ホビー業界インサイド第19回:MAX渡辺が語る「マックスファクトリーの30年」、そして「僕が本当に作りたかったもの」

2017年01月28日 11:000

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ホビーメーカーの役割は、ストレス解消である


──美少女フィギュアの商品展開も早くて、1990年に、「きまぐれオレンジ☆ロード」の鮎川まどかを発売していますね。これはレジンキットですか?

渡辺 そうです。鮎川まどかは、僕らのマドンナですよ。あのキットが売れたおかげで、生きながらえたようなものです。だけど当時、レジンキットを「こんな綺麗な完成品なら、いくら出してもいいよ」と言わせるぐらいうまく組み立てて塗装できる人って、日本に10人もいなかっただろうと思います。すごく難しいから。それで現在でも、塗装済みPVCフィギュアは人気が衰えないんでしょうね。

──「強殖装甲ガイバー」のソフビシリーズを出していましたが、ちゃんと塗装済みキットだったんですよね。最初から色が塗ってあるキットなので、とても驚きました。

渡辺 結局ね、“ガレージキットメーカー”になるのが嫌だったんです。いえ、ガレージキット自体は好きですよ。だけど、自分がなりたかったのは“ホビーメーカー”なんです。クオリティの高い模型を内容に適した価格で出すため、地味に努力してきましたよ。派手に見えたのは、僕が模型誌でライターを続けていたからでしょうね。

──2004年に、PVC完成品フィギュアで「DEAD OR ALIVE」の霞が発売されて、4万4千個も売れたそうですね。何がヒットの要因だったんでしょう?

渡辺 いろいろな出来事が合致してるんですよ。PVC美少女フィギュアという商品が浸透しはじめた時期だし、原型もよかったし、商品のバリューと価格もつり合っていた。ネットで見てポチるという消費行動も、そのころに始まったんです。何もかも、タイミングがよかった。霞は、カラーバリエーションもふくめると、10万個は売れました。
PVC完成品の美少女フィギュアが流行る前、マクファーレントイズの「スポーン」のフィギュアが一世を風靡したでしょ? 子供のオモチャだったはずの人形が、すごい彫刻と塗装で、安く出回った。まさに、僕のやりたかったことです。くやしかったですよ。僕の願望は、個人のアーティスティックな造形物を売りたいのとは、ちょっと違うんです。安くて関節も動いて、出来がいい、総合力の高いものを出したいんです。


──figmaのシリーズ開始が2008年なのですが、マクファーレントイズに近い感覚のフィギュアではありませんか?

渡辺 ええ、figmaは理想に近い商品のひとつです。結局、僕はオモチャをやりたいんですね。オモチャが好きなんです。

──figmaのファンと、模型づくりの好きな層は重なっているんでしょうか?

渡辺 もちろん、重なっていると思います。そんなにたくさん、模型のうまい人っているんでしょうかね? ホビー趣味の9割ぐらいは、完成品を買って楽しむことじゃないかって気がします。模型原理主義的な「欲しいものは、自分で苦労して作れ」というお爺さんは、言わせておけばいいんです。ぶっちゃけて言うと、10分か15分、みんなのストレス解消に貢献できれば、ホビーメーカーの役割としては十分なんです。ゲームをやってもいいし、ちょっとしたプラモデルを作ってもいいし、figmaで遊んで写真とって、Twitterにアップしたら「いいね」をもらえた、それで十分に楽しいはず。それ以上でも、それ以下でもないですよ。

──渡辺さんご自身も、仕事だけでなく趣味としてプラモデルを作りつづけてますよね。

渡辺 作った模型は、TwitterやFacebookで発表すれば十分な感じですね。模型誌に載らなくても、本当にプラモデルや模型を好きな人はネットにもいるし、サークルで展示会をやったりしてますよね。

──では、ホビーや模型に関しては、いい時代だと感じていますか?

渡辺 めちゃくちゃ、いい時代でしょ。最高ですよ。文句なし。発表の場があるし、材料も揃ってるし、仲間がいるし、お金さえ出せばいろいろなキットが手に入る。古いキットも中古屋で買えるし、最高に充実してるんじゃないでしょうか。

──80年代への郷愁はありませんか?

渡辺 まったくありませんね。あれはあれで楽しい時代でしたけど、何に対しても飢えていましたから。今は何でもあるので、渇望する気持ちは薄れたかもしれない。だけど、いまは楽しむ方法にも幅ができたし、今後、また変わっていくと思います。手先が不器用な人でも、モデリングできる時代になるでしょう。
ただ、できればフィギュアや模型だけでなく、いくつかの趣味をぐるぐる回るといいと思います。体を動かすのも、楽しいものですよ。


(取材・文/廣田恵介)

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