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漫画とアニメを発展させてきた、世界でも類を見ない“特殊な事情”
── 漫画を原作にしたアニメ企画の意義はどこにあるのでしょう? 布川 手塚治虫さんが自分のプロダクションで「鉄腕アトム」をテレビアニメ化したころ(1963年)から、漫画とアニメはつねに連動してきました。トキワ荘の漫画家たちがテレビアニメを作るためにスタジオ・ゼロを興したり(1963年)、制作会社のオーナーが漫画家本人だった時期もありました。今は、漫画をアニメ化する場合、製作委員会に出版社が入ることが多い。原作漫画の売り上げを伸ばすためです。そういう意味では、運命共同体としてのアニメと漫画の関係は、より深くなっています。
最近は、原作者の方たちも自分の漫画がアニメ化されることを期待するようになりましたね。その期待を裏切らないようにアニメ化しなくてはなりません。漫画というのは編集者と漫画家、1人か2人で作るものじゃないですか。アニメは何百人というスタッフが関わるので、「こんなはずではなかった」と原作者をガッカリさせないように作るのは、やはり大変です。特に、アニメ番組は1話30分で毎週放送するので、時には原作の連載を追い越してしまう場合もあります。そういうときは、オリジナルのエピソードを考えて繋がなくてはならない。1年間52話、完璧なクオリティを維持するのは不可能です。監督は1人でも、各話数ごとに、関わるスタッフは違いますからね。
── 漫画原作とオリジナル企画、どっちが作りやすいですか? 布川 それぞれ、難しさはあります。オリジナル企画は認知度がないので、しっかり30分見せきるだけの内容がなければ、見てもらえません。漫画原作と違ってベースになる物語がないので、脚本家や演出家の力量が問われてきます。やっぱり、オリジナル企画のほうが大変だとは思います。
── いちばん最初の「NARUTO-ナルト-」が2002年ですから、もう15年前ですね。「NARUTO -ナルト-」は、現ぴえろ社長の本間道幸さんが営業してアニメ化権を獲得したそうですが? 布川 実は、「幽☆遊☆白書」から「NARUTO-ナルト-」までの10年間は、苦難の時代でした。本間に「どうして、こんな当たらない企画ばかりなんだ」と愚痴ったぐらい売れない時代でしたね。本間は、制作から企画営業部に入り、いまは社長です。僕はアニメーターから出発して、演出家を経て会社を設立したのですが、周囲に僕のようなタイプの経営者はいませんね。そういう意味では時代が変わってきたんだろうし、“時代を見る目”がなければ、売れる企画は立てられないだろうし……。
日本のアニメの場合、1話30分という縛りがありますよね。海外で子供向けのアニメ番組というと、だいたい5分か10分なんです。30分もあると、しっかり脚本をつくらなくてはならないので、スタッフたちはストーリーづくり、キャラクターづくりに心血を注いできました。そういう部分を、海外の人たちは評価してくれているんじゃないでしょうか。それと、こんなに漫画の発行部数が減っているのに、こんなにたくさん漫画雑誌を売っている国は、ほかにありません。毎週毎週、分厚い漫画雑誌が書店に並ぶだけでなく、ネットでしか読めない漫画もたくさんありますよね。やはり、日本は特殊な国なんです(笑) 。
── 漫画家にしろアニメーターにしろ、絵を描きたい人たちの情熱が強いんでしょうね。 布川 漫画家は物語まで考えるのが仕事ですから、アニメーターとは少し志が違うかも知れません。だけど、手塚治虫さんの漫画は、コマ割りが映像的でしたよね。ハリウッドの若手クリエイターに日本漫画のファンが多いのも、日本の漫画に映画的なセンスが受け継がれている証拠でしょう。また、日本のアニメはフルアニメーションではなく、3コマ作画が基本です。作画枚数を減らす代わりに、設定やストーリー、レイアウトなどに力を注いで、クオリティを高めていきました。独自の発展を遂げてきたので、アニメにしても漫画文化にしても、コンテンツとして誇っていいと思うんです。ただ、これまでは日本の内部に向けて作品をつくってきましたから、今後は世界とどう付き合っていくかが課題でしょうね。
(取材・文/廣田恵介)
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