2017秋アニソンのキーワードは「じっくり聴ける曲」! モノブライト・出口博之の「いいから黙ってアニソン聴け! in 2017秋」
今期のキーワードは「90’s」?
ここ最近のアニメソングのキーワードをひとつあげるとすると「90年代」という言葉が浮かびます。
少し前まではエイティーズ、いわゆる80年代っぽいテクノや歌謡曲が多くありましたが、最近は時代が少し進み90年代的なアプローチが多く聴かれます。
じゃあ90年代的な音楽ってなんぞや?ということになりますが、ざっくり言うと「ジャズやオールドスクールなポップスなどを再構築し、新しい時代にフィットさせる」手法です。元ネタへの多大なリスペクトと、豊富な音楽知識から再構築する手法はオマージュやサンプリングという表現方法となり、90年代の音楽シーンを形成しました。それが、いわゆる「渋谷系」というジャンルです。ちなみにですが、これはあくまで概論なので詳しく知りたい方はきちんと調べていただけると幸いです。
で、この90年代的アプローチが突出している楽曲が「妹さえいればいい」ED「どんな星空よりも、どんな思い出よりも」と、「URAHARA」OP「KIRAMEKI☆ライフライン」、そして「Infini-T Force」ED「チクタク」です。
「どんな星空よりも、どんな思い出よりも」では、ブラックミュージック、R&Bなどの系譜にあるリズムパターンが特徴的で、メロウな楽曲にメリハリの効いたグルーヴを生み出しています。これは、90年代にシーンを牽引した女性シンガーソングライターに多く聴かれた手法で、ことメロディの強さを十分に伝えられるのが特徴。
「KIRAMEKI☆ライフライン」は「これぞ渋谷系!」であり、ピチカート・ファイヴを彷彿とさせる楽曲です。そもそも、アニメの舞台からして原宿ですからね。渋谷区! 従って、渋谷系は当然の帰結だと思います。
「チクタク」は90年代クラブミュージックの系譜が見えます。音数が少なく、ストリングスやアコースティックギターの生っぽい手触りの楽器がリズムとからむ気持ちよさがあります。m-flo的なアプローチ、というとらえ方もできます。
こうやって書き進めると「あれっぽい」、「あれに似てる」という結論になってしまいますが、重要なのは「先人たちが生みだした音楽をいかに噛み砕き、いかに再構築するか」ということです。そこに各人の天性の感性、矜持が組み込まれ、「その時代に鳴らされる意味」が生まれ、新しい音楽の、アニメソングの歴史が続いていくのです。
アニメソングもアニメを構成する重要なピースである!
今回のテーマである「アニメ作品と楽曲のシンクロ」を考えると、「魔法使いの嫁」のOP「Hero」とED「環-cycle-」は、アニメ本編もひっくるめてひとつのストーリーになっていると言っても過言ではない楽曲だと思います。
「アニメの世界観と楽曲が融合しているかどうか」ということは、融合すればするほど言葉で説明するのがとても難しい。逆に「世界観と楽曲が合わない場合」であれば、合わない理由が見えてきて言葉にしやすいのですが。「合ってる理由? そんなの抜群に合ってるんだからこれ以外考えられないだろ!」と、自分に逆ギレを起こしかねない難しさです。そんなこと言ったらもうここで書くことがなくなってしまいますが、この2曲は、もうほんと相性が抜群過ぎます。
アニメ作品が楽曲の一部を担い、楽曲もアニメ作品の一部を担う。これはアニメソングの本懐ではないでしょうか。
もちろん、ほかのアニメ作品の楽曲も、作品と楽曲が互いに補完しあう関係性がきちんと構築されていますが、「魔法使いの嫁」が別次元レベルの高みで実現してしまった、ということです。
「サザエさん」があの曲じゃないと始まれないのと一緒で、本作も、この楽曲じゃないと物語の起点と終点が生まれないのです。
正直に言うと、今期イチ押しの楽曲として「環-cycle-」を選ぼうとも考えたのですが、楽曲の優劣ではなく、楽曲の魂であるとか、楽曲の意味であるとかを鑑みて、次の曲を選出しました。
その曲が「クジラの子らは砂上に歌う」のOP「その未来へ」です。こちらを今期イチ押しとさせていただきます。素晴らしすぎて声が出ない!
ワールドミュージックに通じる勇壮で力強いビート。それに負けない透明感のあるボーカル。昨今ではあまりなかったタイプの楽曲だと思います。このようなアコースティックギターの細かいストロークがある楽曲は、その熱量や存在感から「泥臭い感じ」の印象を与えることが多いですが、リズムセクション、特にスネアとの連携が抜群に取られているのでザクザク刻むストロークが重くならず、楽曲を先に先に進める役割になっています。
今期のアニメソング、迷ったらいいからだまってこれを聴け!
いかがだったでしょうか?
恐悦ながら、秋アニメ楽曲を選出させていただきました。10月クール作品ということは、2017年に放送される新作テレビアニメ作品はこれで終わりということになります。この1年、皆さんはどの作品が印象に残りましたか?「あれもあったなー!」「これもよかったなー!」と、さまざまな作品が胸中を去来していると思います。
そんな皆様と、2017年アニメ作品の振り返りをしたいので、ぜひとも11月25日(土)に行われる「アキバ総研15周年 大感謝祭@秋葉原ラジオ会館10階イベントスペース」にお越しくださいませ! 一緒に語りましょう!
それでは、宣伝も完遂したところで次に皆様にここでお会いできるのは2018年春。
来年はどんなアニメ作品が制作され、どんなアニメソングが私たちを虜にするのか。今から楽しみにしたいと思います。
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