映画「BLAME!」公開記念インタビュー! 第2回「BLAME!」のサウンドにおけるキーマン瀬下監督、吉平副監督、岩浪音響監督インタビュー!

2017年05月18日 19:000

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── では、ここからは音響についてのお話もお聞きかせください。まず、声優の演技については、プレスコ(映像よりも先に演技のセリフを収録する)によって行われたそうですが。

瀬下 はい。そのため、岩浪音響監督はもちろん、弐瓶先生も含めてさまざまな検討をしていただき、ひと言ひと言のセリフを巧みに作り上げていただきました。特に霧亥(キリイ)のセリフについては、かなりのこだわりを盛り込んでいます。多分、岩浪音響監督としては、ちょっぴり面倒くさい要望だったんじゃないかなと思います(笑)。

岩浪音響監督(以下、岩浪) すべてのセリフを合わせてもペラ1枚あるかないかで、大の大人が何人も集まってああすればよいのでは、こうすればよいかもと散々言い合った後、霧亥役の櫻井孝宏さんのセリフを聞いて「うん、これこれ」と大喜びしていたわけですから、そりゃもう(笑)。今回の作品には「シドニアの騎士」出演声優はそれほど多くはなかったのですが、想像力に長けた演者の方々に集まってもらえたおかげで、素晴らしい内容になったと思います。実際、収録作業はとてもスムーズに進行しました。

吉平 台詞の量に反して感情の情報量は、とても多くなっていると思います。また、霧亥役の櫻井孝宏さんもそうですが、づる役の雨宮天さんも素晴らしかった。づるというキャラクターの本質を捉え、感情を動かされる素晴らしい表現をしていただけたと思います。あと、セーフガード“サナカン”役の早見沙織さんにも注目ですね。

岩浪 はい、彼女の演技も素晴らしかった。無感情でありながらも、ほんの少しだけ憎しみが混ざっているような絶妙な表現は、彼女ならでは。それが映像と合わさると、素晴らしい表現になっています。他の出演者も含め、プレスコ収録という手法のメリットが大いに生かされた作品になったと思います。


瀬下 今回のプレスコ収録では、頭の中に思い描いていたものが、思った通りに、いや、それ以上のものになって作り上げられていく様子が体験できて、作品に携わった1人としてとても楽しかったです。「BLAME!」という作品自体がプレスコという手法にあっていたこともあるのでしょうが、それ以上に、ドラマを音から作り上げていく制作スタイルのアドバンテージを確立できたようにも感じました。

── いっぽうで、菅野祐悟さんの音楽も印象的でした。

瀬下 霧亥のセリフは本当に少ないので、感情表現の一端を担ってくれたのが菅野祐悟さんの劇伴でした。セリフがないのに見事に感情を表現できたのは、彼の音楽があってこそです。「BLAME!」という作品において、重要な要素のひとつとなっています。

岩浪 彼の音楽は、構成も表現も素晴らしく、音を聴いただけで映像が浮かんでくるような、印象的なサウンドを作り上げてくれるんです。そういった意味では、日本の作曲家の中でも世界に十分通じる、数少ない逸材なのではないでしょうか。実は、彼との作品的な付き合いは「サイコパス」からなのですが、「ジョジョ」や「亜人」など、ここぞというタイトルでお願いしてきたんです。なので、今回の「BLAME!」の話を聞いた時も真っ先に彼の姿が思い浮かびました。

吉平 メロディで感情を語ってくれる、あの音楽がどうしても欲しかったんです。セリフ、少ないので(笑)。

岩浪 ハリウッドも含め、いまのアクション映画の音楽は、速いリズムとリフでテンションを保ち続けるような楽曲が主流となっているのですが、いち映画ファン、映画音楽としては不満があったんです。その映画なりの強烈なメロディが欲しいと思っていたんです。今回、菅野祐悟さんにお願いすることで、印象的な音楽をいくつも生み出していただけたと思います。

瀬下 霧亥のテーマに関しては、菅野さんに、尊敬するセルジオ・レオーネ監督に捧ぐ(なぜSFで!?と監督ご自身が突っ込んでいました)マカロニ・ウェスタンよろしく「口笛で吹けるような音楽が欲しい」とリクエストしたのですが、来たデモが本当に口笛で吹かれていて、我ながらちょっとやり過ぎてしまったなと(笑)。で、今のアレンジとなったわけですが、いちど聴いたら覚えてしまいそうな印象的なメロディになっていますので、ぜひ気にして聴いてみてください。

吉平 僕らはデモ版のイメージが根付いてしまって、よく口笛で吹いています(笑)。いつかどこかで、その格好良いデモバージョンの方もお披露目できるといいのですが。


── さて、「BLAME!」はドルビーアトモス上映が予定されていることにも注目が集まっています。

瀬下 「BLAME!」はストーリーもされことながら世界観そのものに魅力があります。そういった世界は、映像だけでは作り上げられるものではなく、サウンドも重要になっています。映像と音が一体となることで、「BLAME!」の世界観を豊かに表現できたと自負しています。

吉平 もちろん映像に対するこだわりは強く込めてありますがすぐれた音響のおかげで、映像だけでは描ききれない空間のリアルさをお届けできると思います。

岩浪 今回の作品のサウンドは、セリフと音楽を聴きながら全体のサウンドを作り上げているんです。そういった点で、すべてがスムーズに繋がって、ひとつのサウンドフィールドを作り上げることができたと思います。特にこの「BLAME!」は、閉鎖された空間で展開するドラマなので、舞台の広さや狭さを表現するのに、サウンドは重要なファクターとなっています。そういった部分を、ドルビーアトモスは巧みに表現できる素晴らしいフォーマットなので、ぜひ皆さん、映画館で体験してほしいですね。



次のページでは、岩浪音響監督による、「BLAME!」劇場調整の様子をレポート!

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  • 岩浪美和音響監督

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