七色の声を持つ、いかさん
──いかさんは、イケボの「いかさん」のほかに、ロリ少女ボイスの「たこさん」、少年声の「いくらさん」などいろいろなキャラクターを声で表現できるそうですね。
いかさん はい。なぜいろいろなキャラクターを演じようと思ったかというと、ニコニコ動画への投稿を考え始めた頃、「両声類」という男女の声を使い分けるという人たちの動画が流行っていて、自分もそれを見るのが好きだったんです。どちらかというと歌の上手さよりも、声のギャップがすごいとか超人じみている声の持ち主たちの作品が好きで、ちょっと憧れていたところもあったんです。その中に、「女性でも声が低くて男声ができる」という人もいて、その動画を見た時に「自分もできるんじゃないか」「自分もクリエイター側に回ってみよう」と思ったのが動画投稿を始めるきっかけだったりします。ただ、両声類ってその文字通り男女どちらの声も出せないといけないじゃないですか。でも当時、自分は(低い)地声しか出なかったんです。そこで、これを機に本格的に女声を練習し始めたんです。はじめの一か月は本当に聞くに堪えない声で、どこからどう聞いても「セサミストリート」のエルモでした。ちょっとずつ形になり始めたのが、練習を始めて3か月くらい。そこで「たこさん」が生まれました。
──たこさんは、特訓の結果生まれた存在なんですね。
いかさん 現在、メインの声が「いかさん」「たこさん」で、サブ声に少年声の「いくらさん」がいます。「いくらさん」は「たこさん」をある程度習得した時に、「いかさん」と「たこさん」の真ん中の声って出せないかなと思って、ふっと挑戦してみたらすぐに出せたんです。
──ほかに「いるかさん」、「いかまさん」、「なまこさん」などもいるそうですが……。
いかさん そのあたりはリスナーさんが名前を提案してくれたキャラです。「いるかさん」は、高周波……、声というよりはほぼ「音」みたいな感じですね。「いかまさん」とか「なまこさん」は、自分は正直あまり放送では出したくないタイプの声なんですが、リスナーさんには大人気なんですよ(苦笑)。「なまこさん」は、声の調子が悪くて「たこさん」の声を出すのに失敗して地声に戻りかけている声です。それがすさまじい声なんですよ(笑)。そのだらしない声を、みんなは「なまこさん」って親しんでくれてます。(※編注:「いかまさん」はいわゆるオカマ風ボイスとして、リスナーに親しまれています)
大きなプレッシャーの中で制作された「にじゆめロード」
──そんな七色の声を持ついかさんですが、2月1日に初のシングル「にじゆめロード」(TVアニメ「南鎌倉高校女子自転車部」エンディングテーマ)がリリースされます。初のシングルが、アニメソングになると聞いた時はどう思われましたか?
いかさん 最初は、何の前触れもなく「タイアップが決まったよ」ってサラリといわれたので、信じられませんでした(笑)。いつかはタイアップ曲を歌いたいとは思っていたのですが、あまりにもいきなり言われるたので「えっ」と思考停止してしまいましたね。ただ、もともとアニメは好きだったので、光栄に思っています。
──「にじゆめロード」は初シングル曲。そして初アニメソングということで今までの制作との違いや意識したことはありますか?
いかさん オリジナルアルバムは、自分の世界観を展開していくものだと思っています。それに対して、今回のシングルのようなアニメソングは、自分がどれだけアニメの世界に寄り添えるか。アニメを知らない人にも、自分の歌を通じていかに作品の魅力を伝えていくかということをより考えました。だから、これまで作ってきたアルバムとはまったく違った心持ちで挑みました。
──作曲・Ryu*さん、作詞・164さんという、音ゲー界とボカロ界の神による楽曲の感想はいかがでしたか?
いかさん 素晴らしいのひと言ですね! タイアップ決定もすごく驚いたんですが、Ryu*さん&164さんというダブル神の降臨で、「なんだこれは!」と(笑)。これも最初は驚愕でしたね。
──「にじゆめロード」は、「いかさん」だけではなく「たこさん」も登場して、2人でハモってしまうという、いかさんならではの楽曲になっていますね。
いかさん 実は最初、この曲で「たこさん」は登場しないんじゃないかな、と自分は思っていたんです。特にこちらからも、「たこさん」については何も触れずにいたんですが、Ryu*さんが「たこさんもぜひ!」という風に言ってくださって、「じゃあ、こちらこそぜひ!」という形で今の構成になりました。
──歌ううえでプレッシャーはありませんでしたか?
いかさん ありありでした。自分に歌いこなせるんだろうかと。もともと自分は、ダークな曲というか、激しい曲でも暗い要素のある曲を歌うことが多かったんですが、今回の曲はすごく爽やかじゃないですか。あまり歌ったことがない曲調だったんですが、「南鎌倉高校女子自転車部」というアニメの魅力をたくさんの人に伝えたい。そして、ひとりのアニメ好きとして、同じアニメファンの皆さんに受け入れてもらいたいという一心で、全力で歌いました。なので、テレビから自分の歌が流れてきた時は、「自分の歌だー……」って感慨深く思いました。