2017秋アニソンのキーワードは「じっくり聴ける曲」! モノブライト・出口博之の「いいから黙ってアニソン聴け! in 2017秋」
キャストが歌うアニメソングの聴きどころ!
今期も相当悩みました。いずれも素晴らしい楽曲ばかりで全部優勝にしようかなと思いましたが、それはさすがに怒られるので気合い入れて10曲を選出。選出基準としましては「楽曲がアニメ作品の世界観とどれくらいシンクロしているか」という点。
今回、ED曲が多めに選出されている理由もこの基準ゆえです。
アニメ本編を見終わった後、視聴者の気持ちを楽曲がどのように受け止めているか。アニメ作品と楽曲の世界観がシンクロしていればいるほどこの関係性は有機的にからみ、アニメソングが「楽曲だけの存在」ではなく「アニメ作品の一部」となる。構図としては前後しますが、もちろんOP曲にも当てはまります。
今期は全体的に物語の流れや、作品の空気感が重要な作品が多いと感じたので、楽曲とアニメ作品の世界観との融和性をテーマにした選曲とあいなりました。
このテーマを非常に高いレベルで表現しているのが、第2シリーズとなる「3月のライオン」OP「フラッグを立てろ」です。
第1シリーズ後期OP「さよならバイスタンダー」からの続投となるYUKIさんの楽曲。今回も素晴らしいマッチングとなっています。その大きなポイントは、やはり「声」にあります。YUKIさんの声はガーリーでありながらもフェミニンな響きがあり、独特なポイントが突出しているのが最大の特徴です。この突出した部分に内面の芯の強さや、葛藤を乗り越える力が宿り、聴いた人の背中を少しだけ押してくれるような存在感となるのです。
これらの要素が、羽海野チカ先生の生み出すキャラクターが持つやさしい温度感や色彩、そして厳しいプロの世界を生きるキャラクターたちの芯の強さと絶妙に重なり、楽曲が主題歌としての大きな役割を担うことになるのです。
続いてオープニング曲で見ると、「少女終末旅行」OP「動く、動く」は楽曲の完成度とアニメ作品とのからまり方が非常に面白い関係にあります。
楽曲自体は王道のテクノポップ。サビまでの展開は連続したリズムを意図的に抜いて高揚感を高め、サビへのカタルシスにつなげています。いわゆる「ビルドアップの気持ちよさ」です。しかし、アニメ作品の世界観は「終末後の世界を行き交う」というもの。ポストアポカリプスであり、ビルドアップの果てに全部なくなっちゃった世界、なのです。
背景には戦争が大きなテーマとして横たわっていますが、それについては目もくれず、ひたすら日常を送るため、食料を探すため動く、動く。シリアスで重い要素しかないのにそれを微塵も感じさせず、ともすれば荒廃した世界を「廃墟萌え」的な視点でも捉えられることができるのは、このOP曲の力があるからなのかもしれません。
アニメ作品の世界と楽曲がシームレスにつながる要因のひとつに、担当声優が楽曲を歌う、ということがあげられます。先の「動く、動く」でもメインキャストが楽曲も担当されていることが、非常に重要なポイントになっています。
その中で、今期は「干物妹!うまるちゃんR」ED「うまるちゃん体操」が頭ひとつ抜きん出た楽曲となっています。
コールのような合いの手もお気楽で、肩肘張らずバカバカしい(いい意味で)最高の楽曲。しかし、ただのお気楽ソングには収まらない「仕事の細かさ」が随所に見え隠れしています。特に素晴らしいのがメロディとコード構築の上手さ。専門的に説明すると尺が足りなくなってしまうので端的に述べると、「明るい曲調に入れるマイナー調のメロディとコードの運び方」が絶妙なのです。効果としては、明るい曲なのになぜかちょっともの悲しい瞬間がある。これは作曲を担当しているヒゲドライバーさんが得意とする運び方であり大きな魅力でもありますので、彼の他の楽曲でもそのあたりを意識しながら聴いてみると面白いのではないでしょうか。新しい発見があると思いますよ。
お次も声優さんが歌を担当した楽曲ですが、そのセオリーから10段くらい飛び抜けてしまったのが「おそ松さん」ED「レッツゴー! ムッツゴー! 〜6色の虹〜」。
6つ子役のメインキャスト以外に、宮田和弥(JUN SKY WALKER(S))、大槻ケンヂ(筋肉少女帯、特撮)、中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン)、吉井和哉(THE YELLOW MONKEY)、トータス松本(ウルフルズ)ら1966年生まれのアーティスト総勢27名が参加しているだけあって、メンバーが豪華すぎて「こんなのズルイよ」状態。これはよくないはずがない。いいに決まってるだろ!と取り乱すくらいです。しかし、おそ松さんも「なんでもあり」で「こんなのズルいよ」という破天荒なアニメ作品。そう考えると、これくらい突き抜けちゃったほうがしっくりくる気がしますね。楽曲は昭和歌謡をベースに90年代の匂いを感じさせるリズムセクションやホーンアレンジが聴きどころ。90年代の音楽シーンを牽引し、今日も音楽シーンの最前線でクリエイトし続ける「66年生まれ組」の手腕に脱帽です。こんな大人に、なりたいなぁ。
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