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中国で女性人気の定番ジャンル和風伝奇、そして陰陽師
今期のような飛び抜けた作品が出ないシーズンは、中国の日本アニメ視聴者の間で人気のあるジャンルやテーマが浮かび上がってくるのですが、そういった部分を見ていくと、和風な世界観や妖怪が出てくる和風伝奇系の作品、そして陰陽師が活躍する作品の人気が目に付きます。
10月に始まった新作アニメの人気作品には「夏目友人帳」がありますし、他にも10月開始ではありませんが「双星の陰陽師」の人気がここに来て再び盛り上がるなどといった動きがあります。
これらの和風系のテーマの中でも「陰陽師」関係の作品は女性を中心に安定した人気を獲得しています。日本文化系の要素において比較的特殊な部類になると思われる陰陽師ですが、実は中国では90年代の後半頃から和風伝奇系の作品は高い人気を獲得しており、なかでも「陰陽師」は現在の中国である種の定番とも言えるレベルの人気となっているそうです。
たとえば、中国で日本のアニメや漫画が女性の間に広まり人気になっていく過程においては主人公が陰陽師の「東京BABYLON」やその関連作品の「X」が大人気になっていますし、ゲームに関しては和風ファンタジーな世界観の「遥かなる時空の中で」シリーズがやはり女性を中心に人気となっています。
また陰陽師の人気に関して特に影響が大きかったとされるのが映画の「陰陽師」で、こちらは中国の国営放送であるCCTVの映画チャンネルでも繰り返し放映されるなど、アニメや漫画好きの層以外にもファンを獲得することとなりました。
最近の中国ではネット配信の影響力が拡大していますが、それでもまだテレビの影響力は大きなものがありますし、ひと昔前となると中国国内におけるテレビの影響力は絶対的なものがあり、中国の社会で大人気になるにはテレビでの放映が欠かせないとされていました。
そういった時代に映画の「陰陽師」がテレビを通じて中国全土に放映されたことから、陰陽師に関する知識やイメージが日本のアニメや漫画好きな層や日本文化好きな層以外にも広がり、特に女性の視聴者に対して日本系コンテンツ独自のテーマの中では群を抜いて「一般ウケする」ものになったのだとか。
またさらに、陰陽師関係は中国においては外国のものではありますが歴史文化枠と見なされる面があるので、中国の「封建迷信」に対する規制に引っかかりにくいというのも、オカルト要素が規制の対象になることのある現在の中国で扱いやすい、話題にしやすい題材としてプラスに働いた……という見方もあるそうです。
以上のような背景があることから和風伝奇系の作品、そして陰陽師関係のテーマは中国のアニメ視聴者、それも一般寄りの女性層も含めて非常に広い範囲に刺さる要素となっていますし、現在の中国では陰陽師の出てくる世界観や、陰陽師関係の設定をもつキャラクターが抵抗なく、普通に受け入れられるようになっているそうです。
この中国における陰陽師の人気に関しては、最近、中国の大手ポータルサイトである「網易」が「陰陽師」というスマートフォン向けゲームのサービスを開始し、大人気になるといったことも起こっています。
網易の「陰陽師」は和風な世界観やキャラクターデザインに加えて、日本の人気声優をふんだんに起用するなど、日本のアニメを視聴している層を強く意識した作品となっています。
またこの作品は最近になって日本での事前登録も開始されるなど、日本展開も予定されてはいるようですが、中国国内での展開やゲームシステムを見ていくと、明らかに中国国内市場がメインのターゲットになっている作品です。
このように中国の大手がリソースを投入して中国向けに「陰陽師」をテーマにした作品を出してくるなどといった件からも、中国における陰陽師というテーマの人気は見て取れるかと思います。
もちろん日本のアニメ作品で和風伝奇や妖怪、陰陽師といった要素を持つ作品が中国で必ず人気になるというわけではありませんが、ジャンルによっては日本で想像される以上に歓迎されるところがあるのも確かです。
中国市場を意識して和風な作品を作る必要はないでしょうが、良い作品ができたならば中国にも展開するというのは面白そうですね。
(文/百元籠羊)
(C) Project GN/ガーリッシュ ナンバー製作委員会
(C) 助野嘉昭/集英社・「双星の陰陽師」製作委員会