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第2期のサントラの特徴のひとつは、バルカン・ブラスです
── ここからが、第2期のサントラのお話ですが、第1期との違いがあるとしたら、どこでしょうか? 横山 最初はやっぱり迷いました。第1期で50~60曲作った後で、何を変えようかと。そこで目をつけたのはキャラクターたちの変化、成長でした。長井さん、仁さんと打ち合わせしたときにも、鉄華団の「成り上がり感」とか「暴走しそうな危うさ」という言葉が出てきたので、その要素を加えていこうと考えました。具体的に言うと、ブラスを入れようと思ったんですね。しかも、バルカン・ブラス・ミュージックを。
── バルカン・ブラス・ミュージックというのは、どういうものなのでしょう? 横山 バルカン半島のブラス・ミュージックで、ジプシー・ブラスと言ったほうが、イメージが伝わりやすいかもしれませんね。いろいろな戦争に巻き込まれてきたという歴史と、寒い土地柄があって、陽気なラテン・ブラスに対して、バルカン・ブラスには悲壮感があるんです。そこに、鉄華団のイメージと被るところがあるなと。それでまずは、メインテーマにバルカン・ブラスの要素を入れて、ずっと同じフレーズを吹いているという表現にしてみたところから、第2期の作曲作業を始めました。
── メインテーマというと、1曲目の「Crescent Moon - Mobile Suit Gundam : Iron-Blooded Orphans 2」ですね。ここにまず、第1期とは違う音楽の要素が入りこんできたと。 横山 そうですね。それに加えて、第1期の時にはドイツでオーケストラのレコーディングをしたんですけど、今回もどこか外国に行きたいなという思いはずっとあったんです(笑)。バルカン・ブラスを意識した演奏を日本で録ることはもちろんできるかもしれませんが、僕が欲しかったのは、醸し出てくる厳しさといった雰囲気だったので、それが専門の人で録ることが必要だろうと。そこで、いろいろな人に相談していたら、ニューヨークという選択肢が出てきました。
── バルカン半島の国ではなく、ニューヨークに? 横山 バルカン・ミュージックをやっている「スラヴィック・ソウル・パーティ!(Slavic Soul Party!)」というバンドがあって、その人たちに演奏を頼めそうだということになったんです。さらに、「スナーキー・パピー(Snarky Puppy)」という、グラミー賞受賞バンドのメンバーも参加してもらえそうだと。「これは面白いぞ!」ということになって、ニューヨークにレコーディングに行ってきました。
── いきなり、すごい展開ですね。 横山 楽しかったですね。みんなで荒々しい音を出してくれました。大勢でブリブリ吹いている荒々しさが鉄華団と重なるように、決してハッピーなサウンドにならないように、ということを強く意識しました。さらに、「ニューヨーク・ジプシー・オールスターズ(New York Gypsy All Stars)」のクラリネット奏者、イスマイル・ルマノフスキにも参加してもらって。彼はマケドニア出身で、バルカン・ミュージックの印象的な音色の1つであるクラリネットを吹いてもらいました。まさに、聴いたことのないようなクラリネットの演奏をしてくれて。ニューヨークに行く前は、どんな音になるのか予測がつかなくて不安もあったんですけど、行ってみたら、日本では絶対に録れない演奏をしてくれました。日本とニューヨークのどちらがいいか悪いかではなく、違うものが録れたなという感覚がすごくありましたね。第2期のサントラの大きな特徴をあげるとすれば、まずはそこです。
── バルカン・ブラスの要素と、ニューヨークのミュージシャンの参加と。 横山 もちろん日本で録音した部分もありますし、それも重要な要素の1つです。そこに別の要素…血を加えたい、というのが「オルフェンズ」のサントラなんです。第1期はドイツでのオーケストラ、第2期はニューヨークでのバルカン・ブラス。「オルフェンズ」の音楽という世界観は一緒なんですけど、第1期と第2期ではジャンル的にはかなり違っているんです。ここまでいろいろな試みが実現できたTVアニメのサントラは初めてで、貴重な経験をさせていただきました。