アニメ業界ウォッチング第33回：吉田健一が語る「キャラクターデザイン」に求められる能力

2017年05月28日 12:000

アニメ業界ウォッチング

企画記事

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単に「絵がうまい」にも、いろいろある

── 吉田さんがキャラクターデザインに興味をもった最初のキッカケは、何だったのですか？

吉田　近藤勝也さんのデザインが、とても好きだったんですよ。近藤さんがキャラクターデザインを担当した「魔女の宅急便」（1989年）は、ジブリアニメの中でも色彩設計や作画の精度がもっとも高度な作品だったと思います。井上俊之さんなど、外部から来たスタッフもたくさんいたし、乗りに乗っていた時期の作品ですよね。

── 近藤勝也さんのキャラクターデザインは、どこがよかったですか？

吉田　都会的というか、スタイリッシュでしたね。探るような感じではなく、かつての宮崎駿さんのように線にウワッと勢いがあった。僕とそんなに歳も離れてないし、ぜひ近くで近藤さんの絵を見たいと思いました。それで、ジブリに入社したんです。

── 近藤さん以外で、ジブリのキャラクターデザイナーで注目していた人は？

吉田　デザイナーとして上手だと思ったのは……宮崎駿さんですよ（笑）。「On Your Mark」（1995年）という短編があったでしょう？　当初、僕と小西賢一さんと笹木信作さん、芳尾英明さんの4人でボードを描いてみろと言われたんですけど、最終的に「お前らじゃダメだ、俺がやる！」と、宮崎さんがやることになるんです（笑）。僕も主役のCHAGEとASKAをキャラクターを描きましたけど、「こんなカッコいい絵を描くな」と怒られました。その後、宮崎さんの描いたCHAGEとASKAを見たとき、「なんだよ、『ルパン三世』じゃん？」と思ったんですけど、そんな記号的なとらえ方より、「なぜ、このデザインになったのか」を考えることが重要だった。ASKAがちょっとカッコよくて、CHAGEがくだけた感じで、よくある定型のデザインではあるんだけど、キャラクター性そのものが、デザインになっている。内面的なことも含めて、絵として表面に出てきているんですよ。
だいぶ後になって、安田朗さんの絵を見たとき、宮崎さんと同じように、キャラクターの内面を表面のデザインに落とし込んでいると気づきました。宮崎さんはアニメーターだから、雰囲気のある絵、いいたたずまいの絵を描くので、それによってごまかされてしまう部分もあるんです。だけど、ゲーム出身の安田さんたちは、立ちポーズの中にキャラクターの人生観、人間性が出るようにデザインしている。そこに気がついたんです。「キングゲイナー」のときに安田さんといろいろ話してみて、「だったら、僕もキャラクターデザインをやりたいな」と意識するようになったんです。

── そこへ、ちょうど「エウレカセブン」の話が来たわけですね。

吉田　だけど、最初の主要メンバー数人をデザインしたところで、アイデアが尽きてしまいました。困っているとき、コヤマシゲトくんと出会ったんです。コヤマくんからデザインのことを教えてもらったし、僕からはアニメーターとしてどうしても譲れない部分を伝えたし、早い時期に安田さんのような才能のある人に出会えたのもよかったし、単に「絵がうまい」にも、いろいろあるんだなと思いました。それぞれ、使っている脳みそが違うという感じですね。