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「子供向けアニメ」が主流だった中国アニメ事情
――日本のアニメは普通は30分枠ですが、今作は15分枠ですよね。
唐 実は中国では、12分のネットアニメはよくあります。中国のテレビアニメは子供向けが多いですが、10代中盤~20代の人向けのアニメはあまりないんです。2015年くらいからネットアニメがだんだん増えてきたんですが、当時は中国国内でアニメを作れる会社はほとんどなかった。そのタイミングで一気に20~30分のアニメを作ることはできなかったから、最初は5~10分アニメがメインでした。だから、中国の人にとって15分アニメは普通なんです。あとはテンセントさん側で、30分のアニメ×12話を作るより、15分×24話を作るほうが長期間にわたって展開できるという判断がありました。展開期間が長いので、みなさんに知ってもらううえでも効果的だと思います。
――1クールよりも2クールのほうが、多くの人の目に触れやすいですよね。
唐 昔の日本では2クール~1年間のアニメが主でしたが、最近は1クールが多い。我々も1回、この期間を試験的に目指してみようという考えもあって、今の形になりました。
──それで今回はまず15分×12話で1クール、少し間を置いて2クール目を制作という「分割2クール」となったわけですね。「銀の墓守り」はお色気シーンも多めですが、やはり子供向けよりも、年齢層の高めの人に見てもらいたいという狙いが?
唐 中国も日本と同じでアニメ好きな大人は多いですし、20~30代の人向けのアニメを作ろうとする動きはさかんです。あと、中国のネット環境は最近はよくなっていますし、資金を出すスポンサーもありますから、若い人向けの作品も最近は増えています。
――そういうアニメはテレビでも放送されるんですか?
唐 ネットだけです。テレビでは、基本的に若い人向けのアニメはほぼ放送されないですね。
――日本のアニメは「テレビからネットへ」の動きがありますが、中国では逆に「ネットからテレビ」なんですね。ネットを足場にしていた中国アニメが、日本のテレビに進出すると。
唐 そうですね。今の中国では、20代の人達がテレビでアニメを見る習慣はあまりないです。私が10代の頃に、中国でも「スラムダンク」や「名探偵コナン」が放送されていて、当時の人達はテレビでアニメを見てました。でも、その後は子供向けのものが多くなって、だんだんネットに移動したという感じです。
――テレビアニメは子供向けにシフトしたということは、「若者向けはテレビ放送しにくい」という事情があったと思います。「銀の墓守り」は女性キャラクターの露出も高かったりしますが、ネット配信に当たって難しいことはありました?
唐 テレビよりネットのほうが、ちょっと規制がゆるいです。あと、日本と中国はルールが違っていて、たまに日本で放送できないものが中国で大丈夫なケースもあるんです。たとえば「進撃の巨人」は、中国で配信できません。でも、たまに、日本の深夜アニメでも放送できないこともある「腕を斬る」表現などは、中国では特に問題なかったりします。
――ポリティカルな要素は厳しいが、絵的な表現には寛容なんですね。「銀の墓守り」はそういう国境を超えて、日中の若者が「これは自分たちのことだ」と重ねやすい作品だと思います。最初から「いい意味で無国籍の、みんなで楽しめるものにしよう」という意識があったんでしょうか?
唐 その通りです。弊社の社長も、プロデューサーの自分も、国籍と関係なく全世界で見てもらえて、共感を呼べるものを作りたいと思っていました。