時、失恋の痛みを伴った女の子の気持ちだったら、「人間的なかわいさ」というテーマで書けるんじゃないかなと思って、書き始めました。リズミカルな部分に英語の歌詞を当てていくのが難しかったですね。
── けっこう難易度の高い曲が1曲目だったんですね。 寿 この曲の歌詞が書けなかったら、作詞に対する苦手意識が大きくなっちゃって、残りの曲がもっともっと大変になるだろうなと思って。全曲そうだったんですけど、特に「I wanted to do」は「楽曲に食らいついていこう」という気持ちで作詞しました。
── 1曲目は、絶対に成功させたいですよね。 寿 そうなんです。でも、単語を入れ替えたり、部分部分を組み替えたりしていくうちに、感覚がわかってきて、すぐに作詞が面白くなっていきました。歌詞の主人公のことをじっくり考えていると、演技での役作りと似ているなと感じて、自分の気持ちも入れつつ、別人格になりきって作詞していた部分が大きかったですね。私から見た誰かを、それぞれの曲の主人公にしたからこそ、6曲分の歌詞が書けたんだと思います。
── 「I wanted to do」は、サビがほぼ英語なんですよね。 寿 いただいた仮歌の音源に、英語がたくさん入っていて。この人が英語で歌っている部分は、私も英語詞にしようと思ったんです。そういう決めごとをしないと、まったく進まなかったので。トライした結果、ワクワクするけどちょっぴり切ない、失恋の曲になりました。
── 次に作詞したのは、どの曲ですか? 寿 ラストに収録されている「Piece of emotion」です。最初に聴いた時から「かっこいい! 絶対に歌いたい!」と思いました。今までの“寿ロック”には、意外となかったミドルテンポの曲で、とても大人っぽいサウンド感なんです。それに合わせて、自分の思いを宣言するメッセージ性の強い歌詞を書こうと思いました。新曲6曲の中では、もっとも自分の要素が入った曲ですね。
── タイトルに「emotion」というワードが入っていますし、曲調も壮大で、ラストに持ってくるのにふさわしい曲だと思いました。 寿 メッセージ性が強いからこそ、一歩間違うと誤解されてしまうかも、というギリギリのところで言葉を紡いでいかないと、この気持ちは伝わらないだろうなと思って。ためらいを捨てて、全体的に言い切った表現を意識しました。
── 出だしの「曲げたくない 曖昧と絶対の狭間で 揺れてる未熟な心」という歌詞から、強い気持ちが一気にあふれ出ているなと。 寿 うれしいです。音符に乗せた限られたワード数の中で、どれだけ自分の思いをこめられるか、何度も何度も言葉を入れ替えながら作り上げていって、自分の言いたいことを全部詰め込めたんじゃないかと思います。「少女から大人」という歌詞もありますが、19歳からソロで歌い始めて、大人になってきて、さらに未来へと繋がる曲になりました。
── ゆったり体を揺すれるテンポと、アコースティックギターのカッティングも気持ちよくて。 寿 盛り上がるロックともしっとりとしたバラードとも違う、言葉を届ける曲ですよね。こういう曲を歌えるようになったのも、いろいろなタイプの“寿ロック”を歌ってきたおかげなのかなと思いました。