創作者として「承認力」を背負う覚悟 「Re:CREATORS」あおきえい監督インタビュー

2017年09月17日 00:010
(C) 2017 広江礼威/小学館・アニプレックス

※本コンテンツはアキバ総研が制作した独自コンテンツです。また本コンテンツでは掲載するECサイト等から購入実績などに基づいて手数料をいただくことがあります。

「承認力」は仕事の根源を設定化したもの


── 作中で特に気に入っているキャラクターは誰でしたか?

あおき 僕は被造物よりも創造主のキャラクターが良いなと思っていたので、同じ業種ということもあるのですが、中乃鐘や松原ですね。中乃鐘はクリエイターではありつつも調整役でもあって、我の強い部分はあるけれども周りの意見を吸収してそれを形にするという役割の人なんですよね。その苦労が自分も監督としてわかる部分が結構あって共感するところはいっぱいありました。

── しかも彼は「関わった人は何らかの形で報われてほしい」とも言っていました。

あおき それも僕がいつも思うところですね。アニメーションはやっぱり大変な作業で、本当はギャランティももっと上げたいのですが、こちらから提示できるギリギリでやっていただいていて。この作品に限った話ではありませんが、せめてそういう人たちにとって、作品に参加したことが名刺になってステップアップしてよりよい立場になっていってほしいなといつも思っています。

── 松原の場合はどんなところが?

あおき 松原に限らずそうなのですが、「Re:CREATORS」に出てくる制作者って基本的にみんな純粋なんですよね。お金ではなく、自分が生きてきた証を作品に刻みたいんだという思いがある。松原のセリフでいいなと思ったのは、颯太がアルタイルの話題で最初言いよどんだときに、颯太の意図を誤解しつつも、「誰だって最初からうまい奴なんていないだろ。俺らにしたって完璧だ、なんて思ったから人に見せているわけじゃない。腹括っているだけだ」(第7話)と言うシーン。ああいうところも非常に共感できる部分なんですよね。どの監督もそうだと思いますが、特にTVシリーズのアニメは制作期間や予算の問題で、いつも100%納得できるとは限らない。でもそこで全力を尽くし「これがベストである」という覚悟を持って作品を作るところはすごく共感できるなと思いました。


── シリーズを振り返ってあおき監督にとって印象的だったシーンやお気に入りのシーンは何ですか?

あおき 導入である第1話は自分としてはすごくバランスの取れた話数にできたなと思いました。わかりやすくてエンターテインメント性も盛り込めて、シリーズとしてのフックもきちんと作れました。第8話でまみかが刺されるところは音響がすごく良くて。あと第10話のセレジアが復活するシーンも副監督の加藤(誠)さんのコンテが素晴らしくて、設定の説明をしつつきちんと「Re:CREATORS」ならではの盛り上がり方をする独特のシーンでした。ほかには、セレジアやアリステリアの最期のシーン(第19話)は渡部周さんの絵コンテと演出、合田浩章さん(作画監督)とも素晴らしくて、すごいシーンにしていただきました。現場スタッフには感謝の言葉しかありません。最終回は自分としては絵コンテでやるべきことは全部できたので、時間をかけさせてもらっただけの最終回にはできているかなと思っています。


── セレジアの復活の場面にも「承認力」が出てきましたし、「Re:CREATORS」を作っている最中も視聴者からの「承認力」を得る立場にある監督として、この言葉が設定に盛り込まれたことについて改めてどのように考えましたか?

あおき 作り手としては「これが面白いはず」と、先ほどの松原のセリフではありませんが、ある種の覚悟を持って作品を提出しているので、それがどう受け取られるかは見ている人によってまったく変わってくると思います。「承認力」というのは作品中のワードなのでフィクションのものですが、自分たちの立場においても仕事の根源を設定化したものだと感じています。それを物語のテーマに扱いつつ、設定としてドラマを作ることの意味は非常に大きいと感じています。「承認力」というのはつまるところ、 お客さんに面白いと思ってもらえたら認められるということなのですが、先ほど話したように、たとえ作り手がベストを尽くしても、必ずしもそれをお客さんに面白いと思ってもらえるとは限らない。そうなったとき作り手として悔しい思いをすることもあります。でもだからといって、それをお客さんに責任転嫁して「俺の作品をあいつらわかってねぇ」とあたってはならないと思います。もし僕がそういうことをする人間だったら、そもそも「Re:CREATORS」という作品を創る意味がないと思うんですよね。だって、作品内容と自分がやっていることが違うとしたら、それはモノづくりに対して嘘をついていることになりますから。作中でよく被造物のキャラクターが創造主のことを神様と言います。自分たちは確かに作品作りをするうえでは神様かもしれないけど、本当の神様というのは実は受け取る人たちのことで、作り手の力と受け取る人のリアクションがあってはじめて1つの作品として成立するわけです。だから「Re:CREATORS」を作るということは、自分も当然その立ち位置で作るわけで、そこは本当に覚悟を持って臨んでいました。

── 企画を受け取った段階でもうその覚悟はお持ちでしたか?

あおき そうですね。最初に一読したときは純粋に面白いなと思って読んでいましたが、読み返した段階で「この設定で物を作るということはつまり……」と思っていました。ただ、設定は面白いですし自分がそれに共感したのも事実なので、そこはどんな結果になろうと信じて真面目にやって行こうと思いました。

── 「Re:CREATORS」で監督を務めたことによって、今後の作品でもずっとそれを感じながら作られていく。

あおき そうなんです。広江さんとんでもないもの書いてくれたな、と(笑)。でも、望むところですよ。

── 次回作も楽しみにしております。ありがとうございました。


<取材・構成:日詰明嘉>
(C) 2017 広江礼威/小学館・アニプレックス

画像一覧

  • (C) 2017 広江礼威/小学館・アニプレックス

  • (C) 2017 広江礼威/小学館・アニプレックス

  • (C) 2017 広江礼威/小学館・アニプレックス

  • (C) 2017 広江礼威/小学館・アニプレックス

  • (C) 2017 広江礼威/小学館・アニプレックス

  • (C) 2017 広江礼威/小学館・アニプレックス

関連作品

Re:CREATORS

Re:CREATORS

放送日: 2017年4月8日~2017年9月16日   制作会社: TROYCA
キャスト: 山下大輝、小松未可子、水瀬いのり、日笠陽子、村川梨衣、鈴村健一、雨宮天、坂本真綾、斧アツシ、豊崎愛生、小西克幸、金元寿子、杉崎亮、柳田淳一、濱野大輝、寿美菜子、恒松あゆみ
(C) 2017 広江礼威/小学館・アニプレックス

ログイン/会員登録をしてこのニュースにコメントしよう!

※記事中に記載の税込価格については記事掲載時のものとなります。税率の変更にともない、変更される場合がありますのでご注意ください。