ホビー業界インサイド第29回:アオシマが目指す“実車テイスト”の未来カーモデル、1/24アスラーダG.S.Xのフルスペック!

2017年11月30日 12:000
アニメーター 重田智氏

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アニメで映える形と色を、立体向けに再解釈する


重田 自分がメカ作監として「サイバーフォーミュラ」に参加したのはOVAシリーズの「ダブルワン(新世紀GPXサイバーフォーミュラ11)」からで、テレビシリーズにはタッチしていないんです。「アスラーダG.S.Xのプラモデル開発に参加しませんか」と誘っていただきましたが、以前版権イラストで描いた程度で、本編でG.S.Xを作画で動かしたことはありませんでした。ですから、今回の監修作業では自分なりにG.S.Xについて調べたり考えたりしながら、プラモデルとしての答えを模索した感じですね。

── 「サイバーフォーミュラ」シリーズのメカデザイナーは、河森正治さんですね。

重田 河森さんはアニメ表現の中でのメカデザインのさじ加減をよく承知していて、「ここまでは“らしく”て、ここから先はウソ」という按配をうまくミックスしてデザインされていて、これが作画していてよく理解できましたね。

── アスラーダG.S.Xのキット開発には、どのような気持ちで参加されたのですか?

重田 河森さんは、サイバーマシンをローターゲット向きの手描きアニメのメカデザインとして、キャラ立ちするようにある程度、誇張してデザインをされています。ですから、アニメの設定画に限りなく忠実にしたいのであれば、河森さんに監修していただくのがベストだと思います。ただ、テレビ放映から20年以上たって当時のファンたちも成長していますから、大人になったファンたちに向けた製品とするなら、OVAシリーズに最終まで拘ってきた自分が参加する意義があるだろうとは思いました。


飯塚 プロポーションをアニメと変えるという部分が、まず最初のハードルでしたね。「これが受け入れられなければ何をやっても無駄だろう」というレベルまで突き詰めたフォルムのモックアップを見本市で展示したとき、思いのほかユーザーさんから好意的に受け入れてもらえました。

重田 河森さんのインタビューを読むと、意図的にマシンのリアトレッド(後輪の輪距)を広くしていたそうで、上から見ると三角形なんですね。アニメのデザインとして意図はわかるのですが、これを立体にすると車体の前半部分が、どうしても貧弱に見えてしまう。アニメ設定のG.S.Xの三面図の上から「これぐらいのバランスとプロポーションにしてはどうでしょう?」と描きこんでの提案をして、それ以降は全体のフォルムの絵はほとんど描いていません。

── では、まずフォルムを調整してからディテールを詰めていったわけですね?

 そうです。せっかくなら、可能なまでディテールを入れたいという話をしました。ホイールとエンジン周り、ヘッドライトはメッキパーツです。


── その辺りは、完全にカーモデルですね。アニメではヘッドライトは黄色ですし、キャラクターキットとして欲しい人にとっては色も大事になってきますね。

飯塚 「やっぱり、ヘッドライトは黄色であるべきだ」と考える方には、クリアパーツを塗装していただくことになります。アニメではグレーのフロントガラスも、普通にクリアで抜いてあります。

重田 色に関しては簡単な話で、アニメの画面では黄色く塗らないと、記号としてヘッドライトに見えないから、黄色く塗ってあるわけです。フロントガラスも、内部のコクピットとドライバーを描かなくてすむように、グレーに塗ってあるんですね。この仕事を長くやっているとわかるのですが、メカのディテールが出っ張っているのか引っ込んでいるのか、最終的には解釈は現場におまかせなんですよ。正式な設定がどうとか言うより、作画するうえでのバランスの問題でしかないわけです。ですので、車体の赤の部分をどれぐらいの濃さにするのか、またどれぐらいの面積にするのかなど、全体の印象さえアニメと大きく変わらなければ大丈夫じゃないかという考え方をしています。


 アニメで使われている赤が塗料として発売されているのですが、それを塗ってしまうとちょっと違和感が出たりするんです。青にしても、アニメそのままの青ではありません。

飯塚 ボディ下部のシャシーのグレー部分はアニメではもっと明るい色なのですが、立体にすると軽い感じになってしまうんです。なので、もうちょっと沈んだ感じのグレーの成形色になっています。

重田 当時のブラウン管で見ていた色と、最近のデジタルリマスターされたきれいな画面とでは、ずいぶん色の印象が違って見えるんですよ。ですから、どの色調がそれっぽく見えるかは、キットにしてみないとわからないと思うんです。

画像一覧

  • アニメーター 重田智氏

  • (C) サンライズ

関連作品

新世紀GPXサイバーフォーミュラ

新世紀GPXサイバーフォーミュラ

放送日: 1991年3月15日~1991年12月20日   制作会社: サンライズ
キャスト: 金丸淳一、小野健一、三石琴乃、飯塚昭三、安達忍、松田辰也、竹村拓、速水奨、緑川光、関俊彦、松岡洋子、島田敏、置鮎龍太郎
(C) サンライズ

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