【犬も歩けばアニメに当たる。第28回】「NARUTO -ナルト- 疾風伝」完結! 原作の最後まで走りとおした14年半

2017年04月01日 12:000
(C) 岸本斉史 スコット/集英社・テレビ東京・ぴえろ (C) 劇場版NARUTO製作委員会 2012

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今回は、2017年3月23日に放送終了した「NARUTO -ナルト- 疾風伝」(前シリーズ「NARUTO -ナルト-」を含むシリーズ。以下「NARUTO」)です。

2002年10月に「NARUTO -ナルト-」の放送がスタート。続いて2007年2月から放送された「NARUTO -ナルト- 疾風伝」と合わせると、約14年半、全720話になりました。ひとりの主人公の戦いと成長を追うストーリーアニメとしては、記録的な長さです。

コミック全72巻におよぶ原作エピソードを、最後までアニメ化。平行して、テレビアニメ放送中に、劇場版11作品も制作されました(2015年制作「BORUTO-NARUTO THE MOVIE-」を含む)。

10歳の頃に見始めた子どもが大人になるには十分な年月です。昔からこの作品のファンで、ニュースで完結を知った人もいるかもしれませんね。

放送スタート時からの流れを知る筆者が、改めてこの作品の魅力を振り返ります。


新時代の忍者アクションを楽しむ大活劇


週刊少年ジャンプ連載のコミック「NARUTO -ナルト-」がアニメ化されると知ったとき、「そういえば忍者アニメって最近なかったかも。でも忍者って、今の子どもたちに受けるかな?」と思ったのを覚えている。

心配無用。アニメになった「NARUTO -ナルト-」は、新しいヒーローとしてのファンタジーな忍者観を新たに作り出した。

能力の根幹となるのは、誰もが体内に持っている「チャクラ」。それを子供の頃から学び、引き出し、鍛え上げることで、能力が使えるようになる。ナルトが暮らす木の葉隠れの里にはアカデミーがあり、小さい頃から子どもたちはアカデミーに通って、集団の中で切磋琢磨して成長していく。

「NARUTO」の忍のアクションは、主に肉弾戦でぶつかりあう体術と、自然のエネルギーを駆使した忍術とに分けられる。

どちらも非常にアニメ映えし、見応えがある。色と動きがつくと、肉体の実感がともない、迫力満点。そこに声がついて、怒りや絶望といった感情が乗る。「NARUTO」では「神作画回」といわれるすぐれたアクション描写の回がたびたび登場した。

作品の序盤で、伝説の作画回となったのが、30話「蘇れ写輪眼!必殺・火遁龍火の術!」。うちはサスケ少年と初登場した大蛇丸(おろちまる)の戦いだ。

ナルトの犠牲で心に火がついたサスケは、小さな身体で凶悪な敵と1対1で戦う。すぐれた体術で丁々発止渡り合い、ワイヤーや爆薬といった小道具を駆使して動きを封じ、炎の忍術でダメージを与える。普段はクールなサスケが、才能の片鱗を見せながら、体術と忍術の限りをつくす奮闘ぶりに圧倒され、ただただ見入った。


痛みと憎しみの連鎖は止められるのか? 主人公うずまきナルトの歩み


孤独でやんちゃな少年の成長物語としてスタートしたこの作品は、最終的に、木の葉隠れの里の誕生以来の歴史に関わる大河ドラマとなった。

戦争や災厄により、死者が出る。家族や残されたものは、悲しみ、憎み、恨みがつのる。その思いは受け継がれ、陰謀や復讐戦につながる。それがまた、新たな世代の犠牲と痛みを生む。

この痛みの連鎖をどうしたら止められるのか。そもそも止めることはできるのか。ただ敵を倒せばいいという問題ではない。現実の世界にも通じる重いテーマに対して、一個の人間である主人公ができることは、なんなのか。

難しいテーマを体現したのが、主人公・うずまきナルトだった。

物語の冒頭で、両親がなく、身体に里を壊滅させた尾獣の「九尾」を封印されたナルトには、愛し、信じてくれる大人がいない。叱責でもいいからかまってほしくて、ナルトはイタズラをしまくり、さらにひんしゅくをかう。

どうしようもない寂しさ、つらさを救ってくれたのは、アカデミー(忍者養成学校)の教師、うみのイルカ先生の信頼だった。人は愛し信頼されて初めて、自分に自信を持ち、人を愛することができる。ナルトもイルカに信頼されて初めて、里に居場所を得る。

このナルトの原点は、「NARUTO -ナルト- 疾風伝」最終回にも反映された。すべてはここから始まったんだと、ナルトとイルカの対話に懐かしい思いが湧いた。

また、ナルトのもうひとつの軸となるのが「第七班」の人間関係だ。アカデミーで、はたけカカシ率いる第七班に組み込まれたナルトは、うちはサスケ、春野サクラと三人一組(スリーマンセル)のチームを組む。この第七班が、ナルトにとって家族にもひとしい意味を持つことになる。

