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「ヤマトらしさ」を大切にしたCG作画
──序盤の艦隊戦は華々しくて重厚感あふれる仕上がりでしたが、お2人のこだわりが反映されたんでしょうか。
羽原 宇宙空間ではありますが、「大きいものの重さ」を出したいなという意識があったので。たとえば(戦艦が)ターンするとかは、はじめ絵コンテ上では6秒程度にしたんですが、実際に映像にするとちょっと早い感じがして。じゃあ12秒にしちゃおうか、とドンドン増やしていった結果、いろいろと削らなければいけない部分が出てきてしまいまして。シナリオ上ではあったガミラス側の描写や、ガトランティスの大戦艦のコクピット内とかも、ぜんぶ外さざるを得なくなってしまいましたね。もったいなかったのですが、結果的に「古代進の物語」にできたと思います。
――大艦隊戦というと重厚なイメージなので、スピーディーに動かしてもまずいと。
福井 本当のリアリズムという意味で言うと、宇宙は空気もないわけだから、質量に見合うだけのエンジンを積んでいたら、戦闘機みたいに飛んじゃってもいいわけです。けれど、それをやったら全然「ヤマト」っぽくない。その「ヤマト」っぽいというのは、そういうことを考えず感覚で作っていた当時の絵面ですね。そのイメージを再現できる環境はちゃんと整えてやっていこう、という意図は当初からありました。だけど、その絵作りは時間がかかるというのは計算外で、最初にコンテが上がってきてやっとわかったぐらいです。やっぱり「ガンダム」の間合いでやったら収まらないなというのがよくわかりました。「ガンダム」の場合、戦闘シーンは逆に尺が削れるところなんですよ。
──「ガンダム」は戦闘がスピーディーで、「ヤマト」とは対極ですよね。
羽原 「ヤマト」は戦闘シーンが膨大になっちゃうという。
――地球とガミラス、ガトランティス軍が激突するすさまじい物量が表現できたのは、現代のCG技術があればこそと。
羽原 そうですね。手描きだったら今でもまだ1話作ってる最中ですね(笑)。もしかしたら、まだ「2199」を作ってるかもしれない。
――最新のCG技術で艦隊戦の物量を作画しているいっぽうで、ガトランティスの火焔直撃砲に対してガミラス艦が「巨大な盾(ガミラス臣民の壁)を構える」というビジュアルは「ヤマト」らしいですね。
羽原 あれは副監督の小林誠さんの発想ですね、びっくりしますよね。
――CGは多くのオブジェクトを効率的に動かすのは得意ですが、「2202」の艦隊戦ではケレン味のある迫力のカットも多いですよね。
羽原 艦船のサイズに関しても、カットによって変えてますからね。ガトランティスの大戦艦も倍にして、デカいものとして認識させようとしてます。「2199」ではサイズはきちっとやっていたんですけど、自分が担当した19話でドメラーズIII世(ドメルの専用艦)の大きさがうまく出なかったんですよ。どうして出ないかなと考えると、やっぱり手描き作画で描くときはサイズの対比とか嘘ついて表現しちゃうんですよ。それを取り入れようと思って、CGスタッフにお願いして、カットによってサイズも、縦横比すら違う作画をやってるんです。
――CGと言っても手間がかかっていると。
羽原 そうですね。結局は手作業ですね。
福井 メカは「今時はこういうのも出るよね」と新しいものも出つつ、昔のおなじみのものも出つつという感じですね。
羽原 やっぱり「ヤマト」らしさですかね。たとえばコスモタイガーIIも通常版のほかに「バージョンK」を作ってみたりして。他の作品でやってない、新しいことをやりたいなと。
――「バージョンK」のKは、往年の天才アニメーター・金田伊功さん(2009年逝去)の「K」ですね。機首や翼端が微妙に下がっていて、独特のパース(遠近感)が付いているという。
羽原 「2202」をやることが決まったときから「やりたいな」とずっと思っていたんです。ただのわがままですけど、かつての「ヤマト」のよさって、やっぱり作画のケレン味の部分が非常に大きかったので、そこは大事にしていきたいなと思っていました。
――重厚な艦隊戦が繰り広げられる中で、古代が艦長を務める「ゆうなぎ」だけ動きが軽快でしたね。
羽原 そこは「2199」の冒頭でも、(古代の兄の)古代守が艦長だった「ユキカゼ」がそういう感じだったこともあって、「兄弟」な感じを入れたかったんです。
福井 古代は戦闘機乗りなので、戦闘機のように艦を動かすという。
羽原 コスモゼロの名手ですからね。
――ガトランティスの大戦艦が地球に特攻しようとしたところで、古代の「ゆうなぎ」が押し上げようとするシーンはたぎりました。
福井 男は大きいものが落ちてくると押し返したくなるのかもしれませんね。
羽原 大戦艦を押し上げてるのは、小林さんのイメージボードでもありましたね。