子安秀明 ロングインタビュー!(アニメ・ゲームの“中の人”第16回)

2017年08月05日 08:000

「ランス・アンド・マスクス」を振り返る


─「ランス・アンド・マスクス」は、当初からアニメ化が決まっていたのでしょうか?


子安 最初はライトノベルのお話としていただきました。


─本作はタイトル通り、さまざまな騎士と馬上槍が登場しますね。


子安 ランスの突進がすごく好きで、ランスというのは不器用な武器なんですよ。斬ることもできない、叩くこともできない、突くことしかできない。その愚直さみたいなものにひかれました。


─葉太郎の出血や危機を真緒に知らせるために、ナイトランサーのイラストにお茶をこぼしたシーンは、映像ならではの表現だと思いました。


子安 あまりにベタ過ぎて恥ずかしかったんですよね・・・。もっといいのがあればよかったんですけど(苦笑)。


─アニメでは話数ごとに真緒の髪型や服装が変わっていますね。


子安 これは現場の判断だと思います。

 

 

いつの間にか書いているもののほうがおもしろい


─印象に残ったお仕事は?


子安 「ランス・アンド・マスクス」の白姫が、どんどん自分で動くようになったのは面白かったですね。


プロットにはそんなことかけらも書いていないのに、自分でもなんでこんなことになっちゃったのかわからない。そういうことがあるとおもしろいんですよ。


全部というわけじゃないですけど、自分が「おもしろいな」と感じるものは、周りにも伝わるんだなと思いますね。


─天才肌なのですね。


子安 自分の頭を信じていないんですよ。頭で「こうすればうまくいく」とか、「こうすれば正しい」とか思っても、絶対間違っているんです。いつの間にか書いているもののほうが、創作としてはおもしろいんですよ。


「これがうける」という判断は僕の仕事じゃありません。そういうチェックはプロデューサーさんや監督さんがわかってらっしゃるので、そこに口を出すのは世界を小さくすることにしかならないと思います。僕は広げるだけ広げて、「キャッチはおまかせします」みたいな。「キャッチできない」となれば、クビになるだけなので。

 

自分なんて気にしていたら、創作なんてできない


─アニメ業界で10年以上続けていくのは、かなり大変だとうかがっています。


子安 それでいいんだと思いますよ。新陳代謝がよくなるじゃないですか。残ろうというのが気持ち悪いんですよね。「ダメならダメでいいじゃない」と僕は思うんです。この先の自分がどうこうなんて気にしていたら、創作なんてできないですよ。そういうのを手放した時に書いているものが一番おもしろい。

 

 

依頼があれば舞台脚本も


─最近は原作者である漫画家さんや小説家さんが、アニメ脚本を書く機会も増えています。この点いかがお考えでしょうか?


子安 原作からすれば「自分で書きたい」、「勝手に変えられて嫌だ」というのがあると思います。一方で、アニメのノウハウというのもあるので、脚本家はまかせてほしい。僕はどっちもやっているので、どっちの気持ちもなんとなくわかります。


─アニメ脚本家に必要な資質能力とは何でしょうか?


子安 何でしょうね・・・。僕は脚本家を選ぶ立場にないので、言えないですね。僕もなんで脚本を書いているのかわからないです。自分で自分を説明できるなんて、うさんくさいじゃないですか。選ぶほうには何かしら選択基準があると思いますので、たぶんプロデューサーさんなり、監督さんなりに聞いたほうがいいと思いますよ。


─今後挑戦されたいことは?舞台脚本などにご興味は?


子安 依頼があればやりたいと思います。


─監督はいかがでしょう?


子安 画の技術がまったくないので、今からは無理です。書きものだけですね。


─アニメファンの皆さんにメッセージをお願いいたします!


子安 皆さんが観て自由に感じてくれれば、それでいいと思います。こっちが押し付けるものではないんです、絶対に。

 

 

●子安秀明 プロフィール
千葉大学文学部史学科卒業。在学中、ライトノベル雑誌「ザ・スニーカー」に投稿した作品が受賞、その後あかほりさとるさんのマルチコンテンツ制作会社SATZの社員となる。「夜明け前より瑠璃色な」(2006)、「みなみけ」(2007)、「ゆるゆり」(2011~12)、「干物妹!うまるちゃん」(2015)、「ガヴリールドロップアウト」(2017)など、数々の名作アニメの脚本を執筆。「ぬらりひょんの孫〜千年魔京〜」(2011)、「GJ部」(2013)、「三者三葉」(2016)ではシリーズ構成を務め、脚本も全話担当した。このほかドラマCD、漫画、小説といった分野でも活躍。2015年には自身のライトノベル「ランス・アンド・マスクス」がアニメ化され、原作者としてだけでなく、シリーズ構成・脚本としても作品づくりに関わった。

 

※TVアニメ「夜明け前より瑠璃色な」 公式サイト
http://www.tbs.co.jp/yoakena/

※TVアニメ「ぬらりひょんの孫~千年魔京~」 公式サイト
http://www.nuramago.jp/

※TVアニメ「GJ部」 公式サイト
http://www.ntv.co.jp/gj/

※TVアニメ「三者三葉」 公式サイト
http://sansyasanyou.com/

※TVアニメ「ガヴリールドロップアウト」公式サイト
http://gabdro.com/

※TVアニメ「ランス・アンド・マスクス」 公式サイト
http://www.tbs.co.jp/anime/lance/

※「ランス・アンド・マスクス」 公式サイト
http://lanceandmasques.jp/

※子安秀明 ツイッター
https://twitter.com/koyasumi111


(取材・文:crepuscular)

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