ハリウッド監督が作ったミニシアター映画「ストーンウォール」日本語吹替版で、主演を演じた声優・梶裕貴の思い
叫びすぎて声帯がボロボロになったほどでした
──海外映画や海外ドラマの吹き替えの場合、元の役者さんの声を参考にすることはあるのですか?
梶 いろんなやり方があると思います。基本的にはスタッフさんが望まれる形に持っていくべきだと思いますが、特に決まった要望がない場合は、自分の中でイメージをふくらませます。せっかく日本語の声がつくんだから、吹き替えとしても面白くなっていてほしい。「より感情移入して楽しく見られた」と思っていただきたいですからね。だからオリジナルの俳優さんの声の高さというものは今回そこまで意識せず、それよりも間やテンポ、表情などをよく見て演じるようにしていました。
──2時間の濃い時間の中で、梶さん自身が印象的だったシーンや、演じるうえで大変そうだなと思ったシーンはありますか?
梶 印象に残っているのはやはり、暴動のシーンです。ダニーが発した「ゲイに力を!」というセリフは、すごくインパクトがありますよね。あのシーンは今を生きている僕らにとってもすごくキャッチー。ストレートに伝わってくるシーンだなと思いました。役者さんたちがそう演じられているわけですから、彼らの熱意と本気の想いをちゃんと届けられるようにしなければと思いました。
──群衆にまぎれても、ダニーの強い叫びが聞こえてきたような気がしたほどです。
梶 実はあそこでかなり叫びすぎて、声帯がボロボロになりました(笑)。でもダニーたちのメッセージが伝わっていたのならうれしいですね。演じていても、だんだん気持ちが解放されて力強くなっていったんだろうなと感覚的にわかりましたから。
──アニメと吹き替えでは、臨むうえでの気持ちやアフレコの仕方は違うものなのでしょうか。
梶 「芝居をする」という根本的なところはまったく変わらないと思います。ただ、もっと細かい部分での違いというのは、いろんなお仕事をさせていただく中で、常に考えているところではありますね。でも答えはなかなか出ないです。答えなんかないのかもしれないですし。人によって違うものだとも思いますしね。アニメだとお芝居をゼロから作れる場所ですが、吹き替えはというと、もともと別の役者さんが演じていて、そこに合わせた音や芝居を乗せていくという別の技術が必要になる。ただ声を合わせるのではなく、作品が描こうとしているものや、オリジナルの役者さんが表現しようとしているものを壊すことなく、さらに何かをプラスできたらなと思っていますね。声優にとっても、吹き替えはアニメともまた違う表現方法。これからももっと挑戦して、追求していきたいです。
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