衝撃的な魔法少女バトルを正面から描く。ロボットアニメにも通ずるケレン味を載せて ――「魔法少女育成計画」橋本裕之監督インタビュー

2016年12月24日 11:000
(C) 2016 遠藤浅蜊・宝島社/まほいく

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16人の魔法少女の魅力を描き分ける、演出の工夫とキャスティング


──今作では日常生活と魔法少女が、絵的にはほとんど変わらない質感で描かれていました。描写に大きな差をつけない演出をされたのには、どのような狙いがあったのでしょうか?

橋本 もともとこのお話ってどこが舞台なのかな、と思っていたんです。直接、原作の遠藤浅蜊先生に伺ってみたら「新潟県の上越市です」と言われたので、スタッフの皆で上越市に取材に行きました。上越市を見てみると、この場所で魔法少女になった時、東京みたいにキラキラした光景にはならないと思ったんです。作中で都市伝説的に魔法少女が噂されているのと同じで、「実は自分たちの知らないところで何かが起きているのかもしれない」という空気はこの作品の面白いところだと思っていたので、屋根に立っていたり公園にいたり、普通の風景に魔法少女を立たせたいと思いました。

──第1話で小雪がスノーホワイトに変身した時も、お母さんから「ご飯よ」と呼ばれているのが、なんだか庶民的でおかしかったです。

橋本 小雪は、いいバランスで地味だなと思います。要するに、普通の子なんですよね。小雪の部屋を見てもらうと面白いのですが、畳の上にカーペットが敷いてあってベッドが置いてあるんです。年頃の女の子だからかわいい部屋にしたいけど、実家だからどうしようもなくて小物とかカーテンで頑張っている。でもその部屋は根本的に和室で畳なんだよ、みたいなところが、今までの魔法少女ものとは違う雰囲気にできたポイントかもしれないですね。


──スノーホワイトをはじめ、16人の魔法少女のキャスティングはいかがでしたか?

橋本 原作を最初に読んだ時、スノーホワイトは東山奈央さんのイメージがすごく強かったんです。東山さんの声はすごく清潔感があって、裏表がなさそうに聞こえるのがスノーホワイトに合っていると思ったので、演じていただけてありがたかったです。彼女自身はとても人間らしいキャラクターなのですが、人間らしい感情が魔法少女になることで微妙に制御されていて、怒るに怒れないんだけれど、「おかしい」と思うことには急にイライラしてしまう。そのあたりが、東山さんの声のおかげで、嫌な感じになりすぎないでキャラクターを保っていられたと思います。他の魔法少女たちも皆、ちょうどよくハマりましたね。

──ちょうどよくハマったというのは、たとえばカラミティ・メアリ役の井上喜久子さんとか?

橋本 ピッタリでしたね。クラムベリーも怪しくて何かありそうですし、その次に強そうに見えるのがカラミティ・メアリなんですよ。なので、強そうに聞こえないと倒せない感じがしないので、誰だろうと考えた時に「喜久子さんしかいない!」と思いました。喜久子さんに演じていただいて、カラミティ・メアリの強さと寂しさみたいなものがすごくよく出て、キャラクターを立てられたと思います。クラムベリーも緒方恵美さんが演じることで、声優好きの方々には「このキャラクターは何かある」とすぐに思ってもらえて(笑)。その期待感に応えられたと思いますし、声優が好きでアニメを見始めた方にも楽しんでもらえたんじゃないかな、と思っています。ハマったと言えば、ピーキーエンジェルズの松田利冴さん・松田颯水さんもそうですね。最初、ミナエルとユナエルは同じ人に演じてもらうという話だったのですが、音響監督の飯田里樹さんから「ちょうど双子がいますよ」と言われたんです。コンビネーション抜群に演じてくれましたし、収録現場には2人同じような服装で来ていました。第10話でピーキーエンジェルズの子供時代が描かれましたが、あのシーンで着ているスカートの色は、松田さん姉妹のパーソナルカラーにそっと合わせておきました(笑)。それぞれが声優さんご本人のキャラクターにも合ったキャスティングになったと思います。


──演出面で面白かった魔法少女は誰でしたか?

