作家・待田堂子 ロングインタビュー!(アニメ・ゲームの“中の人”第18回)

2017年10月15日 08:000

主人公だけでなく、脇キャラも魅力的に


─作劇でのこだわりは?


待田 アプローチは作品によって違うんですが、どんな作品でも主人公だけじゃなく、脇キャラにも魅力が出るよう心がけています。主人公はもちろん大事に書きますが、脇キャラに関しても、「この人だから、このセリフを言う」、「この人だから、こういう行動を取る」ように書いています。そうすると、おのずとキャラに個性が出てきて、視聴者の方が主人公に感情移入できない場合でも、脇キャラ目線になって最後まで見守っていただけるんじゃないかなと。


主人公がおもしろくないのは論外なんですけど、敵対するキャラとか、主人公とまったく関わらないけど毎回出てくるキャラとか、そういった人たちの見せ場も作ってあげたいなと思っているんです。「棺姫のチャイカ」(2014)のジレット隊とか、「SHOW BY ROCK!!」のダガーとか、大事に思って書きました。


─「戦国乙女」のキャラクターも生き生きと描かれていました。


待田 岡本英樹監督、木村暢さん、森田繁さんと一緒に作り上げていきました。日高里菜さんにヒデヨシをやっていただけたのは、本当によかったなと思います。その後、「SHOW BY ROCK!!」でも再びお会いして、やっぱり素敵だなと思いました。


─待田さんはさまざまな作劇手法を使っておられますが、各話数やシリーズのラストにも特徴があるように思います。


待田 海外ドラマを観ていると必ず「引き」があって、ちょっとだけ観るつもりでも観始めると、やめられなくなるんですよね。話によっては「今回はここで終わってもいいな」と思うことももちろんあるんですが、「次はどうなるの?」という形で終わったほうが、皆さん次も観てくれるかなと思うんです。


─「戦国乙女」の最終話ではシロがヒデヨシに耳打ちして、続編を匂わせる終わり方をしていました。


待田 タイムリープものだったので、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を意識しています。「めでたしめでたし」で終わるよりは、「あとは皆さんのご想像におまかせします」という終わりにしたほうがいいと思ったので。


─ファンからは2期を期待する声もありますが。


待田 「戦国乙女」は1クールでやりきるつもりで書ききりました。なので、もし2期があったとしたら、うれしい気持ちと、どうしようかなという気持ちが半々ですね(笑)。

 

脚本家と演出家の共同作業


─小道具の使い方にこだわりは?「戦国乙女」や「SHOW BY ROCK!!」では、携帯電話が重要な役割を果たしていたと思います。


待田 シナリオを書く時には絵面も思い浮かべながら書いてはいるんですが、画作り的なところは演出家の範疇になってくるので、本読みでアイデアをいただいて「あっ!」と思うことも多いです。「前のコンテはこんなふうになっていたな」と思い出しながら、書くこともありますよ。


話にからんでくるモチーフや象徴的に出るものというのは、やっぱり監督のアイデアが多くなってきますね。「おおかみかくし」(2010)の鉄塔とかは、高本宣弘監督のセンスから生まれたものです。

 

 

間口を広げるため、ふるいにはかけない


─作品への参加基準はございますか?


待田 時間的に難しいことはあっても、作品的に興味がわかないということはありません。やったことのないものはやってみたいし、よっぽどのことがないと、内容でふるいにかけることはありません。


─性的描写や風刺の効いている作品でも抵抗ないと?


待田 私の中で「クェイサー以前、クェイサー後」というのがあって、「聖痕のクェイサー」(2010~11)をやるまではそんなにハードなものをやったことはなかったんですけど、「クェイサー」は結構すごくて、最初は「おお……」と思いました(笑)。でもそれ以降、「アマガミSS」(2010、2012)も書かせてもらいましたし、間口が広くなるのはいいことだなと思いました。風刺的なもので言えば、「セントールの悩み」(2017)を経て、今後自分がどう変わるのかなというところがあります。


─コンビを組まれている監督はいらっしゃいますか?


待田 私は比較的新しい監督と「はじめまして」から始まり、1クールぐらいで次の監督の作品に移ってしまうことが多いんです。なので、ずっとコンビを組んで、お互いのいいところ悪いところを知ってやっていくのを、うらやましいなと思う時が正直あります。


やっぱり、監督が私の持ち味みたいなものを理解してそれを引き出してくれて、私自身も監督の「こうしたい」をわかっている状態から始めたほうが、いいんじゃないかなと思います。そういう意味では、「SHOW BY ROCK!!」の池添隆博監督、「長門有希ちゃんの消失」(2015)の和田純一監督、「棺姫のチャイカ」の増井壮一監督とはそういう関係が築けたのではと思っていますし、ぜひまたご一緒したいです……って、私の独り相撲だとイヤですね。


─シリーズ構成をされる際、ほかの脚本家はどのように選ばれるのでしょうか?


待田 監督やプロデューサーが呼ぶ場合もありますし、私からお声がけする場合もあります。


─お声がけされる場合は、お知り合いの作家さんに?


待田 そうですね。ご一緒したことのない方ともやってみたいなと思うんですが、なかなかお声がけする勇気が出なくて……。

 

原作と脚本の関係について


─原作つきの作品にアニメオリジナルを入れる際、気をつけておられることは?


待田 いくつかのパターンがあって、例えば「原作は続いていくけど、アニメは途中まで」というパターンと、「アニメと同時期に、原作も完結する」パターンの場合。前者はどこまでで区切るかというのが重要な問題になってきます。ライトノベルの場合は物量がすごく多いので、いかにそれをうまく入れていくかというのが大変で、主人公を優先させるため、読者の方が楽しみにされている部分を削らないといけないこともあります。


原作があるものは、お預かりしている立場にあるので、原作者の先生とは必ずお会いして、密に話し合って決めています。最初に構成を作る段階で、「こういう意図でここを削ります」、「こういうふうにやっています」と説明します。全話数のロングプロットも用意して、確認していただいています。加えて、「アニメの設計図となっているシナリオが、演出家の乗れないものになってはいけない」というのが持論なので、監督の意図もプロットに込めて、原作者の先生に伝えるようにしています。


「セントールの悩み」でも、どの話をチョイスするかで村山慶先生といろいろと話し合いました。9話なんかは「放送しても大丈夫かな」と悩みましたが、「そこを抜いちゃうと、セントールじゃなくなっちゃうから」というご意見があり、後から組み直しましたね。

─原作者の方がアニメの脚本を書かれるケースも増えています。今後、専業の脚本家が減っていく可能性はあるのでしょうか?


待田 脚本にはゼロから作る「脚本」、原作を脚本にする「脚色」、脚色をさらに色づけする「潤色」の3つタイプがあります。すばらしい漫画原作で、そのままコンテに貼りつけても大丈夫という作品もあるとは思いますが、やはり脚本にするには、脚色が必要になってきます。「原作漫画のコマとコマの間はどうなっているのかな?」とか、「動いた時にどうなるのかな?」とかいった部分は、私たち脚本家が考えるところだろうと思います。なので、専業の脚本家がいなくなることはないのでは……というか、なくなったら、困ります!

 

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