「劇場版 魔法科高校の劣等生 星を呼ぶ少女」吉田りさこ監督インタビュー 「魔法科らしさ」はどこに宿るのか?

2017年06月23日 19:000
(C) 2016 佐島 勤/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/劇場版魔法科高校製作委員会

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「魔法科らしさ」をどう描くのか?


── 劇場版は原作者の佐島勤さんが原案を手がけました。シナリオの打ち合わせはどのように進んでいきましたか?

吉田 佐島先生の原案はかなり完成した状態だったので、私は先生が作り上げた物語をどう映像化するかに専念できました。脚本の中本(宗応)さんを交えてストーリーの細部を詰めていきました。大切にしたのは九亜が残してきた8人に思いを馳せるシーンです。九亜は達也たちの感情を見せる鍵になる存在なので、彼女を丁寧に描けば自然とストーリーが立ち上がってくるだろうと思ったんです。達也と深雪の感情を見せるひとつのキーポイントになってくるので、九亜の心の動きをきちんと描きたかったことも理由のひとつです。

── 基地から逃げ出した九亜がクッキーを食べる場面が印象に残りました。初めて美味しいものを食べたよろこびと、仲間たちを心配する気持ちが伝わってきました。クッキーの枚数が9枚であることも象徴的でしたね。

吉田 円形に並べた9枚のクッキーを食べると、円が欠けて8枚になってしまう。それが仲間たちを残してきた九亜の心情に重なるように見えるシーンになっていれば嬉しいです。

── コンテ作業はどのように進んでいきましたか?

吉田 バトルシーンはテレビシリーズでアクション作監をされていた岩瀧(智)さんと、CADデザインのジミー(・ストーン)さんにお願いしました。お二人ともテレビシリーズで「魔法科」の世界観を作っていらしたメインスタッフでしたので、安心してお任せできました。お伝えしたのはテレビ以上に派手な魔法が炸裂することぐらいです(笑)。私は日常パート中心に全体の半分ほどの約700カットを担当しました。


── コンテを描くときはどのようなことを意識するのでしょうか?

吉田 「ここは絶対にこういうふうにしてほしい」という決めのカットは細かな指示を描き込むようにしています。スタッフに伝わりやすいようト書きを増やしたり、思い浮かんだことはできるかぎり伝えて、要所を押さえるように心がけました。たとえば本編に「調整体」という言葉が出てくる場面があります。そのシーンではレオが無意識に反応してしまう姿を入れました。レオのおじいさんは遺伝子操作によって生み出された調整体魔法師なので、レオにも調整体の血が流れているんです。だから彼が「調整体」という言葉を聞いたら、絶対に反応してしまうだろうと思ったんです。そういった本人が意図せずに自然と出てしまうリアクションも漏らさず描くようにしました。

── 細やかな描写が「『魔法科』らしさ」に繋がってくるんですね。

吉田 そうですね。あとほのかは一番女の子らしくて母性がある子なので、九亜に対して一番親身に接しています。だから九亜のそばには、いつもほのかがいるように描きました。お風呂場でほのかが九亜の髪を洗ってあげるシーンは、作画さんの気合も乗っていい場面になったと思っています。お風呂のシーンもただ肌を見せるだけでなく、ストーリー上も意味のある場面になっていると思います。


── ほのかが「女の子にとってのお風呂はね、ただ体を洗うだけじゃなく、きれいになるための準備をするところなんだよ」と語りかけるのも彼女らしいですね。あのセリフは吉田監督が考えたのでしょうか?

吉田 そこは脚本の中本さんだと思います。シナリオを読んだときは「そうだったのか!」と逆に教えられた気分になりました(笑)。

── キャラクターの私服も多彩で、それぞれの性格が反映されています。

吉田 私服に関しては石田さんにお任せしました。劇場版は南の島が舞台なので普段より開放的な服装を意識したそうです。肩がレースで透けていたりフリルが付いていたりと、動かすのが大変なパーツもありましたが、かわいかったのでそのままのデザインでいくことにしました。石田さんには目のアップの描き込みもお願いしています。目は撮影処理も加えたので、スクリーンの大きさに映えるきれいな仕上がりになりました。
とくに九亜は髪の毛で顔が隠れているキャラクターなので、目を出すタイミングについて考えました。色が付いた段階で「まだ出すべきではなかった!」と思い直して、無理を言って直してもらったカットがあります。九亜はとてもかわいい子なのでもっとも効果的なシーンで目を出してあげたかったんです。

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(C) 2013 佐島勤/株式会社KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/魔法科高校製作委員会

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