衝撃的な魔法少女バトルを正面から描く。ロボットアニメにも通ずるケレン味を載せて ――「魔法少女育成計画」橋本裕之監督インタビュー

2016年12月24日 11:000
(C) 2016 遠藤浅蜊・宝島社/まほいく

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魔法少女のソーシャルゲームで遊んでいたはずが、本物の「魔法少女」として選ばれた16人の少女が生き残りを賭けた戦いに巻き込まれていくという衝撃的な「魔法少女育成計画」。このアニメを監督した橋本裕之さんといえば、大ヒット作「ご注文はうさぎですか?」を思い浮かべる方も多いだろう。愛くるしい世界を演出した彼が、今度は魔法少女同士の戦いの果てを描くということに、当初は驚く声も聞かれたが実際、画面上ではキュートな魔法少女たちの姿とは裏腹のバトルロイヤル模様が踊った。橋本監督は本作をどのようなアプローチで作り、それはどんな挑戦だったのかをうかがった。そこから、彼のアニメ作りに対する姿勢が見えてきた。


媒体の違いを生かして、原作とアニメが相互で補完しあう作品に


──「魔法少女育成計画」の監督を務めることになった経緯を教えてください。

橋本 「ご注文はうさぎですか??」(シリーズ第2期)を制作していた頃に、この制作スタジオであるラルケから声をかけていただきました。そこで原作小説の第1巻をいただいて、絵がすごくかわいかったので、「ああ、こういう作品だから、僕に声がかかったのかな?」と思って読んだら、まったくそういう感じではないお話でしたので、ちょっとびっくりしました(笑)。

──「ご注文はうさぎですか?」シリーズとは、作品の雰囲気は違いますが、多数の女の子キャラクターが登場するところは共通しています。これは橋本監督の得意とするところなのでしょうか?

橋本 実は僕のキャリアにおいて、かわいい女の子がたくさん登場する作品はそれほど多くないんですよ。もともとはロボットやメカが好きで、最初は「ガンダム」作品に関わりたいと思ってこの業界に入ったんです。以前はサンライズの下請けの会社で原画を描いていました。ですから今こうして、かわいい作品の監督をやらせていただいているのを不思議に思うこともあります(笑)。でもジャンルとしてはこういう作品も好きで見ていましたし、僕は、“かっこいい”も“かわいい”も、根本的にはあまり変わらないと思っているんです。手法や分け方が違うだけで、行き着くところは同じだと思います。

──たしかに、かわいい作品でもロボットアニメでも、ケレン味を感じる部分には相通じるものがある気がします。そうしますと、今作でも、あまり抵抗なく取り組めた感じですか?

橋本 そうですね。ただ、作るとなると大変だろうなとは思っていました。魔法の描写って作品の設定によっても違うし、この作品は16人も出てくるわけですから、それぞれまた変わってくる。しかもキャラクターが死ぬ展開というのは、日常系とは真反対ですから。でも、それにも興味があって、監督としてやってみたらどうなるのかなという思いでお引き受けしました。

──原作小説を読まれた時は、どんなアニメーションを作ろうと考えられましたか?

橋本 どの作品の時でも、僕はユーザー側に立ちたいと思っています。ですので、今作でも原作の読者がどんなアニメを見たいかを考えていましたね。作品のファンだったら、アニメ化するのってやっぱり楽しみじゃないですか。だからその人たちに楽しんでもらえるように、できるだけ原作には沿おうと思いました。でも、アニメと小説とでは媒体の違いがありますから、そこに難しさがあります。

──「魔法少女育成計画」の面白さを、アニメならではの表現でどう表現するかというところですね。

橋本 そうですね。アニメでできることは、小説と比べて限られているので、「原作がより読みやすくなればいいな」というのも、目指すもののひとつとしてあるんです。原作を読む時に、キャラクターのビジュアルや声がわかっていると、イメージができて入りやすくなると思うので、アニメを見てもらったら原作もぜひ読んでみてほしいですね。逆に、アニメで原作をカバーできることもあります。たとえば、ラ・ピュセルの場合は原作の描写ですとファヴの報告で死んだことが明らかになるという流れでしたが、アニメではクラムベリーと戦うシーンを足しました。そうすることで、小説を読んだ人が「ラ・ピュセルはこんなにも戦っていたんだ」と補完できたら、原作をすでに知っていても面白くアニメを見てもらえるんじゃないかな、と考えていました。


──シリーズ構成と全話の脚本を担当された吉岡たかをさんとは、どのような相談をされましたか?

橋本 僕がこの企画に参加したときにはすでに吉岡さんは先にシリーズ構成として参加が決まってました。吉岡さんとはこの作品で初めてお会いしたのですが、各話終わりの“引き”については随分と相談しましたね。今回は原作第1巻と短編集のエピソードをあわせて全12話分を作ったのですが、これが予想以上に大変でした。原作では、最初は誰が主人公なのかもハッキリしないまま次々とキャラクターが脱落していって、最終的に残った2人が主役だったんだとわかりますが、アニメの場合は第1話、第2話と見て「イマイチ」と思われてしまうと続きを見てもらえませんので、そのために視聴者が感情移入しやすくなるようなキャラクター描写をする必要があります。でもそれを16人分やるには全体の尺が足りないので、そのあたりのバランスには苦労しました。サスペンスではあるんですが、やはりキャラクターが死んで行くと気分が重くなって、「次が見たい!」という気持ちにさせるのが難しくなります。それでも次を見ようと思ってもらうには、その話数が終わる時にどういう感情になっているかが重要で、各話の終わりどころを見つけながら、シリーズを構成していきました。

──最近ではアニメファンの中で、最初の3話分見てから見続けるか判断するという話がよく出ます。本作では第2話の段階でひとつの山を作っていましたが、そうした視聴者の態勢を意識されてのことでしょうか?

橋本 それはあまり気にしていませんでした。1話ずつきちんと、気になる感じで終わっているかどうかを大切にしていました。たまに「奇数の話数はキャラクターが死なない」とか言われるのですが、それも言われてから気づいたくらいです(笑)。

──全体の起伏を作っていたら、たまたまそういう構成になっていたと。

橋本 そうです。一番の目的は最後まで作品を見てもらうことですからね。そういうふうに構成していったら、誰も死なない回がたまたまそこにきたという感じでした。

──本作のポイントとも言える、キャラクターが脱落する描写については、どのように表現しようと考えていましたか?

橋本 放送上、どこまでグロテスクなことができるかという点もありましたが、できるだけやってやろうと思っていました(笑)。死ぬ瞬間は空を映すとか、もっと別の手法をとることは可能だったかもしれませんが、それでは小説と変わらないと思って。これだけが売りというわけではありませんが、せっかくなら原作を読んだ人に、こういう感じだったんだというのを見てもらいたかったので、ちょっと顔を背けたくなるくらいの演出を逃げずにやりたいと思いました。

──ショッキングではありますが、それでも続きが見たくなる絶妙なさじ加減だったと思います。

橋本 僕は“バランスを取る”のが好きなんだと思います。下がった分は上げておこうとか、これだけ盛り上がったらこれだけ下げようとか、対比でバランスを見るんです。それはキャラクターの演出にも言えることで、第11話でスノーホワイトとリップルが会うシーンは、第1話でラ・ピュセルと会った時と同じようにしてあったりと、対比を作るのが自分の趣味なんだと思います。

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