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「ヤマト」サウンドに欠かせない音響監督の采配
──宮川さんが曲を作る際には、どんなものが必要なのでしょうか?
宮川 僕の場合はタイトルですかね。漢字2~4文字くらいで表してほしいとはいつも言っています。例えば「情念」なのか「情感」なのかとか。戦いだったら、「一進一退」って書いてくれたり、「連戦連勝」って書いてくれたり。そういうタイトルを書いてくれると夢が広がるんです。あとはできあがったコンテの、ここからここのコマまでの音楽が欲しいと言われたら、それはそれで腕が鳴るところ。超具体的なお題をもらうか、ものすごくアバウトにもらうかのどっちかが自分を刺激しますね。
──そういう意味では、「2202」の第五話「激突!ヤマト対アンドロメダ」で、ヤマトとアンドロメダがすれ違うシーンの音楽とか、手に汗を握るものがありました。映像と音楽を合わせるというところで、ヤマトならではの手法というのはあるのでしょうか?
宮川 あそこカッコよかったよね。でも、マッチングというところで言うと、すべて音響監督の吉田知弘さんが考えてるんです。録ってる時から、吉田さんの頭の中に「あのシーンの音楽ないぞ」とか「あそこはこれをかけよう」っていうパズルが、もう第七章までできてるらしいんです。「これはずっとあとに使います」「これはあそこにピッタリです」とか、あとは「この曲はあそこのシーンにぴったりなので、これまで使おうと思っていた曲を違うところに回します」とか。そういう会話がよく聞こえてくるので、そこまで考えているんだなって。
──映画だと映像に合わせて演奏するということもあるんですか?
宮川 それももちろんあるんですけど、僕はちゃんぽん加減がいいと思ってるんですよ。まずはある程度の分量を作家のイメージで縦横無尽に作ってしまって、それがぴったりとハマるところをまず押さえる。それでもやや収まり切らないとか、このシーンの変化だけはピッタリ合わせたいとか、特別感を出したいってところだけ、いわゆるフィルムスコアリングっていう、尺に合わせて録音していけばいい。その両方をやるのが一番健全だなって思い始めています。
フィルムスコアリングだけになっちゃうと、画に合わせることが目的になってきちゃうから、音楽本来のエネルギーが、行きたい方向に素直に行ってない場合があるんですよ。それってちょっと危険じゃないですか。レナード・バーンスタイン(編注:20世紀後半のクラシック界を牽引した音楽家)なんかは、それで怒って映画はやらないと言ったという文献は残ってますけど。そういう意味では両方から攻めてくれるのが、作曲家としては正しい気がします。
──職人とアーティストな面の両方があるから?
宮川 うん。まさにその両面が作家の正体ですからね。明らかに職人であるし、明らかに芸術家であるから。
──これまでのエピソードで、音楽の使われ方として面白かったシーンなどがありましたら、教えてください。
宮川 画合わせ的に一番面白いなと思って作ったのが、「2199」のガトランティス(白色彗星帝国)とガミラス帝国とヤマトが三つ巴の戦闘になるところ。そこはまさにフィルムスコアリングで、ここからガミラス!とか、ここからガトランティス!となったかと思うと、白色彗星になったりする。それは作ってても面白いんです。それなりにうまく繋げられるかどうか、そこは職人としての腕の見せどころ──あくまで芸術性を保つための職人ということなんだけど、愉快に作ってたんです。それを録音するじゃないですか。そうするとミュージシャンも楽しいから一生懸命演奏するんです。
すると吉田さんが、ちょっと手綱をゆるめてくれるわけ。場面に合わせて曲を書いてきたから、すべてのシーンにぴったりハマらないとおかしいんだけど、そこは「あくまでも伸び伸びと演奏をしてください」って言うんだよね。それで、こっちは想像力満開でやるから、ピタッとは合わない。すると、そのズレたところを画で調整したり、一瞬効果音を入れて、その瞬間にショートカットしてくれたりして、見事に繋いでくれるんですね。演奏で、決してテクに走らないのは首尾一貫して行われています。
──それを聞くと、音響監督さんが続けてやられているのも安心感に繋がりますね。
宮川 吉田さんなしには「ヤマト」の劇伴は録れないでしょうね。
──最後の質問です。ここまでかなり濃いお話を聞かせていただいたのですが、宮川彬良さんが好きなキャラクターは誰ですか?
宮川 誰だろうなぁ。(この日一番悩みつつ)誰って言いづらいね……これ、僕の個人的な趣味のことでしょ。女性がみんなかわいいじゃん。あれが気になってしょうがないよね。またあの制服が、「おいおいおいおい!」って感じで、これで禁欲生活なんてどうすんの? って思うよね。あれはヤマト乗組員の男にとっては、すごく酷だと思うんですよ。だから女性乗組員は正面から見れないよね。こんなかわいい人が毎日目の前にいたらどうしよう、ってことは非常に感じてます(笑)。
──まったく同感です。
宮川 もちろん岬百合亜もいいんだけど、僕が結構好きなのはメガネ美人の新見薫だよね。これは気になる。「髪の毛を上げて見せてごらん」って感じだよね。あとは原田真琴なんてカワイイに決まってるじゃん! それに、やっぱり森雪でしょ。このラインアップは抜け目ない。
でも誰か1人っていうと、あえて言うならアナライザーかな(笑)。中学のときからアナライザーが好きなんだよね。未来には、本当にこういうロボットみたいなのがいそうだなって思ってたから。「スター・ウォーズ」の3年前にアナライザーがいたんだから、鬼の首を取った喜びみたいなのは感じるよね(笑)。
(取材・文/塚越淳一)