アニメ業界ウォッチング第38回:キャラクターデザイナー毛利和昭さんに聞く、「ミスター味っ子」のアクの強いキャラたちの作り方

2017年10月21日 12:000

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「ミスター味っ子」のキャラは個性的すぎて統一感がない?


── 「ミスター味っ子」にはアクの強いキャラクターばかり登場しますが、どこに気をつけてデザインされましたか?

毛利 特になにか気をつけてデザインした記憶は、ありません。なぜなら、要求されることがあまりにも多かったからです。“ひとりごとにスタイルが違う”と言えばわかりやすいかもしれません。僕がデザインしたキャラを例にとりますと、第76話(「高野山・豆腐勝負!味皇訪ねて三千里」)から登場する、おからと勘平の夫婦、第87話(「ヤキトリで勝負!老舗の味に挑戦だ」)に出てくる、冬彦・秋彦・夏彦の親子。このキャラたちを並べると、スタイルが違いすぎて、まるで別作品のキャラのように見えます。

── 確かに、ギャグ漫画風だったり劇画調だったり、ギャップが激しいですね。それも今川泰宏監督の狙いだったのでしょうか?

毛利 ええ、リテイクが出た記憶はありません。ですから、「味っ子」のキャラクターをデザインするうえでは、統一感を気にしてないんです。

── では、描く絵に幅がないとキャラクターデザインできませんね。

毛利 ひとつのエピソードの中で日之出食堂の四畳半的な日常空間と、トリップしたあとの壮大な宇宙空間を同時に描かないといけないわけです。その振り幅を、キャラデにおいても要求されたということですね。


── その後、毛利さんは「飛べ!イサミ」(1996年)や「地球防衛家族」(2001年)、「ポケットモンスター」シリーズ(2003年以降)でもキャラクターデザインを手がけてらっしゃいます。いずれも子供向け路線だと思うのですが?

毛利 「ポケモン」は完全に子供向けですね。「地球防衛家族」は離婚などを扱っていますし、子供より少し上の層を狙った企画でした。原作の河森正治さんはリアルな絵にしたかったようですが、木村哲監督はもっと軽くしたい、「まんが日本昔ばなし」みたいにしたいと言うんです。「さすがにそれは違うんじゃないか?」と思って、自分の描きやすいところに落ち着きました。

── 毛利さんの経歴の中で、「ゴジラvsビオランテ」(1989年)がありますね。これはどういう仕事をされたのですか?

毛利 「~ビオランテ」の仕事は、実は「味っ子」と関係しているんです。「味っ子」で演出をしていた山口祐司さんがさまざまな経緯の果てに、僕に持ってきてくれた話なんです。なぜ僕だったかというと、山口さんは僕が特撮映画好きだと知っていたからです。

── ビームなどのエフェクトを描いたのですか?

毛利 いいえ、ビオランテ自体です。ラストで、ビオランテがゴジラと同化するシーンをセルアニメーションで描きました。プロデューサーがラッシュを見て、そのラストは没になってしまいましたが、DVDの特典映像で見られるはずです。

── 毛利さんの特撮好きなところは、「味っ子」でも生かされていますか?

毛利 コロッケ対決の前半エピソード(第85話「元祖コロッケ合戦!垂目の恋物語」)に怪獣映画風の演出がありますが、絵コンテではもう少しおとなしかったんです。それを僕らが「シネスコっぽくしようぜ」「空撮カットも入れよう」と悪ノリして、カット数を増やしたりしました。

── ちょっと話が変わりますが、アニメーターの賃金の低さが問題視されています。それについては、どう思われますか?

毛利 もちろん、気になっています。複雑なロボットを描いても野球のボールを描いても、賃金は同じですから、そこはどうにかしてほしい。長くアニメーターをやっているからといって、好きなカットを描けるわけではないんです。「どのカットをやりたいですか?」と選ばせてくれることもありますが、僕はあまり選んだ記憶がない(笑)。アニメアールにいた頃は、30分のアニメを4等分して、4人で描いていました。その頃は戦闘シーンを描いた翌日に日常シーンを描いたり、変化があって楽しかったんです。今はもう、手間のかかる大変なカットしか回ってきませんからね。

── アニメーターを長く続けるコツはありますか?

毛利 うーん……。人によるでしょうけど、飽きないことでしょうか。描くことに飽きなければ、長く続けられる気がします。



(取材・文/廣田恵介)



ミスター味っ子Blu-ray BOX 商品情報


■ミスター味っ子 いただきますBOX

【発売日】2017年11月2日

【価格】49,800円(税抜)

【品番】BIXA-9345

カラー/約1221分/2層/8枚組/4:3 [1080p Hi-Def]/

日本語 リニアPCM 2.0chモノラル


【仕様】
・加瀬政広描き下ろし三方背アートBOX
・毛利和昭描き下ろしデジスタック1
・加瀬政広描き下ろしデジスタック2
【封入特典】
・ブックレット(76P)
【音声特典】
・オーディオコメンタリー
[第25話・28話・41話]
味吉陽一役:高山みなみ/堺一馬役:一龍齋貞友
[第34話]
阿部二郎役:大滝進矢/及川かおる役:沢りつお
【映像特典】(約2分)
番宣映像集(番宣放送当日 15秒・30秒/番宣放送中A 15秒・30秒/番宣放送中B 15秒・30秒)



(C) 寺沢大介/講談社・サンライズ

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