まずは選出した楽曲の全体的な印象は、打ち込みではなくバンドサウンドの楽曲が多くなりました。アレンジ面でも昭和テイストな王道アイドルソングからスカコア、プログレ、フォーキーな楽曲まで、バリエーション豊富にバンドサウンドの面白さが凝縮されています。
そんな中、打ち込み主体の「アイカツスターズ!」OP「STARDOM!」は、楽曲を彩るオーケストラ(管楽器やストリングスなど)の支配力が抜群で、きらびやかなステージに荘厳さを添えています。
作曲は現在の邦楽シーンの多くの楽曲を手がける蔦谷好位置(つたやこういち)氏。個人的に蔦谷氏の魅力と言えば、メロディの起伏に切なさが隠されている点。楽しくてテンションが高くても、どこかもの悲しさと言うか、胸の途中で「クッ」と引っかかるポイントが隠されているのがたまりません。そのポイントがあるから、私たちは歌い踊る彼女達の姿にエールを送りたくなるのです。
女の子がたくさん登場するアニメ作品つながりで、「アイドルマスター シンデレラガールズ劇場」ED「キラッ!満開スマイル」の楽曲について。
支配力のあるストリングスが印象的ですが、アイカツはきらびやかなステージを彷彿とさせるのに対し、今楽曲はきらびやかさとは真逆の「お茶の間感」が特徴です。もう少し分析すると、70年代から80年代の歌謡曲の手触り。肩の力が適度に抜けた人懐っこいメロディラインは、アニメ作品の世界観との橋渡しも完璧で、この雰囲気は「家族で安心して楽しめるアニメソング」と言っても過言ではないでしょう。
ここ最近、よく耳にするのがスカコア調のアレンジ。個人的な主観ですが、ベースを弾いている人間からするとスカコアの曲は非常に大好物でありまして、今期では、「エロマンガ先生」ED「adrenaline!!!」、「パンパカパンツ おNEWさん」OP「パンタスティック!」を選出。ベースラインが抜群にカッコいい!ホーン隊を揃えてバンドで演奏するとすごく楽しそうですね。
ベーシスト視点で言うと、「adrenaline!!!」はフレージングはそれほど派手ではありませんが、オーソドックスな16分音符の刻みが曲をグイグイ引っ張る疾走感になっていて、これぞベースだ!という存在感。「パンタスティック!」はドンシャリな音色でゴリゴリ弾きまくるスカコア特有の高速ランニングフレーズと、サビでのかゆい所に手が届きまくる合いの手フレーズが最高。曲のテンション感も高く、盛り上がること間違いなしの楽曲ですし、個人的にこの曲コピーしてバンドでやりたい、という気持ちです。
バンド全体で圧倒的な手数が繰り広げられて、さしずめ音の波状攻撃のように展開される楽曲は、「フレームアームズ・ガールズ」ED「FULLSCRATCH LOVE」です。
聴いた時にビックリしました。手数多過ぎてリズム隊死んじゃうわ!レベル。Aメロのドラムのフレーズ、随所でグネグネうねるベースライン、もはや変態の域に到達しています。ともすれば曲が破綻しかねないドラム、ベースのフレーズの接着剤になっているのがギターとピアノです。曲の前面に配置されることの多いギター、ピアノが縁の下の力持ちポジションになっています。すべての楽器が完全に役割分担されていて、そのバランスが絶妙な均衡を保っているスリリングな楽曲です。