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テレビアニメは“作品”というより“商品”
鈴木 僕は、劇場よりもテレビアニメのほうが好きなのかもしれません。テレビのほうが、お客さんの気づかないレベルで、いろいろと遊べますよね。それに、テレビだと2か月後ぐらいに放送されて、すぐに結果が出るんです。そのレスポンスの速さも、好きですね。
── 鈴木さんのところへは、どういう経緯で演出の仕事が来るのですか? 鈴木 たいてい、以前に仕事をした制作会社のプロデューサーや制作デスクの人から、「またお願いします」と声をかけられますね。監督の仕事でも、過去の作品を見てくれた人が「やってみませんか」と誘ってくれます。
僕が各話演出の仕事を請ける場合、作品の内容ではなく、スタッフで決めます。「この監督さんは、面白いことをやっているな」とか。自分からやりたいと申し出て関わった作品は、「湾岸ミッドナイト」(2007年)の絵コンテだけです。なぜなら、原作が好きだったから(笑)。
それ以外は、誘われて参加してきたわけですが、僕は組む監督さんには恵まれてきました。「爆烈エトレンジャー」の岡崎国敏さん、「バトルアスリーテス 大運動会」(1997年)の秋山勝仁さん、基本的には自由にやらせてくれる監督さんのもとで、演出や絵コンテをやらせてもらえました。「この作品なら、こういう演出を入れても許されるんじゃないかな?」と、ちょっと斜め上を狙った演出が好きなんです。テレビシリーズですから、作品の世界観を壊さないように注意はしますけどね。
── そういう意味でも、劇場アニメよりは、テレビアニメのほうが向いているわけですね。 鈴木 テレビアニメは、作品であると同時に、商品でもあると思います。商品である以上、買ってくれるお客さんがいないと、関係が成立しないわけですよね。商品を職人的につくっていく作業が、僕にとっては楽しい。それと、劇場アニメは時間がかかりますよね。人生、そんなに長くありませんから(笑)。
── 演出だと、作家性よりは実務能力が重視されるのではありませんか? 鈴木 そうですね。最近のテレビアニメは、各話演出と各話作監によって、最終的なクオリティが左右されます。
── 深夜アニメは、ご覧になっていますか? 鈴木 たまに、深夜に帰ってきて、奥さんと2人で見ますよ。「スペースダンディ」の第16話(脚本・絵コンテ・演出:湯浅政明)は、2人とも爆笑しました。
だけど、奥さんもアニメ業界の人間なので、どうしても絵づくりとか色指定、芝居のつけ方を見てしまう。そんな職業目線の見方をしても、やっぱり楽しくないですよ(笑)。僕はほかの作品からインスピレーションを受けたいので、海外の実写映画や美術展に行くことには、積極的ですけどね。
(取材・文/廣田恵介)