――「アトム・ザ・ビギニング」のアイデアを出すにあたって、そういう原作のイメージは意識しましたか?
ゆうき うーん、そういうのは作家自身から出てくるものなんですよね。僕の中には、ああいうちょっとグロテスクなイメージというのはない。だから、自分がアイデアを出す取っ掛かりとしてはやはり天馬とお茶の水の関係性になるだろうと思いました。
――そこがスタート地点なんですね。
ゆうき 若いころの二人ですから、一緒にロボット開発をしている仲間というのが自然な流れだろうし、その2人のキャラクター像がしっかり描ければ、前日談としてはうまくいくだろうと。僕が考えるに、天馬って天才なんだけれど、お茶の水がいないとダメなんですよ。それはお茶の水が世話を焼いているとかそういうことではないんです。天馬がアイデアメーカーとしては抜群なのに対して、お茶の水は、「天馬がやろうとしていることの意味」を察する力が高いんです。天馬は「0を1にする」ことはできる。でも、その1の意味をちゃんと理解して、よりよい形にするのはお茶の水のほうが上。ただお茶の水の中から、天馬のような天才的なアイデアが出てくるわけではない。だから天馬はきっとお茶の水にコンプレックスをもっているんじゃないか……そんなことを考えました。
自らを天才科学者と称する天馬。通常の5年分も飛び級して大学の研究生になっている。
天馬と共にロボット研究をするお茶の水。
――ロボットが登場することは考えていましたか?
ゆうき いえ、僕のアイデアの段階ではもっと2人の学生生活にフォーカスした内容を考えていました。たとえばお茶の水の好きな子を天馬が取っちゃうとか(笑)。だから、A106のようなロボットがメインで登場するということは想定していませんでしたね。「最終回にこんな感じのアトムが登場すればいいんじゃないか」というイメージで、アトムのラフをちょっと描いたぐらいでした。
――最終的に、マンガはカサハラテツロー先生が担当されることになりましたね。
ゆうき カサハラ先生ぐらい描ける人がマンガを担当されるなら、こちらはもう何もいうことがないですよね。なので、第1話のネームを見せていただいて、後はもう見守るだけです(笑)。僕が描いていたらもっと学生生活ばっかりのかわいい話になっていたかもしれませんね。毎回楽しませていただいています。
作中では学生の天馬とお茶の水がロボット研究開発費をアルバイトで稼ぐ話も登場する。
――アニメに期待するところを教えてください。
ゆうき オリジナルエピソードが入ると聞いているので、そこは期待したいところです。原作にない部分で、天馬やお茶の水といったキャラクターがどのように描かれるのか楽しみにしています。