それは愛の物語! 幾原監督&三石琴乃さんが登壇。劇場版「美少女戦士セーラームーンR」応援上映&スペシャルゲストトーク

2017年07月28日 18:240

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愛と恋の違いを知る物語

 

ここでMCの「なぜ花をモチーフにしたのか?」という問いから、話題は劇場版のテーマに。テレビシリーズの「セーラームーン」は、花がよく画面にちりばめられていたが、監督は「その意味を劇場版のテーマにできないか」と考えたのだという。そして、「結論から言うと、花は『愛』だと思った」のだそう。うさぎたちに敵対するフィオレが、かつて衛(うさぎの恋人であり、タキシード仮面の正体)から愛をもらったというところから物語は始まる。だが、実はフィオレ自身は愛とはなにかを理解しておらず、恋を愛だと誤解している。そんな彼が愛を体現するうさぎの姿を見るうちに、真の愛というものを知っていく……。

 

のちの「ピングドラム」にも通じる深遠なテーマに、「ちびっこ向けの映画でしたよね?」と思わずツッコミを入れる三石さん。対する監督は、もちろん子供向けに作っているとキッパリ断言。子ども向けだからと甘く見て作ったか、大人の作り手が本気で情熱を傾けた作品かは子供に伝わると述べ、「小学生の女の子が『いつものセーラームーンでしょ』と見に行ったらびっくりするような体験をさせたいと思ったんです」と語った。

 

作り手の本気の熱みたいなものをちゃんと子供にぶつけたいと思ったという幾原監督。熱といえば「バトルシーンの迫力がすごかった」というMCの言葉に、ちょっとした裏話が飛び出す。当時、制作までの過程において、上層部は「女児向け劇場版アニメ」の意義、ひいては女児向けアニメ自体の魅力をなかなか理解してくれず、監督は何度も「セーラームーン」という作品の面白さを説明しなければならなかったそう。そこでたとえとして使ったのが、「男の子にとっての仮面ライダーみたいなもの」という言葉だったとか。

 

テレビシリーズのバトルは必殺技のバンクシーンが中心だったが、劇場版は秀逸なアクションシーンが充実している。そこには「女児向けアニメの魅力がいまいちピンとこない人々に対しても応えたいという気持ちが表れたのかもしれない」と監督。セーラー戦士の必殺技を惜しみなく使いつつ、激しく展開する肉弾戦や連携アクション。テレビと違うスピード感やスケール感を出し、“劇場版でしかできないこと”を狙っていったという。

 

また、バトル以外にも、劇場版にはテレビではできない“遊び”が盛り込まれている。三石さんも印象に残ったとあげたのが、序盤のコミカルなパート。気を失ったうさぎを起こすため、ちびうさがうさぎの鼻にこよりを詰め、さらに口をふさぐという、約20秒にわたる「無音シーン」だ。「オヤジみたいに鼻のこよりを飛ばすんですよね(笑)。実際に鼻を止めながら台詞を言ってました」と話す三石さん。監督は「(20秒の無音なんて)テレビだと放送事故。映画じゃないと絶対やれないことをやろうという、ただただエゴです!」と笑っていた。

 

こうして挑戦に挑戦を重ねてできあがった「劇場版R」。社内試写での反応なども披露された。

試写の前、幾原監督は絶対怒られると思っていたそうなのだが、予想に反してえらい方々の反応は上々。意外に褒められて驚いたとか。ところが監督自身は「(いろいろ詰め込みすぎて)途中でめろめろになってしまってて、客観的に視聴できなかった」のだという。

 

曰く、あれもこれもとやった結果、目指すところに行きついてないんじゃないかという気がしてきてしまったそう。「いまだに客観的には見られないですね。照れくさいってのもあって」という、ある意味での衝撃発言に、三石さんは「えっ、ちゃんと見てないの!?」と驚愕。「見たらいいのにー! 早くしないと死んじゃうよ(笑)?」と急かし、場内の笑いを誘った。

 

そのように今でも監督が冷静に見られないという「劇場版R」だが、そこをあえて今回の応援上映イベントに登壇したのは、「当時セーラームーンに携わっていたスタッフの熱気を伝えたかったから」だという。

 

当時のメンバーといえば、たとえば劇場版の助監督をつとめていたのは、のちに「美少女戦士セーラームーンセーラースターズ」「STAR DRIVER 輝きのタクト」「文豪ストレイドッグス」の監督を務めることとなる五十嵐卓哉さん。セーラー戦士の必殺技の原画を担当したのは「ウテナ」のキャラクターデザインでも知られる長谷川眞也さん。ほかにも豪華なスタッフ陣の名前が並ぶ。こうした、そうそうたるアニメーターたちが、みんな「この作品をなんとかしたい!」と思ってくれていたのだと監督は言う。

 

以前の幾原監督は、つい自分のつらさに目が行きがちだったそうだが、今ではそんなつらい中でやり切れたのは、スタッフが頑張ってくれたからだと思うと発言。「今のアニメ技術を知っている目の肥えた人たちがどう見るかはわからないけど、スタッフが愛を持っているのは伝わると思いますね」と、改めて当時の制作陣の熱意に太鼓判を押した。

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美少女戦士セーラームーンR

美少女戦士セーラームーンR

放送日: 1993年3月6日~1994年3月12日   制作会社: 東映アニメーション
キャスト: 三石琴乃、久川綾、富沢美智恵、篠原恵美、深見梨加、古谷徹、土井美加、潘恵子、高戸靖広、緑川光、冬馬由美、荒木香衣、川島千代子、丸山詠二、塩沢兼人、高木渉、カシワクラツトム、小山茉美、緒方恵美、平松晶子、天野由梨、山崎和佳奈
(C) 武内直子・PNP・テレビ朝日・東映アニメーション

劇場版 美少女戦士セーラームーンR

劇場版 美少女戦士セーラームーンR

上映開始日: 1993年12月5日   制作会社: 東映アニメーション
(C) 武内直子・PNP・東映アニメーション

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