※本コンテンツはアキバ総研が制作した独自コンテンツです。また本コンテンツでは掲載するECサイト等から購入実績などに基づいて手数料をいただくことがあります。
“クリエイターの敗北”を最終回に挿入した理由
── 全22話という、従来のアニメとは異なる話数という構成でしたが、シリーズ構成はどのように考えられたのでしょうか? あおき アニプレックスさんからの依頼の時点で、広江さんの原作に対してもっとも適切な話数の分配をしてくれれば、1クールとか2クールの枠組みピッタリにする必要はないとのことでした。最初に原作を読んだ印象としては、18話から20話くらいかなという感触で、全20話で構成を組んでみて、そこに総集編の13話が入り、さらに最終回付近がちょっと駆け足になってしまっていたので、さらに1話分増えて全22話となりました。当初は第21話と22話が1本分でした。
── 最終話は昨今珍しいくらいじっくりと最後の別れを描いていたのが印象的でした。絵コンテ作業にはじっくりと時間をかけられたそうですね。 あおき はい。もうスケジュールをぶっちぎるくらいじっくりと(笑)。最終話は、お話としては基本的に後日談なので、派手な戦闘シーンもなく、キャラクターに寄り添って普通に終わればいいんだという感覚だったのですが、実際にコンテを切っていくとものすごく時間がかかりました。特にBパートに入ってから各キャラクターの最後を描いていくと、ちょっと気持ち悪い言い方ですけれども、今まで「Re:CREATORS」という作品を作ってくれたキャラクターたちに対して、自分の感謝の気持ちを入れたコンテにしたいと思って。シナリオは広江さんの稿に沿っているのですが、そうした自分の気持ちを入れるにはどういうカット構成にするかを考えていると、結構難しくて……。ひとりのお別れのシーンに1日かかったこともありました。あとは本当にラストのドラマの締め方について加えさせていただいた部分と、オミットした部分がそれぞれ少しあります。そこは一度コンテという形で広江さんに自分の考えをお伝えして「違和感があるようでしたら戻します」とお伝えしたところ「問題ないのでこれでやってください」とのことで、それを受け取って最終回のコンテができあがりました。
── あおき監督がふくらました部分は具体的にどんな内容の個所でしょうか? あおき 最後にスタジアムで大西と中乃鐘が会話をしている部分です。ここを加えた理由は彼らが話している内容そのままです。「Re:CREATORS」はセツナが物語を解決してハッピーエンドにはなりましたが、創造主たちがチャンバー・フェスで用意した伏線やキャラクターは結局、すべてアルタイルに負けているんですよね。つまり、世界は平和になったけれどもクリエイターとしてはアルタイルにかなわなかったわけです。これは努力は必ずしも結果に結びつくわけではないという厳しい現実を象徴的に描いているので、ストーリー展開としてはアリだと思うのですが、そのことを彼らは作り手としてどう思っているんだろうという疑問が僕の中で生まれ、それを言葉にしてフォローしてあげたいなと思って、彼らのセリフを追加させていただきました。それに合わせて颯太のナレーションの入りも少し変えさせていただきました。
── 主人公の颯太は、物語の序盤は感情移入がしづらかったと別のスタッフの方もおっしゃっていましたが、最終回まで描いてあおき監督はどのように感じられましたか? あおき 原作を読んだ時に一番気になったのが颯太の立ち位置でした。颯太というキャラクターがわからなかったんですよね。広江さんとしては颯太をあくまで普通の子にしたいという思いがあり、画力を含めて何か突出した力があるわけではないという設定の子で、じゃあ具体的にどんな家庭環境なのか、など広江さんとかなりお話をしました。その結果、セツナの件を告白する場面をチャンバー・フェスが始まるよりも前に持ってきて、それをきっかけにストーリーが回っていくというシリーズ構成で相談をさせていただいたという形です。ただ、キャラクターとしてはかわいいなと思えますね。自分も颯太と同じような時期を過ごしていたんですよ。今はこうして監督として仕事をさせていただいていて、颯太だった期間を卒業してありがたいことに松原や中乃鐘のポジションにいるので、彼の行動は「昔は俺もそうだったよなぁ」と微笑ましく思えますね。
── 颯太を見ていて、ご自身がエグられるような部分はありましたか? あおき そうですね。今もですけれども、やっぱりアニメーションの監督をしていて面白い作品を見ると、「スゴいな」と思う半面、颯太みたいに嫉妬からくる嫌な気持ちが生まれることは、ぶっちゃけあったりします。悔しいというか、自分に腹立たしいというか。同じフィールドで戦っているのに「何でこんなにできるの?」って。そこは僕がまだ颯太を卒業できていない部分なんですけれども。
── あおき監督自身も誰かからそう思われているかもしれませんが、あおき監督をそんな風に妬かせるクリエイターを教えていただくことは可能ですか? あおき えーっ!?(笑)。やっぱり同年代の作り手とか自分よりも若い年代のクリエイターの作品は脅威ですね。「どうかこの1本で終わってくれー!」って思います(笑)。
(一同爆笑)
でも、知り合いの作品だとうれしいですよ。例えばイシグロキョウヘイさん(「四月は君の嘘」監督など)は、「放浪息子」(あおきえい監督作品)でご一緒した時から演出の才能がピカイチだったので、この人はたぶん監督になるだろうなと思っていました。そういう人を見ると「俺も頑張らなきゃな」という気になりますね。
── ちなみに、あおき監督が師事した方はどなたなのでしょうか? あおき 僕は誰かにずっと付いて教わったということはなく、その都度都度の監督やスタッフに教わった形なので、一般的に言う師匠という存在がいないんです。強いて言えば「おねがい☆ティーチャー」の井出安軌監督とか、当時AICでいろいろな作品を作っていらした秋山勝仁監督(「魔法少女プリティサミー」、「イナズマイレブン」監督など)にいろいろと教えていただいた形ですね。