ホビー業界インサイド第30回:株式会社WAVE・阿部嘉久社長が振り返る、1983年・吉祥寺周辺のホビーシーン

2017年12月23日 12:000

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小売店からメーカーへ……WAVE設立の本当の理由


阿部 吉祥寺のLARKを開店してからも、大船のLARKに「もっと売り上げを上げるにはどうしたらいいでしょう?」と、よく相談に行っていたんです。すると、ガレージキットというお人形みたいな組み立てキットがあるというんです。それは「スペースプリンセスありさちゃん」といって、漫画家のあさりよしとおさんが描いた、グフみたいなコスチュームを着た女の子を立体化したフィギュアだったんです。あさりよしとおさんは大船LARKの常連で、「ありさちゃん」は友人が粘土で作ったそうなんです。大河原邦男さんにも「こんなキットがあるんですよ」とお見せして、LARK大船店と吉祥寺店で「ありさちゃん」を販売するため、模型誌に協同広告を出しました。すると申し訳ないことに、大船店より吉祥寺店のほうが多く売れてしまったんです。

── それが、初めて販売したガレージキットだったんですね。

阿部 ガレージキットというものがこんなに売れるなら、続けて何か売りたいと思いました。LARK大船店の経営者は大河原さんと仲がよくて、ある時、大河原さんの仕事場へ行ったら、元ストリームベースの小田雅弘さんがいらっしゃったそうなんです。小田さんが言うには、「タカラのボトムズシリーズは途中でプラモデルが終わってしまったので、キット化されていない『ファッティ』などをガレージキットで出せばいいんじゃない?」ファッティは丸っこい形だから、手作業で生産するレジンキットに向いているだろうって。それで、大河原さん経由でサンライズさんに許諾をとって発売したんです。その前に、タカラのプラキットに合わせたラビドリードッグ改造パーツを出したので、完全に作り起こした「ボトムズ」のガレージキットは、ファッティが初めてでした。

── そのころ、ちょうどMAX渡辺さんとの共同開発もスタートしましたね。

阿部 MAX渡辺さんの工房が国分寺にあって、吉祥寺のLARKまで遊びに来ていたんです。MAXさんが「ホビージャパン」誌で1/24スケールのブラッドサッカーとスコープドッグターボカスタムを作っていたので、それを原型にしてガレージキットを作らせてほしいと話しました。「ボトムズ」のガレージキットがけっこう売れて、その次に「ファイブスター物語」のガレージキットを発売しました。大船LARKで働いていた山崎努さん(現・ヤマザキ軍曹)が、大船店の閉店と同時に吉祥寺店でアルバイトするようになって、彼がけっこう目利きだったんです。「ファイブスター物語」の連載が始まったばかりのころ、「次はレッド・ミラージュが人気出ますよ」と山崎さんが言うので、佐藤直樹さんというモデラーに原型をお願いしました。そのレッド・ミラージュのガレージキットが、「こんなに売れるのか」と驚くぐらい大ヒットしたんです。そのころにはほかの小売店からも卸販売させてくれという依頼が来ていて、商品を生産して卸売りまでしているなら、もう僕たちはメーカーではないかと気がついたんです。そこで、メーカー業と小売店を続けていくために会社をつくったわけですが、“LARK”は宮沢模型の持っているブランド名なんです。それで、“WAVE”という会社名にしたんです。

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(C) AIC

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