『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』伊藤智彦監督 インタビュー スクリプトルームの室長として映画に挑む

2017年02月18日 13:000

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アニプレックス スクリプトルームの第1作目


── TVシリーズの劇場版はこれまでの作品を踏まえたうえで、1本の映画を作るという難しい舵取りが求められます。そのバランスはどのように考えていましたか?

伊藤 一般層を必要以上に意識したわけではありませんが、『ソードアート・オンライン』というタイトルと、キリトとアスナという主人公たちの名前さえ知っていれば楽しめる作品を目指しました。もちろん、せっかく映画を作るのですから、劇場版で初めてシリーズに触れた人もファンになってもらえれば願ってもない話です。 そしてそれ以上に今までシリーズを見てくれたファンに楽しんでもらいたいという思いが強かったですね。ただファンサービスに多くの時間を割いてしまうと、作品の流れが不自然になってしまう。見ている人に疑問が生まれる余裕さえ与えないように、とくにアクションは力で押し切るように心がけました。アクションパートのコンテを手がけた鹿間貴裕さんも、畳みかけるような内容にしてほしいというリクエストにうまく応えてくれましたね。

── ファンムービーとしてだけでなく、独立した映画としても力強い作品に仕上がっていました。映画らしさを加えるうえでどこに力を注いだのでしょうか?

伊藤 漠然とした回答になってしまいますが、シナリオの構成なのかなと思っています。やはりキリトとアスナ、2人のドラマを描きたいという気持ちが強かったんです。最初からキリトが戦ってしまうとストーリーが転がっていかないので、彼には途中までストレスを与え続けて、中盤で転換点となる事件が起きる。そして後半では流れを一気に変えようという思惑がありました。なにせ俺はスクリプトルーム(※注)の室長ですから、構成ができないなんて示しがつかない(笑)。
(※注 アニプレックスが社内に設置したアニメシナリオなどのテキストを制作するチーム(http://www.aniplex.co.jp/scriptroom/))


── 2016年9月にスクリプトルームの新設が発表されたときは大きな話題になりました。アメリカ映画の制作手法のように集団でシナリオに取り組むことを目指したのはなぜでしょうか?

伊藤 どんなシナリオでも1人で書けるような天才がいれば何の問題もありませんが、残念ながらそれはまれです。この作品について言えば、俺自身も脚本家としてのキャリアはありませんし、川原先生からは原作者としてのキャラクター性やアイデアをもらいつつ、スクリプトルームのメンバーからもアドバイスをもらい、さらにシナリオ会議で意見をもんで、最終的に俺のほうで脚本の形式に整えて川原先生にフィードバックしてセリフを直してもらいました。

── シナリオ会議にはどんな方が参加されたのでしょうか?

伊藤 川原先生のほか、プロデューサー陣(アニプレックス・柏田真一郎、EGG FIRM・大澤信博、ストレートエッジ・三木一馬、A-1 Pictures・加藤淳…がメインメンバー) が参加して、全員で決定稿まで議論していきました。「出席者は必ず発言をしなければいけない」という方針だったので、傍観することなく全員が闊達に意見をぶつけ合っていましたね。


── どのようなアイデアが出ましたか?

伊藤 1例を挙げると「キャラクターの名前がわかるように、セリフの最初に入れた方がよい」という指摘が出ました。名前を忘れてしまったり、この劇場版でシリーズを初めて見たりする人もいますからね。アスナが「キリト君は……」とまず名前で呼びかけるのは、それが理由です。そのほか、ストーリーだけでなく構成のわかりやすさも含めて話し合いを重ねました。

── エンドロールにはスクリプトルームの名前も表記されていますね。

伊藤 スクリプトルームをクレジットしたのは今回が初めてです。シナリオ会議外でアドバイスをもらっていた村上泉氏をスクリプトルームに招聘したので、『劇場版 ソードアート・オンライン –オーディナル・スケール-』はスクリプトルームの第1作としても見てもらってもいいのかなと思っています。

── 伊藤監督にとっても本作は初めての映画ですね。『時をかける少女』や『サマーウォーズ』では助監督として携わってきましたが、映画初監督の手応えはいかがでしたか?

伊藤 「そもそも映画とは何だろう」という問いかけをずっと繰り返していたんです。それらの作品で監督を務めた細田守さんはTVアニメを手がけているときから映画的な作り方をしていました。でも俺は映画と真剣に向き合ってきたことがありませんでした。その土壌に立つ資格があるのだろうか、どうやって戦うのだろうか、そんな課題が頭の中に渦巻いていましたね。今回はキャラの数が多く、圧縮している面もありますから、ファンサービスと映画らしさを両立させるというせめぎ合いは感じましたね。
作品が完成した今でも客観的には見られないんですよ。「このセリフ、尺が気になるなぁ」とか「このカットは削ったほうがよかったかなぁ」とか、試写でも粗探しをしてしまう。そんな細部が気になるのは俺だけかも知れませんが、どうしても目が行ってしまうんです。やっぱり半年ぐらい経たないと冷静に見られないですね。結果として「映画とは何なのか」という謎の問いだけがまだ残り続けています。


── 余談になりますが、劇中で島根に触れた小ネタが出てきました。アニメファンとしては聴き逃せない発言だと思うのですが……。

伊藤 わかりましたか(笑)。あるキャラクターがアニメファンの持つ島根に対するイメージについてのセリフを口にします。ただ、そのキャラがネタ元になった作品を見ていた設定というわけではなく、そのキャラがネットに入り浸る人で、ネットスラングとして流行っているのを目にして発言したという解釈なんですよ。少し複雑な構造になってしまいましたが、遊び心として入れてみました(笑)。

画像一覧

  • (C) 2016 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/SAO MOVIE Project

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(C) 川原礫/アスキー・メディアワークス/SAO Project

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