史上初! およそ半世紀にわたる日本のロボット玩具史を辿る大著「ロボットアニメビジネス進化論」発売! 著者・五十嵐浩司インタビュー

2017年08月21日 17:570

バンダイの強さとは

 

──そういう意味では今回の本は、日本が持つ「強さ」のルーツを読み解く本でもあるのでは。

 

日本の強さもそうですが、基本的におもちゃというのは極端に素晴らしいとか、圧倒的な天才が驚天動地のアイデアで商品を生み出すものではないんじゃないか、と思っているんです。

確かに「バルキリー」とか「ゴールドライタン」、「闘士ゴーディアン」といった、それまでに誰も思いつかなかったすごいおもちゃが出てきたりもするのですが、そういうのはまれなことであって、わりと繰り返しのサイクルの中で玩具は生み出されているのではないでしょうか。

例えば「魔神英雄伝ワタル」というロボットアニメも突然それが生まれたわけではなく、それ以前にも「チョロQダグラム」や「SDガンダム」、「ビックリマン」などデフォルメという概念は昔からあったもので、これらをミックスさせればこんなのができるんじゃないか、といって生まれたものだと思います。その結果、できたものが非常に新鮮なものとして子供たちの目に映り、大変よく売れた。そういう意味で日本の玩具は繰り返しであって、だから僕はあまり現状に悲観しないようにしています。よく「今、ロボットは弱い」「玩具は売れない」などと言われますが、たとえば今回の本に書かれているアイデアをうまく活用すれば、また新しいロボットが出てくるんじゃないの? と思います。

もうひとつ書きたかったこととしては、バンダイ模型(現在のバンダイ・ホビー事業部の源流)の話をすると、どうしてもガンプラのヒットから話が始まってしまうじゃないですか。

 

──ガンプラ史観みたいなものはありますよね。

 

そうですね。ただ、僕がバンダイ模型のプラモデルで初めて作ったのは、「ウルトラマンタロウ」で、このキットは体のストライプまでもが別パーツだったんです。ストライプなんて、普通デカールで表現するじゃないですか。まさに今で言うところの「いろプラ」や「HG」、「MG」ブランドでやるようなことを、バンダイ模型は1973年(昭和48年)の時点でやってたんですよ。

「ウルトラマンタロウ」のプラモデルを買う層というと、せいぜい幼稚園児や小学生低学年辺りです。プラモデルなんて完成させてなんぼですから、低学年がちゃんと完成まで持っていけるものを提供する。なるべく箱と完成品のギャップがないものを作る、ということを昔からバンダイはやっているわけです。その考えが、今のガンプラにも生きているのではないかな、と思います。

 

──バンダイの強みはそういったユーザーに寄り添った商品作りといったところでしょうか。

 

ユーザー目線を忘れないところと、攻め方と引き際を心得てるところでしょうね。そこが企業としてドライに見えることもあるかもしれませんが。

いっぽうでタカラトミーも、今は「トミカハイパーレスキュー ドライブヘッド」がかなりヒットしているし、「トランスフォーマー」関係もしっかりやっていますからね。そういう意味では、ロボットものに関しては、今はバンダイよりもタカラトミーのほうが勢いあるんじゃないかって気もします。

とはいえ現在、バンダイとタカラトミーくらいしか、ロボットを扱うメーカーがないというのは、玩具ファンとしては残念な気もします。とはいえ、時代の事情もありますからね。ただロボット玩具が群雄割拠する時代は、またきっかけがあればやってくるのではないかと思います。たとえば中国のメーカーの技術を使って、日本で展開しようよ、という話も起きないとは思いません。

 

──昨今、アニメやゲームなどのジャンルでは、中国がものすごい勢いで日本にアプローチしていますが、玩具も同じような状況になり得ると。

 

今、日本に入ってきている中国のロボット玩具は、一部のマニアが「これはいい!」って騒いでるだけかもしれません。しかし、実はかつて日本のおもちゃメーカーで活躍していた日本人のデザイナーが、今、中国メーカーでロボットをデザインしたりしているんです。これはあまり表に出てこない話なのですが。

 

──ということは、日本のロボット文化は中国を経由して、日本に逆輸入されたり、アジア中に広まっていくことも……。

 

ありえると思いますよ。すでにガンダムやトランスフォーマーは、中国市場でとても強いコンテンツとなっていますから。

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