橋本 シスター・ナナは楽しいキャラクターでしたね。奈々(シスター・ナナ)はたぶん、自分を好きになってくれる人なら誰でもいいタイプの人間だと思います。雫(ヴェス・ウィンタープリズン)にとって奈々は同性が好きな自分を受け容れてくれる人だから、そんな2人が絶妙なバランスのうえに寄り添っているということなんですよね。要するに、奈々は自分のことが好きで、魔法少女になることで理想の自分を演じたいんです。だから第5話でマジカロイドといる時も演技っぽい振り付けでしゃべっていたり、シスター・ナナとヴェス・ウィンタープリズンが一緒にいる時は、基本的にウィンタープリズンは動かさずにナナのほうから寄ったり離れたりしているんです。第3話では、自分が話すのがつらくなってウィンタープリズンにいったん託すのに、ウィンタープリズンが話し始めたらまたすぐに自分で話し始めるし、そういうのがすごく面白かったです。


──そうやってキャラクターを解釈し、動き癖のような部分で特徴をつけて演出されていくんですね。

橋本 そうですね。でもこれは、気づかなくてもいいようなところです。気づいて見てみると「そうなんだ」と思いますけど、人間のやり取りだって同じですよね。癖だって、気づく人は気づきますが、気づかなくてもコミュニケーションは取れます。けれど、キャラクターを作り込むというのは、そういうところにあるのかな、と思っています。

──描くのが難しかったり、理解するのに悩んだりしたキャラクターはいましたか?

橋本 特別難しかったというのはいなかったです。僕は、どのキャラクターも意外と素直だと思うんですよね。「仇だから倒したい」とか「生き残るためにこうする」とか、純粋な気持ちに従っているだけだと思うんです。最初はハードゴア・アリスなんて、「この子は人気が出るんだろうか?」と思いましたけど、作っていくうちにだんだんかわいさがわかってきて、どんどん全員のことが好きになっていきました。だから殺したくなくなってくるんですけど、物語の展開上、悲しい決断をせざるを得なくて。

──監督にとってはそれが難しかったところかもしれませんね。各話の絵コンテ・演出を担当された方にキャラクターや演出を伝えるうえではどんなことに留意されましたか?

橋本 演出面では表情やポーズ、あとは不穏な空気の出し方なんかは大事にしましたね。キャラクターは皆、家庭の事情も深くて、わかってもらうのが難しい子もいました。カラミティ・メアリとリップルがどことなく親子のように思えるのは、それぞれの家庭の背景がわかると見えてくるものですから、そういった関係性をしっかり説明して、理解してもらいました。でもスイムスイムは、どう説明したものかと悩みましたね。すごくきれいな水みたいな子で、「色を付けたら全部染まってしまう感じ」、「生粋のまっすぐな人」と言っていました。この作品では基本的に同じ絵コンテ・演出の方がローテーションで担当してくれたので、2回目以降はいろいろわかってもらえている状態で演出できてとても助かりました。

──アクションや魔法対決のシーン作りはいかがでしたか?

橋本 アクションはやっぱり大変でした。ウィンタープリズンが魔法の壁を出すとか、ラ・ピュセルが剣を大きくするとか、魔法といっても彼女たちは肉弾戦なんです。しかも、作品全体としてもそうですが、夜のシーンが多くて目立たせるのが難しいんですよ。そこは撮影スタッフとも相談をして、絵が沈まないようにきれいにしてもらいました。また、魔法を使う時に彼女たちは光って、音も付くんですが、あれは原作にはない表現なんです。たとえばスノーホワイトの魔法が“困った人の声が聞こえる”と言っても、振り向く動作だけでは魔法で聞こえたのか、それとも普通に聞こえているのかがわかりません。そこは小説とアニメの違いなので、視覚的な効果も必要だろうと光らせることにしたんですが、魔法を使う時に毎回光らせなくちゃいけなくなって、逆に大変になりました(笑)。

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