作曲家・橋本由香利 ロングインタビュー!(アニメ・ゲームの“中の人”第17回)

2017年09月16日 08:000

幾原監督は「自分の何かを引き出してくれる」


─幾原邦彦監督は「輪るピングドラム」(2011)や「ユリ熊嵐」で、音響監督も兼任されていますね。


橋本 幾原監督作品だけは、監督と直にやり取りすることが多いですね。自分の何かを引き出してくれて、自分でも思ってもみないものができたりするので、とてもおもしろいですね。


─打ち合わせには原作者の方もいらっしゃるのですか?


橋本 「ささみさん」の日日日先生や「3月のライオン」(2016)の羽海野チカ先生はいらしてましたね。「ニャー将棋音頭」は、「もっと後ろのオケをこうしてほしい」など、羽海野先生の意向がありました。


─挿入歌作曲ではやり方が違ったりしますか?たとえば、「とらドラ!」(2008~09)の「ホーリーナイト」は第19話の挿入歌で、作詞は脚本家の岡田麿里さんが担当されています。


橋本 「ホーリーナイト」はオンエアが始まってからの発注でした。歌詞も絵コンテもでき上がっていたので、どういうシーンでつけるのかも明確でした。「こういう形しかないよね」という感じで、迷いはなかったですね。ただ、時間がすごく差し迫っていて、制作期間が短かったのがつらかったです(苦笑)。


─話数が進んでからの突発的なオーダーもあるということでしょうか?


橋本 結構あります。「おそ松さん」では「希望の星」や「第四銀河大付属高校 校歌」などもオンエアが始まってからの発注でした。特にカラ松と十四松が歌う「六つ子に生まれたよ」は急で、脚本家の方が書かれた歌詞が送られてきて「来週までに作ってね」という感じでオーダーがあったので、なんとか間に合ってよかったです(笑)。


─アイキャッチの作曲で気をつけておられることは?


橋本 わかりやすく、アニメを象徴する感じになればいいなと思っています。それと、メインテーマ的なものと楽器の構成が違和感ないようにしています。アイキャッチで使われる絵は、オンエアで初めて見ることがほとんどですね。

 

 

編曲のポイントは緩急にあり


─編曲でこだわっておられることは?


橋本 編曲には自分の曲、ほかの作家の方の曲、既存曲のカバーの3つがあります。全てのケースで気をつけているのは、緩急があるかどうか。「ここで落ちて、ここで盛り上がる」みたいなのがあったほうが、曲が立体的でおもしろい感じになると思います。


あとはその曲の使われ方、CD収録のみなのか、映像とのリンクがあるのか、それともステージで歌いながら踊るのか、によってサウンドの構成を変えるようにしています。ハロー!プロジェクトやアイドルのアレンジをやっている時に実際のライブを観て、リズムのキメがあることによってダンスがすごく引き立つのがよくわかりました。「アイドルマスター」シリーズでも、ダンサブルな曲にはキメを入れるようにしています。


─ご自身の曲とほかの方の曲で、アレンジはどのように変わってきますか?


橋本 自分の曲に関しては、曲を作る時に大体の方向性を決めて提出するので、逆にそこからはそんなに変えられません。ほかの方の曲を編曲する時には、どこまで変えていいのかが大きなところだと思います。「全然違うものにしていいよ」という時もありますし、「もとのサウンドを継承しつつ、アップデートしたものを」という時もあったりします。

─橋本さんは「輪るピングドラム」で、日本のロックバンド「ARB」の楽曲を大胆にアレンジされました。


橋本 幾原監督からは「アニメに合うようにエレクトロニカで、原曲とかなり変えたものを作ってほしい」というお話でしたので、ARBを知っている世代ではありますが、原曲にとらわれないよう手探りしながら作っていきました。コード進行であったりとか、テンポであったりとか、曲によってはメロディーしか残っていなかったりして、かなり変わったと思います。


─ARBの方々はアレンジされた「ROCK OVER JAPAN」や「魂こがして」を聴かれて、どのような反応をされたのでしょうか?


橋本 直接うかがったわけではありませんが、ビックリされたんじゃないでしょうか(笑)。「魂こがして」に関しては、監督と何度かデモのやり取りをして作っていきました。打ち合わせの時、アレンジは「原曲に近い感じにしてほしい」とのことだったので、最初のデモはオリジナルの雰囲気に近いものでした。その後、「暗い救いのない感じのシーンで使う」ということになり、新たに作り直して今の形に仕上げました。もともとは明るいメジャーの曲でしたが、マイナーキーの曲に変えてもメロディーを変えずに、全然違う肌触りのものができたのは、興味深かったですね。たまたまうまくいった感じです。

 

作詞はメロディーが引き立つように


─作詞で意識されていることは?


橋本 専業の作詞家ではないのと、自分で書いた曲の作詞がほとんどなので、メロディーが引き立つ歌詞にしたいと思っています。メロディーと言葉が切れる場所を合わせたりして、メロディーと歌詞がうまくからみ合うようにしています。


歌詞の発注があるものは主題歌やキャラクターソングが多いので、内容をすごく大事にしています。俯瞰で見て言葉を選ぶというよりは、リスナーの方が聴いて「ああ、このことだな」とわかるように、コンテンツの内容をダイレクトにちょっとずつ入れることが多いです。

 

 

余暇について


─息抜きでされていることは?


橋本 ちょっと旅行に行くぐらいです。


─ライブには行かれますか?


橋本 自分が作った作品の方のライブはご招待いただけるので、時間があれば行くようにしています。


─ご親交の深い作家さんをうかがってもよろしいでしょうか?


橋本 同じ事務所の作家の方、作詞家だと、只野菜摘さんや大森祥子さんとは仲よくさせていただいています。ほかの事務所の作曲家の方とは、なかなか知り合う機会がないのでいろいろ情報交換とかしてみたいですね(笑)。


─アニメ業界の方々はいつ休まれているのかわからないくらい働かれていますが、昔よりもプライベートの時間は増えていますか?


橋本 よりなくなってきているのが現状でして……。自分の生産性が低いからなのかもしれませんが(苦笑)。劇伴が多くなってくると制作期間も長くなりますし、そこに別の仕事が重なってくると、何もできなくなってしまいます。歌ものメインのころのほうが、うまく時間をやりくりできていた気がします。

 

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(C) 羽海野チカ・白泉社/「3月のライオン」アニメ製作委員会 (C) 羽海野チカ/白泉社

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