サスケはナルトにとって、対立しいがみあいつつも、心中ひそかに憧れるライバル。サクラは、好きな女の子であり、大切な仲間。しかし、サクラが好きな相手はサスケ。この3人のバランスを、指導者のカカシが見守る。

子どもらしく微笑ましくもあるこの関係性が、成長するに従って変わっていくところ、そして変わらないところが、ストーリーの大きなテーマのひとつだ。

実の兄の手によって、うちは一族が全滅した悲劇を背負うサスケは、葛藤と決意を抱き、木の葉隠れの里を抜ける。里の裏切り者となったサスケを、ナルトとサクラは討たねばならなくなる。

だがそればどうしてもできない。サクラに涙で頼まれ、また自分自身の決意もあって、ナルトはサスケを取り戻すことを決意する。


決着! ナルトとサスケ、ふたりの物語


暗躍する謎の組織「暁」との戦い、暁のリーダーであるペインとの戦い、そして5つの里を巻き込む「第四次忍界大戦」の勃発。戦いはどんどんスケールアップし、過去の因縁を明かしながらさまざまな出会いと悲劇を生んでいくが、その裏で、里の裏切り者となったサスケと、ナルトたちの物語もまた進行する。

サスケのための戦いで、里に死者も出た時点で、「もう、サスケが何もなかったように戻ってくることはできないだろう」と、見ているほうは察する。だが、ナルトはあきらめない。

「まっすぐ自分の言葉は曲げねえ……それがオレの忍道だ」

作中に何度となく登場する、ナルトを表すセリフだ。

サスケのことをあきらめて「賢くなれ」と諭されると、「賢いってのがそういうことなら、オレは一生バカでいい」とも、ナルトは言う。

一度思ったことは貫き通す。シンプルにして明快な、ナルトの行動原理は、世界の理不尽や苦渋を知っても、変わらない。変わらないまま、強く成長する。

その迷いのなさ、変わらなさが、苦しい戦いの中で、絶望に沈みかけたたくさんの人の心に希望の火を灯す。愛を知らずに育った我愛羅(ガアラ)、恋人と弟を戦いで失った綱手(つなで)、小国の忍として仲間を失い辛酸をなめたペイン、弟に真実を隠しつづけたうちはイタチ、憎しみを募らせた九尾の九喇嘛(クラマ)……。

だからこそ、長い長い戦いの物語のクライマックスは、ナルトとサスケの一騎討ちだった。里の起源にさかのぼるすべての因縁を内包しつつ、極めて個人的な思いをかけた命がけの戦いが、すべての決着となった。

原作コミック最終巻近くのクライマックスをアニメで見のがした方は、2017年5月〜6月にDVDがリリースされる「ナルトとサスケの章」(690~699話)をチェックしてほしい。原作最終巻のエピソードは、この699話までで描かれている。



アニメ「NARUTO」が広げた世界。14年半に「ありがとう」


アニメは14年半の放送で、全720話。ほぼ毎週放送されている(特別番組などで休止の週がある分は、2話分を放送するスペシャルで回収されている)。

原作コミックの連載が15年間だから、同じ長さで、アニメも放送を続けたことになる。原作の連載と同時進行で休みなく放送するために、オリジナルエピソードや過去回想話が多数あった。その分、いいところでなかなか話が進まず、じれったく感じたファンもいるだろう。

だがその分、アニメで世界観が大きく広がった。原作には描かれていないストーリーのすきまや、未登場の地域の話、後になって真実が判明した事件の裏側などが、オリジナルエピソードで描かれた。尾獣を封印された人柱力のウタカタやフウなど、原作ではくわしく語られない人物のエピソードも、アニメでは見ることができた。

本編とは別に、スタッフの遊び心から生まれたようなコーナーもある、一尾から九尾の尾獣たちと人柱力が勢ぞろいする「尾獣(びじゅう)数え唄」は忘れがたい。ちびキャラのナルトや我愛羅たちと、子どものころ(!?)のかわいい尾獣たちが見られる。スペシャルなミニコーナーとして、550話ほかで放送された。

常に新しい視聴者をとりこむための工夫をしつづけてきたアニメから、この作品を知った、見始めたという人もいるだろう。「NARUTO -ナルト-」がここまでの人気作となったのは、アニメの力も大きい。

愚かで頑固な子どもの思いを持ったまま、ナルトはあまたの戦いを越えて、「里の人間に認められたい」という願いをかなえ、かけがえのない第七班への思いも貫きとおす。

細部まで組み立てられたシリアスな大河ドラマと、本来のターゲットである子ども向けのテーマが絶妙なバランスで両立している。残酷な現実と向かい合いながら、純粋な思いを失わずに痛みを受け止め、さらにその先を目指す希望がある。そこが大人も感動させるのだろう。

4月からは、新スタッフによる、ナルトの息子のうずまきボルトを主人公とした次世代編「BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS」がスタートする。「NARUTO」という作品は、さらに前人未到の境地に進んでいくことになるわけだが、今はただ、この14年にありがとうと、スタッフ・キャストに伝えたい。


(文・やまゆー)
(C) 岸本斉史 スコット/集英社・テレビ東京・ぴえろ (C) 劇場版NARUTO製作委員会 2012

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